2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

敗戦とハリウッド

戦前のハリウッドは、日本映画界には大きな地位を占めることはできなかった。「1920年代半ば以降、著しく生産力を上げた日本の国産映画に追い越され、成績をあげるのに苦労を余儀なくされる」(本書p.8)。しかし日本の敗戦後、GHQによる映画検閲が厳しく…

ドラムから衛星まで

ニュースの歴史を振り返る。人類が太古から、ニュースというかゴシップが好きだったことが語られる。必ずしもアカデミックなものではないが、読み物として面白い。

運と実力の間

著者は東大理学部を出て、プロのギャンブラー(主としてポーカー)をしている。本書はその体験談だが、実は上の「大格差」とも共通する話題が出てくる。それは、若い世代は、オンラインで将棋やポーカーなどの腕を磨いているので、上の世代より経験の場数を…

大格差

ロボットや人工知能など情報技術の発達で、雇用はどう変わるのか、米国の経済学者が予測する。こうした予測は定性的なものになりがちで、本書もそうなのだが、単純労働者の未来が暗いというだけでなく、大学教師にも耳の痛い話が多かった。「大学教師の役割…

不謹慎

坪内祐三氏と福田和也氏が「SPA」で行っている対談の単行本化(5冊目)。まあいい気なもの、というのが正直な感想だが、巻末の書籍紹介は有益だった。

データの見えざる手

著者は日立のエンジニア(兼東工大教授)だが、本書は結構学問論争を巻き起こすのではないかと思う。 まず第1章で、ウェアラブルセンサを用いて行動を計測すると「U分布」に近く、人間の行動はこの分布に拘束されているので、自由に行動を選べているのでは…

論文ゼミナール

東大で長らく美学を教えた佐々木健一氏が、学術論文の書き方を平易に教える。こちらは純然たる文系用。特に「設計図」の作り方の部分は有用。逆に、文章法の部分は当たり前のようなことしか書いていない。

高校生からのバイオ科学の最前線

タイトルに「高校生」と入っているが、もちろん大学生や社会人が読んでもかまわないほど、内容も充実している。理系の研究者にならなくてよかったと、正直思う。

ロボットの悲しみ

これも人口減少問題と絡んでくるのだが、介護などの現場に導入されるロボットには、「弱さ」が必要なのではないかというのが本書の要諦。弱さがあるから、人間とのコミュニケーションが生まれる。ロボットの「む〜」はかわいい。

地方消滅

雑誌『中央公論』に掲載されて話題を呼んだ論文の新書化。特に若い女性の人口の推移を市区町村ごとに予測して、消滅の危険がある自治体を公表した点が新しい。とはいえ私は、人口が減っても幸せに暮らせればいいではないか、という立場である。

大人のための実相寺劇場

http://kyoto-minamikaikan.jp/archives/16750実相寺監督といえば、ウルトラシリーズや、乱歩原作(但し中身は大きくアレンジしている)「D坂の殺人事件」などが有名だが、晩年はエロスにのめりこみ、加賀恵子を起用して「アリエッタ」などの作品を撮った。…

土日は京都大学で社会情報学会。姫路から京都は、同じ関西と言ってもけっこう遠い。京都に泊まろうと思ったが、安宿はすでに満杯で、めちゃ高いホテルしか空いていない。京都みなみ会館で、実相寺昭雄のオールナイトがあるというので、見にいった。

表象08

表象文化論学会の学会誌(年1回発行)だが、一般にも売られている。映画や視覚芸術を論じたものが多い。「ポスト・メディウム」論が特集されている。

天河への招待

地理的な書物かと思ったが、中身は歴史的な記述が中心だった。とはいえ、天川に焦点を当てた本は数少なく、その点で貴重。

肖像文化考

タイトル通り、肖像文化を論じたもの。第一章で紹介されている、「御真影」をめぐる様々な悲劇は、日本社会の影の側面と言ってよかろう。天皇自身のせいではないが、御真影を救い出すために火事の中に飛び込む教師などがいたのである。たかが肖像画ではない…

2100年、人口3分の1の日本

著者が言うように確かに現在の趨勢が続けば、日本の人口はどんどん減っていく。しかし大きく見れば、明治や大正、そして戦後ベビーブームの際に増えすぎたとも言える。確かに年金などは深刻な問題ではあるが、資源の枯渇のことを考えたら、特に先進国の人口…

東大のディープな日本史 3

3巻目が出るということは結構売れているのですね。

実践的プライバシーリスク評価技法

日本でも行われるようになった「プライバシー影響評価」(あるいは「個人情報影響評価」)の実務を解説。多数の演習問題と解答も付されている。

百年前の日本語

明治期の日本語表記を、例えば漱石の生原稿などを素材に論じる。旧字体とも新字体ともつかない字を書いていたり、また、同じ作品の中で別の字体を使うなど、表記が揺らいでいて面白い。また、商量で「そうだん」と読むといった音読みの熟字訓や、現在では使…

1億人のための統計解析

エクセルを使い、例えば営業成績を伸ばしたいサラリーマンなどが、どのように数字を分析すれうば良いのかを分かりやすく解説。例えば時系列データの分析で、一年前までの各月のデータをすべて説明変数の盛り込み、p値の高いものを落としていくといった、ある…

NHKと政治支配

ジャーナリズム論、とりわけ客観報道について中心的に論じられている。籾井会長によって自民党・安倍首相によるメディア支配が強化されたという著者の意見は首肯できるものだが、光市母子殺害事件の被害者を批判しているところはいただけない。

アラブ革命はなぜ起きたか

フランスの人口学、家族人類学者のエマニュエル・トッドが、インタビューに答える形で自らの学問を語る。タイトルのアラブ革命だけにとどまらず、さまざまな話題が盛り込まれている。アラブで従姉妹との結婚が多いというのは知らなかった。この「内婚率」が…

[book:視覚文化「超」講義

ハイカルチャーとサブカルチャーを区別せず、バック・トゥ・ザ・フューチャーなどの映画や、コンピュータゲーム、アニメーション、初音ミクなどを縦横に論じる、痛快な評論。

白雪姫には死んでもらう

ドイツのミステリを読むのは初めてだが、なかなか面白かった。作者のネレ・ノイハウスは女性で、本書はオリヴァー警部とピア警部が活躍するシリーズの4作目。アルテンハイン村を舞台に、ある種「横溝」的な世界が展開する。主人公は、トピアス・ザルトリウ…

寛容な社会を支える情報通信技術

東京大学に提出された博士論文が基。ICTが寛容な社会をもたらすことができるのか、さまざまな調査を行って明らかにしようとする野心的なものだが、難を言うと、ごく限られた範囲の調査から全体像を解き明かすのは無理があるのかもしれない。

司法殺人

元裁判官が自分の経験を踏まえながら、冤罪の可能性のある二つの事件と、逆に無罪判決が出たものの後に元被告(小野悦男)が別の殺人事件を起こして真犯人だった疑いが濃厚な事件を解説、裁判官の職務の難しさを説く。冤罪の可能性があるとされるのは、「鶴…

警備業の社会学

東洋大学に提出された大部の修士論文を加筆修正したもの。それまであまり学術的に扱われてこなかった「警備業」に焦点を当てた先駆的な著作。前半では警備業自体について概説し、後半は犯罪予防や社会不安を社会学的に取り扱う。

女相続人

主人公は、裕福な医者の一人娘。刺繍が趣味で地味な彼女はオールドミスになりかけていて、心配した叔母が、パーティーであるイケメン男性とくっつけようとする。彼女もその気になるが、父親の医者は、この男に定職がないことを問題にし、財産目当てだから娘…

shame

性依存症の主人公のアパートに、妹が転がりこんできたところから、確立された生活の歯車が狂っていく。妹を演じているのは、上記driveでヒロインを演じているキャリー・マリガンなのだが、演技の質は同じ女性と思えないくらい違っている。driveは抑制的な演…

drive

主人公は、表の顔は自動車修理工兼カースタントマンだが、裏では強盗の運転手もしている。その彼が、隣人の子持ち女性に惚れた。そして、刑務所で服役していた、彼女の夫が帰ってきて、トラブルを巻き起こす・・・ 恋愛が軸と思いきや、後の方になるにしたが…