2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

メッシュ

製品やサービスを、ネットワークを通じて「シェア」するやり方を、著者はメッシュ(=網)という言葉で表す。現在ではさほど独創的な考えではないが、クリスマスツリーのレンタルなど、有益な試みについての実例が豊富に載っている。著者はカリフォルニア在…

調査の科学

統計数理研究所長として活躍された林知己夫氏(1918−2002)の1984年の著書を文庫化したもの。社会調査の基礎が記してある。数学が全くできない人にはこれでも分かりにくいかもしれないが、通常の理解力のある人なら大丈夫のはず。「母集団」の前…

モバイルバリューの社会システム

電子マネーを中心とした「モバイルバリュー」(持ち運べる経済的価値)のついて解説した本。一人の著作ではなく、NTTドコモの「モバイル社会研究所」に置かれた研究会のメンバーが、一章づつ書いている。 そういえば、数日前に読んだ「フェリカの真実」で…

素晴らしき3Dの世界

いま盛んに3Dテレビの広告が行われているが、実はこれまでも何度か「3Dブーム」なるものがあり、必ずしも新しい技術ではない。ホイートストンがステレオスコープを発明したのは1832年にさかのぼる。その後も、例えば1950年代、80年代にも一時…

世論をつくる

フランスの社会学者で、ブルデューの盟友の一人でもあったパトリック・シャンパーニュの著作。フランスの政治・社会という文脈を理解していないと分からない個所もあるのだが、もちろん日本とも共通しているところもある。「世論」というものが客観的な存在…

靖国

公開時に右翼の妨害を恐れて上映中止を決めた映画館が出るなど、それなりに話題を呼んだドキュメンタリーだが、今回借りて見てみて、正直たいした作品ではなかった。靖国のために刀鍛冶をする老人の映像をクッションとしてはさみながら、靖国への参拝に賛成…

文学者はつくられる

日本の大正期を舞台とした、近代文学の各論。現在では既に忘れられた「江間修」に関する章や、漱石論、龍之介論、正宗白鳥論、有島健郎論などを含む。タイトルからも分かるように、文学を文学外の要因・文脈(経済や科学など)と関連付ける視点に立つものが…

核燃マネー

朝日新聞青森支局の記者たちが、下北半島および青森県全体に流れこんだ「核燃マネー」(原子力関連の交付金や、寄付金など)の全貌を、取材で明らかにした書。2005年の本なので、データは多少古くなっているけれど、今こそ読まれねばならない本だと思う…

貧者の領域

この国で「貧困である」とはどのようなことなのか。野宿者など貧困者に与えられる冷たいまなざし、彼らの置かれた実情を、各種の資料や、実際の聞き取りなどから明らかにする。彼らの多くは、お上の頼ることを潔しとせず、また、自己責任という「倫理」を内…

シャッターアイランド

遅ればせながら、近所のレンタル屋でDVDを借りてきて見た。ディカプリオが、精神を患った凶悪犯を収容している「シャッターアイランド」での行方不明事件を解決するため、島に乗り込んで行く・・・という筋。未見の人のネタバレになると悪いので、ここか…

大学の下流化

竹内洋さんの本は、面白いところももちろんあるのだが、前作「学問の下流化」のように、軽い雑文集をハードカバーにし、重厚な表紙をつけて、硬い本のように見せかけて売るのは辞めてほしいな。本書にしても同様の雑文集で、全く同じ「戦略」が取られている。…

予測にいかす統計モデリングの基本

タイトルに「基本」とついてはいるものの、中身は結構難しい。ベイジアンを使って現実のモデルを作り、予測に生かそうというのが主旨。最終章の、お掃除ロボのための確率ロボティックスの話が興味深かった。

J-アニメーション究極大鑑

「J」というタイトルから分かるとおり、日本のアニメーションを対象にした「ぴあマニアックセレクション」の一冊。2005年から1958年へと時間軸をさかのぼる形で、各作品が紹介されている。

世界と日本のアニメーションベスト150

前者は、アニメーション関係者(監督、製作者、評論家など)138人からのアンケート調査によって、アニメ作品のランキングを決めようというもので、実際に150位までの順位が載っている。ユーリ・ノルシュテインは確かに優れたアニメ作家だが、1位、2…

DNAと犯罪捜査

著者はフランス人なのでフランスの事例が中心だが、他の欧米諸国のDNA捜査やDNAデータベースについてもある程度は書かれていて参考になる。日本の話は本文には出てこないが、巻末で赤根敦氏が、日本のDNA鑑定について解説している。

フェリカの真実

フェリカというのは、ソニーが開発した「非接触ICカード技術」で、エディやスイカ、イコカといった日本の電子マネーの多くで使われている。本書の主人公は、ソニーの技術者であった(既に退社している)日下部進氏。日下部氏は、「海運王」と呼ばれた実業…

情報法入門 第2版

2008年に初版が出されたものの改訂版で、新たな動向が盛り込まれている。

遺伝マインド

慶応大学で、遺伝子と人間の成長や心理について研究されている安藤寿康教授の著書(慶応には「ふたご行動発達研究センター」というのがあるそうだ)。最近のこの分野における興味深い研究を援用しながら、遺伝子の影響が、おそらく一般に思われているよりも…

20世紀の歴史 下

ホブズボームの大著の下巻。政治や経済だけでなく、例えば芸術や科学についてもそれなりに目配りをしていて、ホブズボームの碩学ぶりが伺える。巻末の以下のような文章に、氏の歴史観が凝縮されているように思う。 われわれの住んでいる世界は、過去二、三世…

検証 東電原発トラブル隠し

2002年に出た岩波ブックレットの一冊だが、今こそ読み返されるべき本だろう。高木仁三郎氏の作った「原子力資料情報室」が著者。東京電力が、これまでにも、福島や柏崎の原発トラブルを隠蔽し、通産省や原子力保安院も一緒になって(時には、事実を知ら…

間メディア社会における世論と選挙

著者の遠藤薫先生からいただきました。ありがとうございます。 2008年のオバマの勝利したアメリカ大統領選挙、2009年の日本の政権交替選挙、そして2010年の民主党が敗北した参議院選挙などを題材に、そのメディア利用を豊富な図版、実例とともに…

帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史

小津について既に多くの著作・論文が書かれている中で、新たに一書をものするのはなかなか勇気が必要なことと思うが、若い歴史学者である著者は、文化史と帝国史という二つの観点から「中国化」をキーワードとして小津を論じて見せた。従軍兵士として小津は…

プリクラ仕掛け人の素顔

プリクラ関連の本は少ないのですが、その数少ない2冊。それも両者とも、ごく一部に触れられているだけ。前者は、エンジニア出身の漫画家が、さまざまな町工場や、エンジニアに取材したもので、はっきり言って絵は「へたうま」な感じですが、「今の日本を作…

シブすぎ技術に男泣き!

思想 2011年4月号

岩波の『思想』を読むことも減ってしまったが、特集が「来るべき映画的思考のために」であったので、これは手を出さないわけにはゆかない。北野圭介氏が企画の中心で、他に巻頭には松本俊夫氏のエッセイがあり、北野氏と宇野邦一氏、リピット水田堯氏の鼎談…

豆をめぐる謎 

「豆」という漢字をめぐっては、謎が多いと私は感じています。そのいくつかをご紹介します。ナゾ1:なぜ、「豆」は「マメ」の意味になったのか? 「豆」という字体が、「脚の高い食器の象形」からできた象形文字であるということは、通説となっています。で…

エコ論争の真贋

第一章でリサイクルを、第二章で地球温暖化を、第三章で生物多様性を扱う。分からないことは分からないとする、それなりに良心的な書物だと思うけれど、やはりIPCCを信用(鵜呑み)し過ぎ、また、環境庁技官であったという立場に縛られている面はあるよ…

官愚の国

高橋洋一氏の新作。中身は、まあこれまでの本と同工異曲なのだけれど、歯切れよさが心地良い。「官愚」というキーワードは、また官僚たちの心を逆撫でしそうだが・・・高橋氏のような頭脳明晰な官僚が増えれば、少しは霞ヶ関も変わるかもしれない。今の霞ヶ…

缶の話

「欠」が、「缺」の略字という話は先日しましたが、この左の部分の「缶」もまた、「罐」の略字であり、もともとの「缶」は読み方は「フ」で「カン」とは別字です。腹の膨らんだ土器を描いた象形文字ですね。「缶」を含む字はさほど多くはありませんが、よく…

メディア判例百選

判決文など法律関係の文章は独特で、なれないとなかなか馴染めないが、まとめて読むとだんだんと体に馴染んでくる。本書は、タイトル通りメディア関係の判例を、約100(実際には122)集めたもの。もはや意義を失っているものもあるようだが、削ると執…