2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

メモワール 写真家 古屋誠一との二〇年

実は私は、古屋誠一氏の写真集自体は読んでいないのだが、確か東京都現代美術館で行われていた展示は見たことがある。それも、もう詳細は覚えていないのだけれど、オーストリア人の奥さんの写真が中心で、展示を見るうちに、彼女が自殺したことが分かるとい…

気仙川

畠山直哉氏の写真集。畠山氏が、東日本大震災の被災地である陸前高田の出身であったとは、私は知らなかった。本書の前半には、地震直後に母と姉の安否確認のために、畠山氏が日本海側経由で陸前高田に入るまでの手記と、地震前に撮影された、陸前高田周辺の…

生き心地の良い町

1973年から2002年までの市町村別の自殺率のデータによると、徳島県海部町は全国8位だが、ベスト10に入っている他の自治体はすべて離島なので、離島以外とすれば、海部町がもっとも自殺率が低いそうだ(22ページ)。その秘密を調査によって探っ…

協力がつくる社会

ハーバード大学教授で、ネット社会にも詳しいヨハイ・ベンクラー氏による一般書。ネット社会を含め、様々な協力関係が主題。特に、金銭的なインセンティブと、自発的協力との矛盾関係は読みどころ。読みやすいのは良いのだが、注がないのは何とも居心地が悪…

ゲーム理論アプリケーションブック

11章構成で、各章で特許、公共財、道徳哲学などの分野に、ゲーム理論を応用しているのだが、章によってはひどく分かりにくい。

やりなおし高校世界史

東大、京大、都立大、一橋大などの世界史論述問題から8問を選び、詳しく解説する。特に近現代の、ナショナリズムの勃興や功罪などを扱った問題が多い。「構想メモ」の作り方など、実際に受験生にも役立つと思う。著者は都立大大学院出身の都立駒場高校教諭…

アジア映画で<世界>を見る

「アジア映画の森」の類書で、第一部「映画/アジア」、第二部「3.11以後の映画の視座」、第三部「アジア/世界」の三部構成。四方田犬彦、野崎歓、中沢けいなどが寄稿しているほか、対談や座談会などが多く収められている。

ケータイの2000年代

松田美佐氏を中心とする研究グループによる、2001年と2011年に行われたモバイルに関する調査をまとめた書。第1部「メディア利用の深化」編と、第2部「つながりの変容」編の二部構成で、興味深い論文がいくつも収められている。中でも、岩田考氏の…

地域研究Vol.13 No.2 総特集「混成アジア映画の海」

京都大学地域研究統合情報センターが出している逐次刊行物だが、中身はほぼ特集の、アジア映画関連で占められている。多数の地域研究者が、自らのフィールドである広義のアジア地域各国(旧ソ連や中東を含めて)の映画について解説する。年鑑一千本以上の映…

統合の終焉

日本人政治学者によるEU論。第一部ではEUの歴史的形成として、ジャン・モネ、ジャック・ドロール、マーガレット・サッチャーという3人の政治家のEUとの関わりが語られる。ドロールはEUの委員長として著名だろうが、ジャック・モネという人は私は知…

社会学ワンダーランド

東大の社会学の先生方が書いた社会学の入門書。佐藤俊樹氏の「さくら」論、佐藤健二氏の「くだん」論、内田隆三氏の「アクロイド殺し」論、園田茂人氏の中国社会論など、得意分野を持ち寄って講義している。あの研究費不正使用の似田貝香門氏もなぜか参加。

「テレビリアリティ」の時代

この著者は知らなかったが、サラリーマンをしながら、文芸批評やテレビ批評をしているそうだ。本書は基本的に、編年体でかかれた日本のテレビ批評。有馬氏が書くような、新たな事実の発掘はないが、多数の文献を参照し、リアリティという観点からテレビ史の…

フードデザート問題

フードにデザートというと、食後の菓子を思い浮かべてしまうが、このデザートは「砂漠」の意味。生鮮食品を買うのに不自由する地域のことを指す。本書は、こうした「フードデザート(食の砂漠)」が、どのくらい広がっているのかを地図上で示す。第4章以降…

フライトプラン

母親は幼い娘と一緒に飛行機に乗ったはずが、娘が行方不明になるという、ジョディ・フォスター主演のサスペンス。悪の卑小さが目立った。

O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!

「O2O」とは、「オンライン・トゥ・オフライン」の略で、ネットを使って現実世界に影響を与え、顧客を増やすことを指す造語。そうしたマーケティングの事例が紹介されている。業者向けの本だが、今後事業者がどのような手を使ってくるかを知る意味では、…

格付けしあう女たち

「婚活」をいう言葉を(山田昌弘氏とともに)広めた白河桃子氏の著作。タイトル通り、外見や恋愛、夫の地位などを通じて女性同士がいかに格付けをしあうのか(女子カースト)の実態を描いたものだが、はっきり言って読むうちに暗澹たる気持ちになる。著者は…

ナショナリズムの力

九州大学に提出された博士論文。ナショナリズムを復権させ、「棲み分け」型の多文化世界を構想する。

本当はこんなに面白い「おくのほそ道」

芭蕉の「奥の細道」の道行きを、源義経の怨霊を鎮めるための鎮魂の旅であり、また、西行を意識して僧形をし笠を前に持って旅したのだという。ロール・プレイング・ゲームだとまで言うのは言い過ぎの感があるが、今の私が忘れてしまった能に関する知識がない…

遺伝子がわかれば人生が変わる。

最近はすっかり身近な存在となった「遺伝子検査」だが、その検査とどのように向き合えばよいのか、日本でまた138名しかいない「遺伝子カウンセラー」の一人である著者が解説する。

社会学の方法的立場

社会学は客観的であり得るのか、いかなる方法を取るべきかなど、社会学の根本に関わる問いを、制度論で著名な盛山教授が問う論文集。山口節郎氏や、廣末渉氏など、様々な学者に「喧嘩を売って」いるのもまた読みどころ。

愛国・革命・民主

東大駒場の教授である三谷博氏が、「世田谷市民大学」で行った6回の連続講義をまとめたもので、文体も平易で分かりやすい。明治維新は、フランス革命などと違い、体制転換としては驚くほど犠牲者の数が少なくて済んだのだが、それはなぜなのか、日本史を世…

奈良のコンステレーションブランディング

比較的新しい学会である、地域デザイン学会の編著。奈良ブランドが京都ブランドに比べて弱い理由を、それが京都ブランドより曖昧なためであるとし、新たに、「三輪・葛城」「飛鳥・斑鳩」「平城京・藤原京」の三つを「一等星」として中心に置き、また10の…

こうしてテレビは始まった

有馬哲夫氏が、米国の各公文書館などに残された膨大な一次資料を駆使して、テレビ草創期の歴史を探るシリーズ。GHQの動きや、ド・フォレスト、そして正力などの行動を探り、これまで定説とされてきた記述をより正しいものに書き換えてゆく。本文は約20…

インヴィジブル・ウェポン

著者である歴史家のヘッドリクには既に何冊も邦訳があり、これまでの本と重なっている部分もあるが、本書が決定版と言えるのではないか。主題は19世紀から20世紀にかけての通信の歴史で、特に有線電信と無線電信の絡まり合いや、イギリスによる通信支配…

信頼と裏切りの社会

社会における「信頼」と「裏切り」について、幅広く文献・研究を渉猟して紹介してくれる。著者のブルース・シュナイアーはもとは、情報セキュリティの専門家だそうだが、こうした領域にまで手を伸ばしてきた。

反コミュニケーション

奥村隆・立教大学教授の著作。冒頭から、「私はコミュニケーションが嫌いだ」で始まり読者を驚かせる。中身は、大物社会学者(ルソー、ジンメル、ハーバーマス、レイン、ベイトソン、ジラール、ゴフマン、鶴見俊輔など)への架空訪問記が中心。終章に出てく…

財務省の逆襲

高橋洋一氏の本を読むと、暗澹たる気持ちになる。氏の本の中では財務省は、財政再建のことなど何一つ考えておらず、増税して税収を増やした分をばらまくことで自らの権益を増やすことに汲々とする組織として描かれているからだ。下っ端は忙しいが、幹部はヒ…

絵と言葉の一研究

「大人たばこ養成講座」などで知られるデザイナーの寄藤文平氏が、その発想法を公開。中でも、赤瀬川原平著の『千利休 無言の前衛』の装丁アイディアを、31種列挙しているのは圧巻である。

福島第一原発収束作業日記

実際に福島第一原発で働き、地震・津波・爆発後の原発の収束作業に当たってきた匿名の著者が、ツイッターで発信した事実を再構成してまとめた著書。まさに当事者にしか書けない記述が多く含まれていて、読んでいるうちについつい著者に感情移入してしまう。…

最高裁の暗闘

最高裁判所の中では、どのような人達が、どのような意見を持ち、どんな判決を書いてきたのか、特に、判決に付される反対意見である「少数意見」や、「補足意見」を誰が書いてきたのかを中心に描く。多数の裁判例が事例として挙がっているが、いずれも興味深…