2017-01-01から1年間の記事一覧

いかにして民主主義は失われていくのか

新自由主義が民主主義を掘り崩すさまを描き出す。特に第4章で、イラクの戦争と旱魃の乗じ、それまで自立的に行われてきたイラク農業に対して、米国のアグリビジネスが襲い掛かり、結局モンサントの種子がなければ農業を営めなくさせてしまうさまは衝撃的と…

ビッグデータ・リトルデータ・ノーデータ

データの研究への活用が主題で、特に第6章「社会科学におけるデータの学問」は、インターネット研究に多くの紙幅が割かれていて有益である。ただ、有名な「マタイの法則」を「マシューの法則」と訳してはダメだ。

はじめて地理学

タイトル通り、地理学の入門書。主として大学生向けだと思うが、意欲ある高校生にも進められる。ただ、内容は自然地理学に偏していて、人文地理学については手薄。

今度は愛妻家

鬼子母神のそばにスタジオを構える写真家の夫(豊川悦司)は、口うるさい妻(薬師丸ひろ子)に怒られてばかり、時に浮気の虫も騒ぎ出す。とうとう妻は腹に据えかねて、離婚を口にするが、実は妻はすでに一年前に・・・。はっきり言って2時間10分は長く感…

22年目の告白 私が殺人犯です

1995年、阪神大震災の年に起きた残虐な連続殺人事件の犯人が、時効を迎えて自ら名乗り出て、告白本を書き、それを出版社が大々的に売り出す。しかし彼がテレビに出演すると、今度は真犯人を名乗る人間が、動画投稿サイトに、犯人にしか撮れなかったと見られ…

テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅

西田厚聰氏の名前は前から知っていた。東大大学院で政治学を学んでいたが、やはり東大大学院で学んでいたイラン人の奥さんとともに学究の道を去り、東芝に人より約10年送れで入社。その類まれな能力と努力でのし上がり、特にパソコン部門で頭角を現す。そ…

母性のディストピア

宇野常寛氏の長編評論。宮崎駿、冨野由悠季、押井守のアニメーションが核だが、現代の日本社会そのものを「母性のディストピア」として厳しく批判する言辞がその前後にあり、特に、情報社会批判としても読める。 右派、左派の両方をバッサリと一刀両断にする…

ロボット

MIT(マサチューセッツ工科大学)出版局が出している、エッセンシャル・ナレッジ・シリーズの一冊で、ロボットについて広範囲に書かれているが、訳者が専門外らしく、あまり訳はよくない。たとえば、222ページでは、「メカニカル・ターク」を「メカニカル…

[book}動員のメディアミックス

大塚英治氏が代表で行われた共同研究「おたく文化と戦時下・戦後」の集大成的な論文集。良くも悪くも雑多な印象を受ける。

乱流のホワイトハウス

著者は朝日新聞のワシントン特派員として、ホワイトハウスの内部に深く入り込み、オバマや高官の素顔に触れた。しかし読むほどに、オバマの素晴らしさ(特に広島訪問の決断)と、トランプの未熟さが浮かび上がる。

日本殺人巡礼

フリージャーナリストが殺人事件を取材したもの。私が印象に残ったのは、覚えていなかった事件だが、ネパール人の男が日本人と結婚して来日したものの、約1年後にその妻と幼い子供を殺した事件。実は男にはネパール人の妻子もおり、れっきとした重婚、小さ…

電通巨大利権

タイトル通り、電通の持つ巨大な利権や闇が語られる。 特に東京五輪および、憲法改正国民投票について。東京五輪はもはや、電通が金儲けをするための道具になり下がっているのではないか。電通やIOCは巨大な利益をむさぼりながら、無償で若者たちを炎天下…

あなたは自分を利口だと思いますか

表題など、オックスフォードおよびケンブリッジで出題された「難問」を紹介する。「歴史はつぎの戦争をとめ得るでしょうか?」うーん。今では階級的ということであまり奇抜な問題は出されないそうだ。

検証 産経新聞報道

産経新聞は「商売右翼」であり、まあまっとうなジャーナリズムとは言えないが、きちんとそれを裏付けた著作。朝日の植村隆記者を攻撃したものの、植村氏に反論されてボロボロになっていく阿比留記者のことを、植村氏自身が第2章で書いている。また、大阪本…

休日出勤していいますが、やっと業務が終わりました。

性の夜想曲

これは一種の奇書。チェコ・アヴァンギャルドの詩人と画家がコラボして、性を描き出す。

クラシック音楽の歴史

うちの母はクラシック好きだったのだけれど、私はあまり興味がなかったので、中高の音楽教科書程度の知識しかない。本書は人物中心、平易に説明してある。個々の楽曲がまだ消耗品であったころ、楽譜にも残されずに消えてしまった多数の曲を思うと泣けてくる…

昨日は兵庫県民会館で、ひょうご講座の講演をしました。 与えられたタイトルは「ソーシャルメディアの成長と民主主義」。大したお話もできませんでしたが、60代を中心とした約30名の聴衆の方々はとても熱心に聞いてくださりました。大学とは偉い違いだ。…

The Black Box Society: The Secret Algorithms That Control Money and Information

「美少女の記号論」

日本記号学会による「叢書セミオトポス」の12巻。美少女についていろんな論者が語るが、なんといっても藤浩志氏の話が衝撃的だった(どこが衝撃的なのかは読めば分かります)。巻末には謎の「有毒女子通信」が付されている。

模様と意味の本

「点と水玉」「線と縞」「四角と格子」「曲線と花柄」「枠組みを超えたパターン」の5章構成で、洋服や壁紙などを題材に模様の意味づけを語る。

印刷という革命

副題に「ルネサンスの本と日常生活」とあるように、ルネサンス期の出版産業や、人々と書物とのかかわりを、詳細な資料をもとに跡付けた浩瀚な書。パピルスの大敵は湿気である、とか、ベネディクト会子デ・ストラータによる印刷批判とか、エラスムスによるラ…

特攻隊映画の系譜学

日本は戦時中、特攻隊という名のいわば「自爆テロ」へと若者を追い込んでいった・・・映画に描かれた特攻隊を精緻に読み解く。私がこの中で見たのは、終章で挙げられていた岡本喜八の「肉弾」だけのだが。

ルポ沖縄 国家の暴力

沖縄県東村高江における米軍ヘリパット建設を、地元の人々の反対に関わらず政府は暴力を使って強行していった。そのありさまを糾弾する書。著者は沖縄タイムズ記者。しかしマスコミの中でもMXテレビのように、権力の尻馬に乗る形で沖縄を侮蔑する者たちがい…

大阪鉄道大百科

大阪の鉄道を紹介するムック。悪い本ではないのだが、最後になって、難読駅名のところで、「鴫野」を「鴨野」と書いてあってガックリ来た。「鴫」という字を知らないのだろうか?

ハイパーワールド

著者の池上英子氏は、サムライ精神を描いた『名誉と順応』などで高名な社会学者だが、まさかこうした情報化の領域に入られてくるとは思わなかった。先日もNHKで、関連したドキュメンタリーを放送していたので、単行本の方も読んでみた。自閉症傾向を持っ…

ど田舎うまれ、ポケモンGOをつくる

ポケモンGOは私も楽しませてもらっているので、どんな人が中心に開発したのか興味があったのだが、こんな人とは思わなかった(いい意味で)。著者は野村達雄という名前を現在は名乗っているが、もともと中国黒竜江省生まれ、家族を失った中国残留婦人が、中…

風格の地方都市

辻村明による先行研究を参考に、京大の行政学者である著者が、日本全国の都市の「風格」を数量化した意欲的な研究。分化、経済、交通などの多数のデータを、「規模の風格」「心意気の風格」の2種に集約した。たとえば近畿地方では、「規模の風格」は大阪市…

煙が目にしみる

ハワイ出身の女性が、「死」への感心からサンフランシスコの葬儀社に就職し、遺体の火葬などの仕事を経験する。その仕事のありさまや、その時に感じたことを綴ったエッセイ。葬儀ディレクターの仕事を学ぶためにほどなく退職するが、失恋などのために自殺に…

社会情報学会(2日目)

駒澤大学の社会情報学会・2日目に出席。 終了後、新幹線で帰るが、台風のために西明石で臨時停車し、そのまま1時間以上も足止めを食らってしまった。本当に参った。