2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

閉じこもるインターネット

原題は「フィルターバブル」。グーグルの検索エンジンなどが、検索結果をパーソナル化し、その個人に合わせて表示する(フィルタリング)することを問題視する。なぜか。それによって、各人の見ているものが全く違ってしまい、各人があたかも泡(バブル)に…

デジタルコンテンツ法制

デジタルコンテンツに関する新しい解説書。最後のパトリ・フリードマン(ミルトン・フリードマンの孫)の逸話が面白い。公海上に真のリバタリアン国家を作ろうとしてるんだと。

「中立」新聞の形成

明治の新聞紙をテーマとした論文7編を収める。やはり表題作の「「中立」新聞の形成」が、最も興味深かった。朝日新聞がその揺籃期(明治十五年から二十七年)に、秘密の会計操作を行い、密かに政府から出資を受けていたという話で、朝日の公式の社史には出…

原発と自治体

著者の金井利之氏は、駒場時代の同級生で、当時から賢かったが、今では行政学で日本をリードする存在となった。本書はブックレットという薄い本だが、その問いかけは重い。原子力災害(著者は「核害」という言葉を使う)があった時に、自治体はどう行動すべ…

体制維新 大阪都

橋下徹・現大阪市長の主張と、橋下氏と堺屋太一氏との対談を収める。 橋下氏の意見に、両手を上げて賛成はできないが、書かれていることの8割くらいはまともなことだ。政治家は方向を示し、役人がそれに従う。問題があれば、選挙で政治家を変える。それで民…

魂と体、脳

私としては随分と時間をかけて、ゆっくり読んだつもりなのだが、それでもなかなか難しい。哲学の中でも難物の「心身問題」を扱っている書だから仕方ないかもしれない。ベルグソンやドゥルーズ(『襞』)などを使うだけでなく、コンピュータ・シミュレーション…

政府は必ず嘘をつく

911に遭遇した女性ジャーナリストが、特にアメリカ政府や国際機関の嘘を暴く著作。特に米国政府が、富裕な1%のための政策を行っており、残りの99%がそれに不満を持っているという構図は、間違ってはいないだろう。日本もこのままでは、それに近くな…

漢字からローマ字へ

1958年に出た古い本で、著者は「岩波中国語辞典」などの編者としても知られる倉石武四郎。書かれている内容は、ある意味、悲惨に尽きる。漢字を廃して、ローマ字表記に向かおうとしている中国共産党・毛沢東の試みを礼賛、日本でもそうしよう、という本なの…

第二のフクシマ、日本滅亡

広瀬隆氏の新作。老いてますますエネルギッシュ、さらに鬼気迫る書きぶりとなっている。特に広瀬氏が危機感を募らせるのが、六ヶ所村の再処理施設。もしここに地震・津波が襲ったら、甚大な被害になるという。 また、環境保護において、二酸化炭素を原因とす…

LOVE地球儀

小説等は別として、地球儀自体に関する本はあまり多くない。本書はその一冊だが、ビジュアル面を重視していて、読み物としての読み応えはあまりなく、また、半分は「商品カタログ」である。巻末には「地球儀を買いに行こう」として、5つのお店が紹介されて…

消費増税では財政再建できない

随分とショッキングなタイトルだが、正確には、現在政府が提唱しているような5%の増税(消費税を10%に)では、財政再建の効果はわずか2年程度、ということがシミュレーションで示されている。もちろんいくつかの前提を置いたシミュレーションだから、…

日本語の世界4 日本の漢字

中央公論社から1981年に出た「日本語の世界」の3巻と4巻。3巻の「中国の漢字」の方は貝塚茂樹・小川環樹という2人のビッグネームの編著で、漢字の起源、音韻、構成、中国の字書、中国の文字改革などが論じられている。最もおもしろいのは吉田恵氏の…

日本語の世界3 中国の漢字

「地球温暖化」神話

こちらの本も極めて重要だ。地球温暖化を口実に原発が推進されてきたことを思えば、上記の本とも関連している。 著者の渡辺正・東大教授は、各種のデータから、二酸化炭素脅威論が幻想であることを暴く。まず、二酸化炭素が濃い方が、植物の光合成が活発化し…

プロメテウスの罠

今日読んだ2冊の本は、いずれも極めて重要なもので、一人でも多くの人に読んでもらいたいと思う。 一冊目は、朝日新聞の特別報道部の記者たちが書いた『プロメテウスの罠』。なぜか朝日新聞出版ではなく学研から出ているが、福島原発事故以来の、政府や役所…

夢よりも深い覚醒へ

大澤真幸氏の新刊で、副題は「3.11以後の哲学」。一言で要約すると「脱原発」に尽きてしまうのだけれど、キリスト教神学や、ラカン派や、カントや、江夏豊や、さまざまな事象が「手をかえ品をかえ」引き合いに出される。この「迂回」を楽しめるかどうか…

法と経済で読み解く雇用の世界

労働法学者と経済学者が共著で書いた、雇用・労働についての大学生向けの入門書で、中身はまじめなものだが、各章の冒頭に小説まがいの「ストーリー」がついていて、しかも、後半になるとなぜかやたらと不倫恋愛が出てくるのはなぜだろう?まあ必要と言えば…

卒業証書授与式、謝恩会。毎年のことながら、年の速さに驚かされる。こちらが年を取ったということが大きいのだろうけれど、ついこの前入学してきた学生さんたちが、あっという間に卒業して行く。着任したての頃は、試行錯誤も多かったが、もう少し学生さん…

記号論と社会学

亘明志氏の著作だが、ある意味本書は現代社会論の古典となったと思う。社会学を学ぶものが記号論をつかいこなすために、記号論を超えた視座まで提供することを目指す。

新版 原子力の社会史

この本は是非とも多くの人に読んでもらいたい。著者の吉岡氏は、どちらかといえば反原発派の科学史家だけれど、本書の記述はあくまで客観に徹していて、非常に読み応えがある。 著者は世界の原子力利用の歴史を、以下の八段階に分ける。 1.戦時計画の時代…

「なぜ?」から始める現代アート

現代アートの紹介本だが、特に目新しい記述はなく、入門者向け。巻頭にカラー口絵が8ページついているのは、新書としてはお買い得かもしれない。ところで河原温の「日付作品」、私はまったく面白いと思ったことがないんだよね。

新版 災害情報とメディア

確か旧版も読んだのだが、3.11後の増補部分があるので新版も目を通した。NHK放送文化研究所研究員であった平塚千尋氏の著作。東日本大震災のみならず、中越地震、火砕流、南紀沿岸の津波流言騒動、阪神大震災などが詳細に解説されている。旧版で読ん…

戦後日本漢字史

京大の漢字学者・阿辻哲次氏の本もずいぶん読んだ。中には粗製濫造ではないかと疑われる本もあるが、本書は当たりだった。阿辻氏の本を何か一冊と思っている読者には、本書を薦める。大きな主題は、日本における漢字制限の歴史。漢字は常に、廃止論(甚だし…

こんな大学教授はいりません

鷲田小弥太氏の本は、昔はずいぶんと読んだものだが、最近は読んでおらず、久方振りに手に取った。氏もこの3月で退職で、「大学教授になる方法」では語られなかった本音(?)も盛り込まれている。辛口だが、中身の9割程度はまあその通りと言ってよい。今…

ソフトウェア社会のゆくえ

ソフトウェア工学の第一人者による概説書。第1章の、「ソフトウェア」という言葉の由来の話などはまどろっこしいが、第3章で扱われている、東証の「誤発注事件」の解説は、株価決定のメカニズムから、みずほ証券による「取消処理」が無視された不可解さま…

政治家の殺し方

中田宏・元横浜市長の手記。 この本に書かれていることが本当なら、私は大変な思い違いをしていたことになる。週刊誌で次々と報じられた、中田氏に関するスキャンダルを、半ば信じていたからだ。全て本当ではなくても、半分くらいは本当なのかと思っていた。…

映像作家サバイバル入門

ドキュメンタリーを中心に活躍する映画監督の松江哲明氏が、個人でどのように映画を作り、そして売って行くのか、自分の経験を基に語る。映像作家を志す人にとっては具体的で役立つところが多いだろう。音楽もそうだが、パッケージメディアが売れない時代だ…

四字熟語の中国史

5日前に紹介したPHP新書の『四字熟語で愉しむ中国史』とタイトル・テーマともかなり似ているが、本書の方が内容が濃い。著者は京大人文研の冨谷至教授で、四字熟語自体の解釈にしても、通説を問い直す、知的好奇心をそそるものが多いのだ。例えば「温故…

世界を騙し続ける科学者たち 上

たとえば「タバコの害」や「オゾン層破壊」について、科学的にほぼ明らかなことなのにタバコ会社や産業界の意を受けて「破壊工作」にいそしんだ、一部の科学者(例えばフレッド・サイツやフレッド・シンガー)の所業を暴く著作。 下巻には地球温暖化の話題も…

検証 福島原発事故記者会見

著者のうち、日隅氏は元産経新聞記者の弁護士で、現在はインターネット市民メディアNPJの編集長。いわばマスコミの手の内を知っているフリージャーナリスト。日隅氏が中心となって、政府および東京電力の記者会見における嘘を暴く良書。特に、メルトダウンを…