2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「改革」はどこへ行った?

竹中平蔵氏の新作。いささか自画自賛めいてもいるけれど、小泉改革の意義、そして、それ以後の内閣のだらしなさは十分に伝わってくる。昨日読んだ宮台・神保の本では小泉・竹中改革はボロクソだが、私は耳を傾けるべき点も多くあると思っている。

インターネット社会と法

堀部教授を中心として、その周囲の大学院生を主力とした論文集。役に立つところももちろんあるが、2003年刊行の本なので、すでに古くなってしまっている個所もある。サイバー戦争に関する論文が興味深かった。

格差のメカニズム

インプリケーションと比べて使われている数学がやけに難しい気もするけれど、数理社会学への著者の志が伝わってくる上質の学術書。著者の指導教官である高坂健次・関西学院大学教授によるモデルを拡張・発展させる形で新たなモデルが作られている。

クズが世界を豊かにする

副題にもあるように、YouTubeを中心にしたインターネット論。冒頭は、このブログでも取り上げた、NHK投稿Do画で扱われたマイクロソフトのPR動画。ほか、松沢氏の専門分野のエロ系(といってもYouTubeではポルノは排除しているので、避妊具の広告などソ…

翻訳家列伝101

翻訳をテーマにした本は少なからずあるけれど、翻訳家自体に焦点を当てた本はおそらくあまりない。その意味で、明治以来の日本の主要な翻訳家を概説した本書は、ユニークな位置を占めている(内容については、たとえば訳書の列記がほとんどの項目があったり…

格差社会という不幸

宮台真司・神保哲生氏による「ビデオニュース・ドット・コム」から作られた本。山田昌弘、堤未果、湯浅誠といった人々と鼎談している。タイトルは「格差社会」となっているけれど、問題は「格差」よりも「貧困」にあるということが強調されている。経済が回…

脳と性と能力

いわゆる「性差本」の中ではまともだというので読んでみた。確かにかなり抑制的な筆致であり、悪く言うと「結局よく分からない」ということが書いてある。

ネットワーク化・地域情報化とローカルメディア

県域でケーブルテレビをネットワーク化した富山県と三重県、さらに福井県や沖縄県の事例を挙げながら、ケーブルテレビの現状の「送り手調査」を行ったもの。中央大学の林茂樹氏を中心とした研究グループによる。そういえば、地域情報化の研究は、私が院生の…

インターネット社会のマーケティング

コミュニティ・サイトを経営学者らが分析するものだが、8年前に出た本で、残念ながら事例がかなり古くなってしまっている。たとえば「ゆびとま」はすでにない。他、「ぷれままクラブ」「@cosme」「空想生活」「SSKウェブリーグ」、さらに韓国の「アイラブ…

日本の論点2010

毎年出ているものだが、1つの論点についての対論形式のものが減っているように感じるのは気のせいか。郵政改革についての森永対竹中、派遣労働規制についての湯浅対池田の論争などは読み応えがある。小池百合子の自民党論や、田母神の論文は、まったく低レ…

紙の本が亡びるとき

タイトルを主たるテーマとしているのはグーグル・ブック検索を扱った第1章と、活版印刷の終わりを扱った第6章にほぼ限られ、他の章はオーソドックスな文藝評論が多い。太宰の「走れメロス」が多くの教科書に掲載されているのは、学校教育との共犯関係だと…

数学ガール フェルマーの最終定理

数学ガールの第2巻は、フェルマーの最終定理の理解に向かって構成されている。「無限降下法」という証明方法に感動した。人間の頭脳はすばらしい。最後の第10章は「保型形式」「モジュラー」などがいきなり出てきてかなり難しくなる。

古代中国の虚像と実像

これは名著だ。 古代中国については、われわれ日本人も、「史記」などを通じて教養としてある程度の知識をもっているが、「史記」や「春秋左氏伝」の記述は信頼できないというのが著者の立場。たとえば、秘密の会議で言われたことがなぜ伝わっているのか、な…

長崎玄弥の英語の攻め方

長崎玄弥氏といえば、私が受験生のころは、「奇跡の英単語」などのシリーズで活躍中だったが、今ではどうなのだろう。本書は1992年に出版されたもので、英語を学ぶコツを、長崎氏が自らの経験談をまじえながら教える異色の書。長崎氏が修行時代、一度も…

世界の子どもとケータイ・コミュニケーション

日本の「モバイル社会研究所」と、携帯事業者の業界団体であるGSMAが、日・中国・韓国・インド・メキシコの5カ国で行ったケータイに関する調査をまとめたもの。データはなかなか興味深いものがあるが、第4章のシンポジウム・パネルセッションの記録は…

世界の「下半身」経済が儲かる理由

いわゆる性産業は、アングラマネーと化し、表の経済指標には出てこないことが多いが、本書は、さまざまな推計方法を用いて、そうした産業の経済規模を大胆に測っている。海外で売春を行って生活費を稼ぐ日本女性が増えているという事実(P137)には考えさせら…

アニマルスピリット

経済は合理的に動くというよりは、人間の心理によって動く・・・このことはもはや常識化しているけれども、きちんとした経済学の教授が論じている本書は、読み応えがある。

般若心経は間違い?

般若心経といえば、お経の中でもよく知られたものだが、スリランカ生まれの仏教者の著者は、般若心経がニヒリズムに向かう危険を秘めているとして厳しく批判、般若心経を書いた人間はあまり頭が良くないとまで言う。意外な書物。

海岸線の歴史

松本健一氏の著書。たしかに、このテーマで一冊の本にまとめられたことはなかった。日本は、米国や中国よりも、海岸線の長い国。いわゆる「白砂青松」という風景が、江戸時代に作られたものだという指摘が中心。

これから何が起こるのか

ウェブ2.0革命によって、経済・経営にどのような変化が起きるのかをテーマにした本だが、昔流行した情報社会論を読んでいるようなデジャヴ(既視感)がある。いわく、ビジネスの本質が「商品の提供」ではなく「ライフスタイルの提案」になる、「知識労働…

鄙の逆襲

副題は「21世紀型地域情報化による過疎地域の再生」。郵政省で地域情報化政策に携わってきた吉崎正弘氏の著作だが、専門性の高い著書ではなく、素人向け。地域情報化政策が思いとおりに行かなかった「ハガヤッシー」(富山弁で「くやしい」)という言葉が頻…

琉球弧・重なりあう歴史認識

琉球弧に関する論文集だけれど、残念ながらあまり新たな情報は得られない。唯一、與那覇潤氏の書かれた「「糸満人の近代」という章で、糸満人が沖縄人の中でも特別扱いされていたことを知った。「体格の良さ」「進取の気風」「西洋的な家族制度」などから、…

友人に招待されたのでためしにtwitter登録してみた。アカウントはここと同じakehyonだけれど、あまり積極的には使わないだろうと思う。というか仕事に差し支えるのが怖い。

計算とは何か

先日読んだ「数学は言葉」と同じシリーズの続編にあたる。計算とは何かから説き始めて、マクローリン展開やテイラー展開、微積分、アルゴリズム、チューリングの計算可能性の理論などへ進んで行く。コラムも、開平のやり方や、カーナビによる最短経路計算の…

三宅島の歴史と民俗

三宅島について書かれた本はあまり多くない。本書は代表格と言ってよいものだろうけれど(著者は長らく三宅村役場に勤め、観光課長や教育課長を歴任した)、タイトルが「歴史と民俗」となっているように、歴史の話と民俗の話が大部分で、現在の政治や経済に…

私はプロスポーツ、中でもプロ野球にはほとんど関心がないが、最近起きた2つの事件には、プロ野球という枠組みを超えて、親子関係や金銭について考えさせられた。 1つは、長島一茂が、父・長嶋茂雄にまつわるさまざまな記念品を、生前であるにもかかわらず…

ダークサイド・オブ・小泉純一郎

著者はフライデーの記者。私は小泉政権のなしたことをプラスに評価しているが、それでも著者が指摘するようなマイナス面(元ヤクザである竹内清との深いつきあい、消極的な情報公開、そして、姉弟など身内ばかりで固める事務所)が小泉にあるのはそのとおり…

完全なる証明

ポワンカレ予想を証明したロシアの数学者グリーシャ・ペレルマンは、フィールズ賞をも拒否して人前から姿を消した。日本でも、2007年に放送されたNHKの番組でこの数学者を紹介したので、それなりに名前は知られているが、本書は、ペレルマンと同様に…

世界でもっとも美しい10の数学パズル

大人の数学ファンにはやや平易過ぎるか。中学生あたりが読むのに適当だと思う。

誰も教えてくれない地デジTVの裏側

ジャーナリスト保岡裕之氏の著作。地デジのみならず、テレビ業界の抱える問題を全般的に批判する。163ページに、「タマちゃん」ブームは国土交通省の京浜河川事務所が、PR会社のプラップジャパンに依頼して、意図的にブームを作ったものだ、という記述…