2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

みらいに架ける社会学

副題が「情報・メディアを学ぶ人のために」となっているので読んでみたが、残念ながら期待外れで、多少とも面白かったのは第7章「情報社会と宗教」くらいだった。地域情報化を扱った第10章は、丸田一氏の名前を終始一貫「丸谷一」と書く失礼ぶり、「デー…

パブリック

実は原書のPublic Partsをキンドルで買って、読まないうちに邦訳が出てしまった。まあこういうことは珍しくはないのだが、もう少し待てばよかったという思いは残る。 本書は、インターネットにおける「パブリック」の価値を強調したもの。理論的に何か深いこ…

レーガン

日本語で読めるレーガンの評伝としては初の著作だそうだ。私も含め、どうも「インテリ」は、レーガンというと馬鹿にする傾向がある。確かに、減税すれば税収が増えるという「ラッファー曲線」に基づいた財政政策などは「ブードゥー」と言われても仕方がない…

インターネット社会と情報行動

情報行動、インターネット論、ケータイ論、地域SNS、情報倫理などを論じた本だが、専門書としては記述のツッコミが足りず、かといって教科書としては網羅性がなく、どうにも中途半端な著作になってしまっていて、読んでもあまり得られるものがない。やはり著…

ひとりで学べる社会統計学

このブログでなんども書いているように、学生向けの統計学のよい教科書を探しているのだが、どれも一長一短で、決定版と言えるものがない。本書は、統計学を専門としない著者が書いた、ある意味個性的な配列を持った、「使う側からの」統計学書だが、やはり…

映像から音を削る

武満徹が亡くなったのは1996年だから、もう15年前のことになるのだが、未だ「同時代人」という思いが抜けない。私の学生時代など、武満は文化人として様々な雑誌等に寄稿していたからだ。 本書は、武満の映像論や映画音楽論を中心にまとめたもの。もち…

リアル・シンデレラ

姫野カオルコの小説。「リアル・シンデレラ」として、長野県の老舗料理屋に生まれた倉島泉という女性の半生が語られる。泉は、美人の妹を愛し、周囲の人間を愛し、そして短い一生を終える。果たして、彼女は幸せであったのか?

革新幻想の戦後史

教育社会学者の竹内洋氏が、雑誌『諸君』に連載したもので、「革新」が支配的であった戦後の一時代を、自分史と重ね合わせながら叙述する。第1章で、三島由紀夫『宴のあと』のモデルとなった有田八郎について詳しく書かれているのは興味深い。有田の衆議院…

ラーメンと愛国

私自身、さほどラーメンを食べる方ではないのだが、本書は面白かった。ラーメンという切り口から、日本社会が見えてくる。戦前は都市下層民の食べ物であった「支那そば」が、いかにして国民食となって行くのか。チキンラーメンを発明した安藤百福の努力や、…

世代間格差

年金問題を中心とする世代間格差問題を整理する入門書。

日本の論点2012

毎年出ている日本の論点の最新版。通読したが、こちらも不満が残る。まず、対論形式となっているものが少なく、84の論点のうち3分の1の28論点のみで、他は1論点1論文である。もっと論点の数を絞り、重厚な議論が読みたい。例えばスポーツの論点など…

音楽と数学の交差

サイエンスライターと音楽家の共著で、第3章は対談。タイトルが示す通り、音楽と数学の話題を書いたものだが、残念ながらあまり興味をそそられない。

余震

紛らわしいタイトルだが、東日本大震災とは関係ない。米国における2008年金融崩壊の後に起きている余波について論じたもの。著者はクリントン政権時代の労働長官も務めたロバート・ライシュ。 ライシュが警告するのは、富の偏在であり、それによる景気後…

天から降ってきた!

続いて東中野に戻り、ポレポレ座で、中国のドキュメンタリー映画「天から降ってきた!」を見た。これは面白い。ちょっと長いな、と思うところもあるのだが、全体としてよくできている。中国湖南省のある山村は、ロケット打ち上げの際の破片が落ちてくる場所…

「動く絵」展

川口市にあるSKIPシティは、埼玉県による映像文化施設で、私も『映像と社会』で紹介したが、どうもA地区だけであとのB,C,D地区の開発はしないようだ。さて、今日はそのSKIPシティにある彩の国ヴィジュアルプラザに、「動く絵」展を見に出かけ…

筑波大学

ここ数日体調がすぐれず心配していたが、何とか筑波大学にやってきた。映像文化論の集中講義2日目。無事終了。

東大で学位取消し事例

毎日新聞ニュースより 東大助教:論文盗用が発覚 学位取り消し 東京大は9日、同大社会科学研究所の安藤理助教(33)が09年に提出した博士(教育学)の学位請求論文や今年発表した論文など計4編で、他人の論文から盗用する不正行為をしていたと発表した…

データを未来に活かす

著者が、統計数理研究所の研究者10人にインタビューしてまとめた、同研究所の紹介本。

漢字好きを食い物にした罪は重いよ。 読売新聞ニュースより 財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)を巡る背任事件で、親族企業2社に業務を架空委託し、協会に計約2億8700万円の損害を与えたとして背任罪に問われた協会の元理事長・大久保昇(7…

競争優位で勝つ統計学

この邦題はややミスリーディングではないか?本書に書かれていることの中心は、カジノでのブラックジャックにおいて、カードカウンティング(場に出たカードを覚えておく)を行って、わずかに胴元に有利になっているゲームを、プレイヤーに有利に変え得る、…

という幻想

起業には様々な幻想が付きまとっているが、本書は統計データに即して、米国における「起業」の本当の姿を露わにする注目の書。起業というと、ビル・ゲイズやらスティーブ・ジョブズやらが思い浮かぶけれど、彼らは全くの例外に過ぎない。実際の企業家は、む…

建築のエロティシズム

私はなるべく様々な分野の本を偏りなく読もうとは心がけているけれど、あまり読まないジャンルの一つが建築論なのである。うちの講座には、梅宮弘光教授という、立派な日本建築史の先生もいるのだが。 さて本書は、タイトルに建築と入っているが、必ずしも建…

日本映画論

京大の映画学者、加藤幹郎氏が、日本映画を代表する作品を論じた作品論集。内田吐夢の「警察官」(1933)に始まり、小林政弘「愛の予感」(2007)まで。ウンベルト・エーコのポルノ論(性行為に現実以上の時間が費やされる=ポルノ映画)があっけなく批判さ…

夜、神戸アートビレッジセンター(KAVC)に出かけ、「乱歩・白昼夢」を観劇。江戸糸あやつり人形結城座による公演で、俳優による芝居とあやつり人形劇との融合。「芋虫」「屋根裏の散歩者」「一人二役」「人でなしの恋」の4作品を扱う。

情報化社会の表現の自由

標題に掲げた問題について、プロバイダ責任制限法やP2P、児童ポルノといった具体的問題に即して論じる著作だが、あまりにも話が(悪い意味で)専門的過ぎ、憲法学の研究者以外には役に立たないだろう。判例の評釈や、学者の解釈が詳細に紹介されているが…

アニメとプロパガンダ

まだ若いフランスの歴史家による、第二次大戦時におけるアニメのプロパガンダ利用を詳しく追究した著作。第一章、枢軸国、第二章、フランス、第三章、連合国という三章構成。ヘンリー・フォードのナチズムへの共感などは、目を背けたくなるが、知っておかね…

フィルムスクールで学ぶ101のアイディア

横長で小さな版型のかわいい本。見開きで1項目で、左ページにはイラストが、右ページには解説の文章があり、映画を作ろうとしている人たちに向けて実践的なアドバイスが101個収められている。1995円という価格はちょっと高いか。

日本の漢字1600年の歴史

これは良書。日本の歴史において、漢字がどのように使われてきたのか、6章構成で時代に沿って詳しく解説してくれる。遣隋使や遣唐使の活躍、江戸時代の大衆化する出版文化など、隣接領域にも目配りがなされている。

原発推進者の無念

慶応経済を出て日本原子力発電に入社し長らく務めた著者は、退職後に原発の立地する富岡町に家を建てたところ、今回の地震・原発被害に遭った。その経験談が語られる異色の新書。著者は郡山市にある「ビッグパレット」に避難するのだが、いやあ、仕方の無い…

現代文化論

映画、テレビ、ポピュラーミュージックなど、1章ごとに一つの内容を扱った、現代文化についての入門書。カルスタ系。