私はなるべく様々な分野の本を偏りなく読もうとは心がけているけれど、あまり読まないジャンルの一つが建築論なのである。うちの講座には、梅宮弘光教授という、立派な日本建築史の先生もいるのだが。
さて本書は、タイトルに建築と入っているが、必ずしも建築だけが主題ではなく、むしろテーマは、副題にあるように、世紀転換期ヴィーンの文化、だろうか。女性蔑視の悪名高いヴァイニンガー『性と性格』などが、第3章まるまる費やして論じられていたりする。主役は建築家アドルフ・ロースだが、ほかに画家オスカー・ココシュカ、哲学者ヴィドゲンシュタインなどが登場。