2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

氏と名と族称

明治期に戸籍制度を通じて国民を管理しようとした日本政府は、まずは、複名や改名の禁止に乗り出す。明治5年太政官公布による複名禁止令、改名禁止令を論じた論文を中心に、乃木将軍の自死後断絶した乃木家を改名によって再興しようとした毛利氏のもたらし…

新世代知的財産法政策学の創成

北海道大学の、21世紀COE知的財産研究叢書の第4巻。必ずしも「政策学」になっていないという点はやや羊頭狗肉か。全体に細かな論点が多くて部外者にはやや酷。第12章「先住民族の文化と知的財産に関する一考察」は、知らなかった事実が多く興味深かった…

件の青学の瀬尾准教授には、研究費で買った物品を、ネットオークションで横流ししていたとの疑惑まであるらしい。もしそれが本当なら、表現の自由云々と関係なく、アウトだろうな。迷惑な話でもある。つい先日も書いたけれど、真っ当な研究者にとって、これ…

まぐれ

トレーダー兼大学教授の著者が、トレーディングからの題材を中心に、人間がどうしようもなく持つ「認知のゆがみ」について書いたエッセイ。人は、運よく成功しても自分の能力のためと思いたがるし、ノイズのような相場変化にも意味を読み込みたがる(そうし…

シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性

丹念に事実を追いかけたシュルレアリスム論。

帝国以後

フランスの人口学者エマニュエル・トッドによる米国批判もしくは米国の衰退を予言する書。人口学者だけに(?)人口要因を重視している。ユダヤ人は民主党支持者が多いのに、イスラエルを支持するのは(アラブへの憎しみから)共和党支持者が多いという「ね…

2日続けて大学の醜聞を書くのは気が進まないが・・・ 毎日新聞ニュースより 東大院入試漏えい:准教授、複数の学生に漏らす−−解雇発表 東京大大学院の入試問題漏えいに関し、東大は28日午後、海洋研究所の浦川秀敏准教授(37)を25日付で懲戒解雇した…

メディア・コミュニケーション学

社情研時代にお世話になった、橋元良明教授の編著で、その弟子筋にあたる人が執筆の中心をなしている。良く言えば「おもしろいとこ取り」、悪く言うと「書きやすいとこ取り」の本かな。網羅的ではないので、教科書として使うのは困難。大学初年度生の参考書…

常軌を逸した中身で話題となっている、青山学院大学の瀬尾准教授のブログ(およびまとめサイト)をちょっと見てみた。確かにひどい。本村さんに対する暴言も悪いが、他にも、「おいしいものが食べたい」(ブログのタイトル)といいながら、北朝鮮の方が日本…

テレビショッピング事始め

著者は長年にわたりフジテレビで、「リビング11」の商品リポーターを務めた経歴を持つ。テレビショッピングについての本はあまりないので、その意味で資料としての価値がある。開始した当初、法律上の観点から反対論があったり、広告代理店が反発したり、…

フラット化する世界(上下)

しばらく前に話題になった、IT化・グローバル化文明論。遅ればせながら目を通した。さして目新しいことが書かれているわけではない。インドや中国の台頭、そして、米国の危機意識。特に、理工系教育の重要性が強調されている。

新日曜美術館でも取り上げられていたが、私も京都国立博物館の河鍋暁斎展には行った。実はそれまでこの画家の名前は知らなかった。幅広いモチーフの作品を遺しているが、特に印象深いのは幽霊画かな。

ハッピーマンデー

DVD

そんなことを書いたのは、このDVD「ハッピーマンデー」で彼女の才能に感服したから。精神病院風のシーンがやや長すぎ、もっとネタを見たかったという思いは残るが、「コックリさん」「引きこもり」「米のヨシダ」など、素晴らしい作品を見られる。鳥居みゆき…

ティファニーで朝食を

村上春樹による新訳の『ティファニーで朝食を』を読んでみた。確かに、うまいところが多いと思う。以前の新潮文庫版(龍口直太郎訳)と、ちょっと比べてみよう。タイトルの由来ともなっている有名な場面の、ホリーの台詞。まず村上訳では、 映画スターになん…

図説 死の文化史

著書『子供の誕生』などで知られるアリエスの晩年の著作。「図説」とタイトルにあるように、西洋における死にまつわる文化(墓碑や、臨終の場面を描いた絵画など)を、豊富な図版とともに論じてゆく。

真理の哲学

ニーチェ、フッサール、メルロ=ポンティ、フーコー、分析哲学を論じた哲学の入門書。フッサールとニーチェとの連続線を強調したところが特徴か。

ネットメディアとコミュニティ形成

ここ数年の遠藤薫氏の本と同じように、前半を本人が、後半を若手の社会学者たちが、執筆分担している。ところどころに面白いところがあるが、「東京タワー」に関する章は、ちょっと失望(著者が東京タワー近くの病院に入院したときに出会った、不安定雇用者…

経済学と知

原題を直訳すると、「ポストモダニズム、経済学、そして知識」。1995年に行われた同名のコンファレンスでの論考をまとめたもので、いくつかの論文が日本語版では省かれているが、それでも500ページ弱と結構厚い。フェミニズムなどの観点から経済学を…

多宇宙と輪廻転生

「のぞき学原論」で変な方向へ行ってしまった(?)三浦俊彦教授の新著。なぜ「私」は「私」なのかという、多くの人が若い頃にふと抱いてしまう疑問から説き起こす多宇宙論。論理学のスリリングな切れ味を感じさせてくれる。ただ5章と6章で展開されていい…

古典日本語の世界

東大駒場の「国文・漢文学部会」の先生達が学生向けに書いた、漢文の重要性を再認識させるためのテクスト。頼山陽の日本外史が、江戸・明治期に何度も出版されたほどのベストセラーだったとは知らなかった。

ハワイ日系人の歴史地理

ハワイへ渡った日系人たちの、出身地方(沖縄や、広島、山口、熊本といった、西日本の地域から渡った人がやはり多い)、ハワイでの居住地、職業などをデータから明らかにする。第4章はマウイ島、第5章はオアフ島ハレイワ地域の、より細かな分析。ただペー…

「池田信夫blog」が、すごいことになっている。 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/84e1469c85ff818b60d17175b66f78a9私は公文俊平氏の著作、特に『情報文明論』には、敬意を払っている。けれども、迷走の経緯を明らかにしないグローコム組織については、…

「元気村」はこう創る

慶応の国領二郎教授らが、地域情報化の成功例をまとめたもの。「鳳雛塾」(佐賀)、「いろどり」(川勝町)、「からり」(内子町)「Net4U」(鶴岡市)といった、日経地域情報化大賞で入賞した有名な事例が中心。岩手県川井町の、Lモードを使った「孤…

砂男・不気味なもの

ホフマンの小説と、フロイトの論文を、種村季弘氏の名訳で楽しめるお得なカップリングだが、残念ながら絶版だったので、図書館で借りた。掛値でなくすばらしい。

トヨタの正体

週刊金曜日によるトヨタ批判本だが、矛先はトヨタの意に逆らえないマスコミにも向けられている。ハイブリッド車・プリウスについても、製作にかかるエネルギーコストが大きいので、相当(少なくとも3万キロ程度)は乗らないとエネルギー収支が他の車よりよ…

野村證券インサイダー

J-CASTニュースより 野村証券社員がインサイダー取引 4000万円を不正取得 2008/4/22 野村証券の社員ら3人がM&A(企業の合併や買収)などのインサイダー情報をもとに、21の銘柄の株式を売買して4000万円前後の利益を不正に得ていた疑いがあることがわかった。…

アーティスト症候群

芸大出身の元アーティストの著者が、「ナンバーワンよりオンリーワン」のアーティストになりたいという現代人の欲望を病理として解剖する。特に、藤井フミヤ、工藤静香、片岡鶴太郎、カールスモーキー石井といった、アーティストを名乗る芸能人に対する批判…

誰も知らない世界と日本のまちがい

博覧強記の「編集工学者」松岡正剛氏が17歳向けに書いた、近現代文化史だが、17歳が読むにはちょっとつらいかもしれない。むしろ大学3,4年生向けか。

ポル・ポト

丁寧に歴史を掘り起こしているところは評価できるけれど、注を含めて900ページというのは尋常ではない厚さだ。もう少し記述を絞ることができなかったのだろうか。 さて、この本を読んでも、ポル・ポト(サロト・サル)による虐殺の謎が解けるわけではない…

ハワイの歴史と文化

東大の英語の准教授である矢口祐人氏の著書。よくまとまっていると思う。日系移民の苦労話は、泣けてくる。カメハメハ大王についても、戦略的な人物だったことは意外。