2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

最適都市規模と市町村合併

市町村の人口規模を説明変数、一人あたりの歳出額などの支出データを目的変数として回帰分析を行い、「最適都市規模」という考え方を打ち出した吉村弘・山口大学教授の著作。 細かなデータが挙げられており、それなりの労作であることは分かる。しかし、最適…

この国のかたちが変わる

約10年前に出された、市町村合併の実態をジャーナリストたちが探った書。静岡市、さいたま市、山口村、隠岐、米原町、矢祭町、篠山市などの事例が取り上げられている。米原は、彦根との合併か、長浜との合併か、坂田郡4町での合併か、単独かで揺れ、住民…

市町村合併のススメ

著者の小西砂千夫氏は、上記の『淡路島の地域おこし』においても、淡路島の市町村合併について執筆している。地方財政学の第一人者であり、また、西尾勝に次ぐ、市町村合併イデオローグとも言える。本書で述べられていることは、まさしく正論ばかりで、私に…

淡路島の地域おこし

関西学院大学産研叢書の第17巻。タイトル通り、淡路島の地域活性化がテーマ。農業、漁業、製造業、リゾートなどが全11章で扱われている。

ヘンな日本美術史

現代日本画において根強い人気を誇る山口晃氏が、カルチャースクールでの講義をもとにまとめたもの。妻は山口氏のファンで、私も妻に連れられて何度か展覧会を見に行った。私は絵画を、漫然と見てしまうのだけれど、ここにはプロによる見方がふんだんに披露…

岡崎京子論

岡崎京子氏の人気は、氏が交通事故によって長期の休業を余儀なくされてからも衰えない。身近なところで言えば、うちの妻も妹もファンなのである。ゼミでも、岡崎京子を卒論のテーマにした学生が数年前にいた。なぜ人気があるのか、あまり意識することもなか…

フィールド情報学入門

京都大学の研究者たちが、「フィールド」(分析的、工学的アプローチが困難で、統制できず、多様なものが共存並立し、予測できない偶発的な出来事が生起し、常に関与することが求められる場)で使われる手法を、「記述」「予測」「設計」「伝達」という情報…

量子が変える情報の宇宙

原題はそっけなく「information」だけ。物理学者である著者が、情報についての基礎を網羅的に解説した良書だが、邦題では第3部の「量子情報」のところを強調している。わたしが注目したのは第24章の「シャノンを超えた情報理論」で、紹介されているのはイ…

ソフトパワーのメディア文化政策

科研費基盤研究B「ソフトパワー構築に向けたメディア文化政策の国際比較研究」による研究成果であるそうだ。第一部「ソフトパワーの興亡史」では、英仏独米日の文化政策を比較しており、通常の論文風だが、第二部「文化政策のメディア論」は、論文というよ…

後期近代の眩暈

「排除型社会」のジョック・ヤングの著書で、現代社会の諸側面を論じているが、正直なところあまり重要な本ではないと思う。ただ、以下の部分は興味深く感じた。 マスメディアは巨大に成長し、起きている時間のかなりの部分を占拠している。たとえば1999…

社会調査論

先日紹介した『見えないものを見る力』の改訂版。編者二人の文章は共通しているところもあるが、それ以外の執筆者については入れ替えられている。田中研之輔氏による第12章「日雇い労働現場のフィールドワーク」にはいろいろと考えさせられた。著者が米国…

映像文化

国立民族学博物館の研究「20世紀における諸民族文化の伝統と変容」の一環として行われた1992年の特別座談会及び1993年のシンポジウムを基にして作られた本(全9巻のうちの第2巻)だが、残念ながら大した本ではない。

「鉄腕アトム」の時代

1953年から1965年までの間の、映画、テレビ、アニメといった映像メディアの歴史を、その絡まり合いに着目して記述したもの。専門家の書くものはどうしても映画史、テレビ史、アニメ史とバラバラになりやすいので、この試みは有益だろう。タイトルで…

完璧なイメージ

著者はあのサンデル教授の奥さんで、日本版まえがきもサンデル氏が書いている。だが、「映像メディアはいかに社会を変えるか」という副題は、明らかに誇大広告だ。ある写真や映画、テレビ番組が社会にどのような影響を与えたか、断片的には記述があるが、学…

homesick

PFFのスカラシップ作品。廣原監督のPFF入選作「世界グッドモーニング」は大変な傑作で、それと比べるとやや落ちるような気もするけれど、本作も素晴らしかった。社長の夜逃げで失業した塗装工の青年が主人公。しかも彼はちょうど、母親は失踪し、妹は長期…

黒水仙

この二本はイギリスの巨匠、マイケル・パウエルの作品。前者は貧乏貴族が、落ち目で話題作りをたくらむ女優の策略に乗せられ、メディアの前で「結婚」させられるコメディ。ある種の「メディア・イベント」論かもしれない。後者はデボラ・カー主演で、インド…

ヒズ・ロードシップ

さて今日もKAVCへ。PFF3日目。

ピュリツァー賞受賞写真全記録

まさにタイトル通りの本。1942年から2011年までの受賞写真が収められている。驚いたのは、複数回受賞している人が何人もいること。また、死体写真がタブーではなく、実際に死体が写った写真が受賞していることは少なくない。1945年の、ジョー・ロー…

ぴあフィルムフェスティバル 2012

PFF二日目。 「Please Please Me」・・・女子大生が、清掃のアルバイト中に怖い目に遭い、新たなアルバイトを探すのだが、といった日常もの。もっとも、主人公が大学に行く場面が全くないので、大学生と思えなかった。あと、父親が若すぎて父親に見えない…

MEDIA MAKERS

著者はNTTデータを皮切りに、リクルート、ライブドアなどを渡り歩いた人物。メディアの作り手の立場から、いかに影響力のあるメディアを作るかを語る。もとは「宣伝会議」での連載。社会学者等によるメディア論とは、随分と切り口が違う。

見えないものを見る力

9人の共著による社会調査論。後の方に近づくにつれてだんだんと迫力が失われてゆくように感じるのは気のせいか?

ぴあフィルムフェスティバル 2012

KAVEへ行ってPFFを鑑賞。今日と明日はPFFアワード2012。 「極私的ランナウェイ」・・・カメラマンを目指すもやる気の出ないフリーターの若者と、体を売って稼ぐ少女の北へのロードムービー。形は整っているものの、何とも話としては浅薄な感じが拭…

このショットを見よ

フィルムアート社のシリーズ「シネソフィア」の3冊目。大林宣彦から若手まで約30人の映画監督が、自作映画のよく撮れたと思うショットについて自ら解説するもの。長さは一人3ページから6ページくらい。このショットを見よ ──映画監督が語る名シーンの誕…

イギリス映画と文化政策

副題にある通り、ブレア政権以降のイギリスの文化政策を扱った論文集。第2章の56ページにちょっと変な表現があるのが気になった。 しかしながらキャメロンは、暴動を「純粋かつ単純なる犯罪」と扱い、その要因を政府の緊縮政策から派生した「貧困ではなく…

「戦後」日本映画論

1950年代の日本映画を、「サラリーマン映画」、「忠臣蔵」、「アニメーション」などさまざまな観点から論じる論文集。俳優として知られた山村聡が、監督として『蟹工船』を映画化していたことなど初めて知った。しかも、最初に新藤兼人が書いたシナリオの「…

テレビは総理を殺したか

新生党結成以降の小沢一郎を中心に、小泉純一郎、安倍晋三などの政治家の考え方やメディア戦略について解説する。特に独創性は感じられないけれど、堅実な書だと思う。

プルラモン

清水穣氏の芸術評論。写真論を中心として、音楽および陶芸にまで手を伸ばしている。白黒写真はそれなりの枚数収められているが、カラー写真も見たかった・・・

大阪アースダイバー

前著にあたる中沢新一『アースダイバー』は、専門の地質学者等からかなり批判を受けた。そのためかどうかは分からぬが、大阪を扱った本書は、東京を扱った前著に比べると、地質等についての記述は少なく、より文化的な内容が濃くなっているように思う。通天…

ファスト&スロー

ノーベル経済学賞を受賞した心理学者、ダニエル・カールマンの「Thinking,Fast and Slow」の翻訳書。「ファスト」と「スロー」というのは、人間の思考の2つのシステムを指す。「システム1」はほぼ自動的・即時的な判断や思考のモードであり、「システム2…