2011-01-01から1年間の記事一覧

人文・社会科学の統計学

かなり昔に買って、半分くらい読んで放っておいた本だが、一念発起して最後まで読んだ。東大の教官を中心に9人の共著。統計学の基礎から、経済学・社会学・心理学における統計利用まで解説されている。特に第9章「社会移動データの分析技法」は、ここまで…

コンピュータ・グラフィックスの歴史

ウィットニー兄弟の抽象アニメーションから説き初め、CAD/CAM、サイエンティフィック・ビジュアライゼーション、そして数多くのCGベンチャー企業など、コンピュータ・グラフィックスの歴史を多数の資料を基に描き出す基本書。日本でも1967年という早い…

グーテンベルクの時代

歴史ライターがグーテンベルクについて詳しく解説した著作。グーテンベルクの生涯や家族、印刷屋としての経営戦略、アイゼンステインの論じた宗教改革との関係など、勉強させてもらった。

よくわかるメディア法

メディア法や情報法については、専門書はそれなりの数が出ているが、学部生向けの教科書はさほど多くない。本書は、見開き2頁を単位とする「よくわかる」シリーズの一冊で、240ページ全体がメディア法に充てられているため、項目によってはかなり詳しく…

一般意志2.0

現代日本を代表する思想家である東浩紀氏の新作(とはいっても書下ろしではなく2009年から雑誌に連載したものをまとめた著作)。著者自身がなんども予防線を張っているように、内容はむしろ単純で、ルソーの「一般意志」概念を、情報技術の進歩によって復活…

社会学の方法

東大駒場で社会学を講ずる佐藤俊樹氏の著作。目次を見ると、あたかも社会学史のように、デュルケーム、ジンメル、ウェーバー、パーソンズ、ルーマンと進んで行くが、あくまで各社会学者の「方法」を、現代のわれわれがどう活用するかという観点が中心で、単…

新しい世界史へ

著者はもともと、イスラーム史を専門とする研究者だが、いまはあえて、専門は「世界史」と表現する。現在高校等で教えられている「世界史」に問題があると認識し、それを是正することが使命と感じているからだ。一言で言えば、「ヨーロッパ中心史観」を脱却…

デジタルメディアの社会学

若手の社会学者6人が執筆したもの。こちらは私の専門に近い本で、また、お世話になっている北樹出版から出ているので悪口は言いたくないのだが、正直、期待外れだった(期待が大きすぎたということもあるだろう)。12章の節の名前として出てくる、「ユビ…

中国 改革解放への転換

小島朋之・慶應義塾大学教授の追悼論文集で、教え子や研究仲間の人々が一章ごとに執筆しているものだが、残念ながら、特に専門外の人間にとっては、問題意識が専門的過ぎて(あるいは特殊過ぎて)、興味の持てない論文が多い。そのなかで面白かったのは、高…

共分散構造分析はじめの一歩

タイトルが示す通り、共分散構造分析の入門書で、見開き2頁が一単位となり、左頁に説明、右頁に図表という構成。概ね平易に書かれているが、第11章のAmos(SPSS社が提供しているソフト)を使うところから、難易度が急上昇する。

コミュニティFM進化論

制度上1992年にスタートしたコミュニティFMは、来年「成人」を迎える。本書は、FM東京に長らく勤め、各地のコミュニティFMの立ち上げにも関わってきた紺野望氏(id:n4543)の著書。第一部ではコミュニティFMの現状を、第二部では災害時におけるコ…

1勝100敗 あるキャリア官僚の転職記

この2冊は大学教員の採用を扱ったもの。私も大学教員として、採用人事に(下っ端として)関わることもあるが、結構不合理な点があり(特に年齢に関することだろうか。うちは複合系の学部なので学閥や派閥が問題になることはあまりない)、その点では忸怩た…

大学教員採用・人事のカラクリ

ペニシリンはクシャミが生んだ大発見

重要な医学上の発見がどのように行われたのか、そのエピソードを一項目8ページ程度で25話集める。標題にあるフレミングのペニシリン発見や、X線撮影、胃カメラ、輸血などについて、専門外の人にも分かりやすく平易に書かれている。

大震災後の社会学

編著者の遠藤薫先生にいただきました。ありがとうございます。遠藤先生を中心に、高原基彰、西田亮介、関谷直也といった若手・中堅が脇を固める。大震災に対して社会学は何ができるのかという問題意識に貫かれた、新書にしては内容の濃い一冊。

原発依存と地球温暖化論

原発および、二酸化炭素を原因とする地球温暖化論を批判的に検討するもので、私の立場とも近い。オリジナルな部分はほとんどない(専門の自然科学者ではないのだから仕方がない)のだけれど、多くの著作・論文から必要十分な個所を引用して構成されている。

社会システム理論

井庭崇氏の編著で、氏による序章と、氏と宮台真司、熊坂賢次、公文俊平各氏との対談から成る。井庭氏はそれなりに力量のある若手学者だと思っていたが、はっきり言ってこの本はよむ価値はなかった。宮台氏の発言はそれなりに啓発的だけれど、他の本との重複…

行政の経営分析

橋下氏のブレーンの一人とされる、上山信一・慶應義塾大学教授が中心となって、大阪市のいくつかの事業の評価を行なったもの。取り上げられているのは、ゴミ収集事業、市営バス事業、消防事業、市営住宅事業、広報事業、下水道事業、市街地整備事業、施設事…

いまを生きるための思想キーワード

金沢大学に在籍する思想家、仲正昌樹氏の著作。中村雄二郎の『術後集』に似た感じの本だな、と思っていたら、実際に著者も編集者もそれを意識して作った本だった。中身は、例えばサンデルの「正義」批判など、それなりに有意義なところもあるが、きちんとし…

進化するシステム

ミネルヴァ書房の「シリーズ 社会システム学」の一冊。社会をモデル化し、コンピュータ・シミュレーションを使ってその変化、発展を考える各種の研究が紹介されている。

絵図学入門

東京大学資料編纂所の杉本史子教授を中心とした、科学研究費補助金による研究から生まれた本であるらしい。日本の近世・近代を中心としたさまざまな「絵図」が紹介されるだけではなく、絵図の作り方、測量の方法、研究の方法まで多岐に渡って扱われている、…

情報社会と共同規制

情報学環出身の若き俊英の一人、生貝直人氏の初の単著。インターネット上の規制(例えば、著作権保護や有害情報規制など)において、いかに「共同規制」を活用していくのか、各国の制度を中心に論じられる。私の問題意識と重なる部分は多くはないのだが、そ…

地図投影法

地図の投影法については、中学や高校の地理で少しは習うけれど、大した時間もかけてはもらえず、有名な図法のいくつかの特徴を知る程度のことしかできない。しかし本書は、多数の図法について、理論的・数学的に相当突っ込んで記述しており、知的な好奇心が…

中国語圏文学史

日本における中国文学の第一人者である、藤井省三・東大教授の著作。清末から現代までの中国大陸と、香港・台湾の文学が概説される(台湾については専門外なのか、王徳威の著作に大きく依存している)。私は母が中国文学者なので、中国の作家についていろい…

中国化する日本

若手の歴史学者による、大胆な啓蒙書。ここで言う「中国化」というのは、宋代に始まった「貴族制度の全廃と皇帝独裁政治」「経済や社会を自由化する代わりに政治秩序は一極支配によって維持する」仕組みを指す。著者によると、日本の歴史は、中国化と、それ…

独裁者の教養

今日はたまたま、こんな本を読んでいた。まだ若いライターが、独裁者が若い頃にどんな教育を受け、どんな教養を積んだのかに重点を置いて書かれた本。残念ながら、金正日については、章を割いて書かれてはいない(コラムの中に短くは出てくるが)。章を割か…

金正日死去

金正日死去の報、届く。月並みだが、これを契機として、北朝鮮がよりましな体制になり、餓死者なども減ってくれると良いのだが。もちろん、拉致問題の解決も。

仰天 カルトムービー100

タイトルに偽りなく、様々なカルトムービーが、1本2頁で解説される。「アンダルシアの犬」から「ファイトクラブ」まで、洋画中心だが、中国映画、インド映画なども含まれる。鳥居みゆき、成海璃子、中川翔子などのインタビュー記事もある。 絞殺魔 [DVD]出…

ソーシャルゲーム・ビジネス入門

著者は早稲田大学PHS研究会を経て、自分でソーシャルゲーム「駅コレ」(全駅制覇 駅コレクション)などを開発した人物。実務的な視点から、ソーシャルゲームについて解説したもの。いろいろと教えられるところがあったが、特に、九州大学において、産官学…

翻訳新刊のお知らせ

康生という、毛沢東の影で悪事をしていた男が主人公の、一種のノンフィクション・「ピカレスク・ロマン」です。龍のかぎ爪 康生(上) (岩波現代文庫)作者: ジョン・バイロン,ロバート・パック,田畑暁生出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/12/17メディア…