2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

思想としての社会学

社会学界の重鎮・富永健一氏の新作。非常に厚い。 序章では福澤諭吉を、第一部では、サン・シモン、コント、スペンサーを、第二部ではデュルケーム、ジンメル、ウェーバーを、第三部ではパーソンズ、シュッツ、ルーマンを扱う。それぞれについての長い祖述が…

平成人

平成人というタイトルは、平(フラット)・成人(アダルト)という意味を掛けている。ポスト・バブルの平成というフラットな時代の世相を、著者の経験を含めた風景から立ち上がらせようという試みらしい。著者は慶應の助手で、文芸批評を専門としているそう…

全国寝台列車未来予想図

廃止相次ぐ夜行寝台列車を見直そうという、ある意味時代錯誤的な提言の書だが、確かに夜行バスよりは快適であるし、東京ー大阪ではなく、大宮や千葉から新宿や舞浜(東京ディズニーランド)を経由し、USJや関西各地に向かう寝台列車を、という企画はJR…

宮崎勤事件

もう20年前のことになるのか・・・東京・埼玉を舞台に起きた連続幼女殺人事件。その犯人として先日処刑された宮崎勤に関する本。本書は、宮崎は狂ってなどおらず、単なるロリコンビデオコレクターであり、遺体を食べた、ネズミ人間が出てきたといった狂気…

確率の理解を探る 3囚人問題とその周辺

なぜ人は確率の問題(それもベイズの定理を使った問題)を間違えてしまうのか、タイトルにある「3囚人問題」などを題材に緻密に考えてゆく認知科学の専門書。3囚人問題とは、以下の問題である。 3人の囚人A,B,Cがいる。うち一人が釈放され、2人が処…

隠岐 島嶼経済の構造と変貌

島根県の高校教師をしながら、隠岐の郷土史の発掘を続けた田中豊治氏の代表作。特に経済史・産業史的視点から、隠岐経済の発展や衰退の過程を跡付けていて飽きさせない。ぎょうせいから1977年に出ている。ISBNなし。 隠岐空港から、午後4時ころに伊丹空…

隠岐島コミューン伝説

カナダの歴史家ノーマンは、隠岐騒動(一揆)についての資料がないことを嘆いたと言う。それを学生時代に知った松本健一氏は、隠岐へと出かけ(現在と違ってまだ船で7時間くらいかかるころである)、子孫からの聞き書きなどを行った。松本氏は、「隠岐騒動…

隠岐から帰る

朝のうちに海士町に別れを告げ、高速船で西郷港へ。隠岐の島町図書館に向かうが、午前10時からでまだ開いていなかった。玉若酢命神社に行き、神社裏の古墳も見た(但し、道が草取りしていないため、ほぼけもの道である)。10時になると、図書館に戻る。…

西ノ島町・海士町

菱浦港(中ノ島)から別府港(西ノ島)へ。西ノ島町役場で地域情報化政策の取材。SECOM山陰とNTTのちぐはぐな対応がおかしい。図書館(というか、公民館の中の図書室)を見せてもらったが、ひどいものだった。本の品揃えもよくないし(一昔前の大衆小説が多…

隠岐へ

出雲空港から隠岐空港へ。隠岐の島町役場で地域情報化政策の取材。平成5年の高速船就航を機に開局したラジオ局「PAOPAO」の閉鎖までの経緯は、涙なしには聞けなかった(ちょっと大げさ)。取材後は、旧五箇村の方へとバスで移動し、水若酢神社と隠岐郷土館…

カラマーゾフの兄弟 1

カラマーゾフの兄弟は、実は母に昔から読めと薦められていたのだが、ロシアの人名が分かりにくいこと、長いことなどを口実に避けてきた。だが、この新訳版は評判にもなっているし、遅ればせながら手に取ってみた。確かに、日本語として分かりにくいところは…

ブス論

大塚ひかり氏の古典エッセイで、神話等の時代に「ブス」がもっていた生命力やパワーが(ひいては女性の力が)さまざまな形で減衰していったことを跡付ける。古事記・万葉集から、源氏物語、四谷怪談まで、多数の作品が動員されている。

現代イスラーム思想の源流

実は多様なイスラーム思想についての薄い概説書だが、私にはこれでも難しい。

階層構造の科学

「海洋研究開発機構」の研究者たちが、自然界における階層構造について書いた啓蒙書。第2章は生物学的な内容だが、それ以外はいずれも地学の範囲(例えば天文学、気象学、地殻学など)と言ってよいのだろうか。生命活動を支えているのが水なのだという話に…

ネイションの複雑性

ナショナリズムの発生や伝播を、数理モデルである「マルチエージェント・モデリング」(多数のエージェントが、影響を与え合うモデル)を使ってシミュレートするという驚くべき研究。巻頭のカラー口絵(もちろんコンピュータによる図像)も美しい。第6章で…

社会保障の新たな制度設計

高齢化の中で制度設計が難しい年金や公的扶助制度。その論点整理を行っている著作。年金制度が、その時々の「近視眼的な政治」によって変更されてきたことを明らかにした第6章がショッキングだ。

航空産業入門

激しい競争と再編の波に現われている航空業界。本書はANA総合研究所の研究者たちによるその入門書。「シカゴ体制」「LCC(ロー・コスト・キャリア)」など、業界外の人間には未知の事柄について解説してくれている。一部で話題となっている空港民営化問題…

私が常用漢字に入れたい字 2

拱 キョウ・こまねく 「拱手傍観」 斂 レン 「収斂」 峻 シュン・けわしい 「峻別」 炙 シャ・あぶる 「人口に膾炙する」 熾 シ・さかん 「熾烈」 燐 リン 「燐寸」(マッチ) 痣 シ・あざ 眩 ゲン・くらむ 「眩惑」 疼 トウ・うずく 「疼痛」 瞞 マン・だま…

日本鉄道旅行地図帳1 北海道

廃線跡の地図が細かく出ているので、つい買ってしまった。馬力による殖民鉄道まで載っている。だが残念ながら未成線の情報は詳しくない。他の巻も買うかどうか迷う。まあ九州は買おうかな。

縦横無尽の知的冒険

私と同年生まれの在野の思想家・永井俊哉氏の著書。教養エッセイ集というべきか。タイトルが示しているように、知の各分野を越境して痛快の論じてゆくが、根拠が注で示されていないことが不満(参考文献は一応ついてはいるが・・・)。太陽黒点など、気候が…

思想地図 vol.1

東浩紀と北田暁大という、70年代生まれを代表する二人の論客が編んだ雑誌。特集は「日本」で、それなりに面白い論文もあるけれど、不満もある。若い書き手を重視するのはよいが、若手だけで固めるのは「内輪ウケ」に陥らないだろうか。例えばここに、柄谷…

「知」の方法論:論文トレーニング

論文を書くための方法論を書いた本は少なからず出版されているけれど、本書はその中でも出色の出来と言える。第1部「考えるトレーニング」では、考える力を「知る力」「事実とそれ以外を区別する力」「分類する力」「切り分ける力」「分析する力」「構築す…

封印されたミッキーマウス

「封印作品の謎」の著者による姉妹編。「抹殺されたエピソード」を発掘する。タイトルは、大津市の小学校で、子供たちがプールの底にミッキーマウスを描いたところ、ディズニーが著作権法違反で告発し、消させた問題。これには、「ディズニーが子供たちをデ…

霞ヶ関埋蔵金男が明かす「お国の経済」

「さらば財務省」の高橋洋一氏による新書だが、これは書き下ろしというより語り下ろし(喋り下ろし)だろう。聞き手に対して好き放題言っているといった趣き。したがって軽い本なのだけれど、官僚が大臣を「ポンチ絵」で操縦する話など、霞ヶ関のインサイダ…

言語世界地図

世界の言語の要を得た解説書。「スウェーデン語、ノルウエー語、デンマーク語は方言程度の違いしかない」など、有益な情報が詰め込まれている。日本語は特殊で難しいと私は思い込んできたが、本書には「日本語は比較的覚えるのがやさしい言語である」(p.148)…

官製不況

第一章で、日本株が下がり続けている理由を、「構造改革」が失敗に終ったことに外国人投資家が嫌気がさしたため、とする。グローバル化の中では仕方ないこととはいえ、東京証券取引所の株式売買のうち、約6割が外国人投資家という数字には考えさせられる。…

組合総会

通常業務をこなした後に、組合の仕事(今年度は組合の役員もしている)。組合活動に意義が全くないわけではない(特に、文部科学省のいいなりにならないためには、ある程度の団結は必要)が、考え直さなくてなならないことも多いと思う。給料から組合費が天…

ロベスピエール/毛沢東

スラヴォイ・ジジェクの新刊だが、日本版オリジナル。ジジェクが革命家「ロベスピエール」「毛沢東」の論集に寄せた論文などから一冊にまとめた。Ⅰが「毛沢東」、Ⅱが「バディウ」(そんなに大物だったのか)、Ⅲが「ロベスピエール」、Ⅳが「バートルビー」(…

ゼミナール ゲーム理論入門

ゲーム理論の入門書として、親切に分かりやすくできている。それでも、「不完全情報」でのゲームや、「不完備情報」のゲームとなると、だんだんと頭がこんがらがってくるのではあるが。繰り返しゲームで、最後の一回だけ裏切る戦略を「不二子戦略」(ルパン…

私が常用漢字に入れたい字 1

昨日紹介した学術審議会の常用漢字増補案、全くの的外れとは言わないが、私が常用漢字に入れたい字は他にもある。行き当たりばったりになるけれど、いくつか備忘録的に書いておきたい。哺 「哺乳類」の「哺」である。「ほ乳類」という書き方は分かりづらい。…