2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

311を撮る

山形ドキュメンタリー映画祭でも上映され、賛否両論であったという映画『311』を製作した4人による共著。この映画は、震災後の3月26日から31日にかけて、この4人で東北の被災地を回り、その様子や被災者、遺族へのインタビューなどをまとめたもの…

映画表現の教科書

空間、場面構成、編集、時間軸、音響、音楽、場面転換、カメラ、照明など技法ごとに、計100の映画表現テクニックを教示してくれるまさに教科書。一つのテクニックを見開き2頁で構成し、代表的な映画作品からのカットを数枚伏してある。有名な作品が多く…

アラブの春は終わらない

著者はモロッコ出身のフランスの作家。日本人は私も含めてイスラム圏への関心が低く、「アラブの春」でやっとその圧政に気がついた人が大半だろう。本署は小さな本だが、エジプトやチュニジア、アルジェリア、イエメン、モロッコ、リビアの各国ごとに、独裁…

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀

副題から、スパコン「京」の話が中心なのかと期待して読んだが、「京」については最初の一章だけで、8章それぞれ違うプロジェクトについて書かれている。ビジネス本という性格上仕方ないのかもしれないけれど、もう少し技術的側面について詳しく書いてくれ…

自分たちの力でできる「まちおこし」

著者の木村俊昭氏には、小樽市役所で一度お会いしたことがある(2005年6月13日付けの当ブログを参照)。もちろん地域情報化政策に関する取材でのことだが、大変な切れ者という印象を持った。現在は内閣府で、地域活性化の伝道師として活躍されている…

G2 vol.11

講談社のノンフィクション誌「G2」の11号で、力作揃いで素晴らしい。冒頭は、小沢一郎の政治生命を揺るがした、奥さんからの「愛想尽かし」手紙について、精神的に弱っていた奥さんを、小沢を嫌っている次男が焚きつけて書かせたものと推定している。小…

映像に見る地方の時代

テレビマンユニオンの創設者の一人であり、テレビ論の重要な論客であった村木良彦氏の著作。雑誌『エイジング』の連載記事をまとめたもので、特に「地方の時代」映画祭に関係する記事が多く収められている。この映画祭、一度行かなくてはと思いつつ、現在ま…

写真経験の社会史:写真史料研究の出発

大阪市立大学で行われた同名のシンポジウムの単行本化。特に、家族アルバムの写真を素材とした、九州大学の歴史学者である有馬学氏の論文に得るものが多かった。氏は、日向地方に残された「家族写真」を整理・分析した「日向写真帖」を、市役所との共同作業…

ウソを見破る統計学

統計学者の父と大学生の娘(そしてたまに母)の対話形式で平易に書かれた統計学の入門書。とはいえたまに、「コルモゴロフ・スミルノフの検定」といった難度の高い用語が顔を出すのだが、「体重」「所得」「株価」「世界記録」といった親しみのある数値から…

B級ノワール論

タイトル通り、1940年代から50年代にかけて米国で製作された「B級ノワール映画」を解説するものだが、二段組で400ページ超という大部のものである(本文約300ページだが、その後に約100ページ、作品解説と事項解説とが付されている)。取り上げら…

大ヒットの方程式

ポニーキャニオンで数々のヒットを放った吉田就彦氏と、物理学者の石井晃・鳥取大学教授が組んで、ヒットの「方程式」を探るというもの。微分方程式によるモデルを作る。特に、映画について、ブログでの書き込みと、観客動員数とを、時系列でグラフ化しシミ…

「中国模式」の衝撃

著者は講談社の北京支局に勤務しているが、この本の版元は平凡社。中国での生活、政治、経済について体験的に語る。私も中国とは浅からぬ因縁があるが、中国でビジネスをするのは大変なことなのだなとしみじみ思う。中国人たちは、とにかく、「会社より自分…

AKB白熱論争

AKBにはまっている論客4人が、その「ベタ」な熱中ぶりを語った書。まさに、宗教にはまった人がその信仰を語った本なのだが、AKBを「サリンを撒かないオウム」とする表現には一理ある。柄谷のNAMなど、資本主義を超えようとする運動体が次々と挫折する中、ま…

MIT メディアラボ

MITのメディアラボの本と言えば、スチュアート・ブランドの本が有名だが、もうすっかり時間が経って中身は古くなってしまった。それに取って代わるのが本書だろう。原題のタイトルは「魔法使いとその弟子」。著者は、伊藤穣一の前任者としてラボ長をしていた…

30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと

タイトルが示すように、著者は東大経済を卒業後経済産業省に入省、8年の在職を経て最近退職した。ブログで自らの給料を赤裸々に公表して話題になった人物。 書かれてあることは、ごく全うで、悪く言うとあまり新味はないが、一ヶ月の労働時間が400時間と…

長者番付の研究

長者番付そのものの研究というよりは、日本における高額所得者の研究。高額所得者がどのような人々なのか、創業者、(創業者の)同族、医者、その他などに分けて分析している。何といっても、創業者が多く、その多くが大した学歴を持っていないというところ…

天国の日々

1916年の米国農村を舞台にした、1978年の作品。監督のネストール・アルメンドロスは、ロメールやトリュフォーの作品の撮影監督を務めた人で、非常に映像は美しいのだが、話の筋は随分と変な話だ。リチャード・ギア演じる若い労働者が主人公。彼は、妹と、恋…

四次元が見えるようになる本

数学の本なのだけれど、数式は全く出てこない。四次元空間について説明した書。ここでいう四次元とは、あくまで空間上のもので、時間軸tを四次元目としたものとは別物なので注意が必要。三次元空間における正多面体は五種類だが、四次元空間でそれに相当する…

誤解だらけの個人情報保護法

個人情報保護法を、むしろ批判的な観点から解説した書。特に、過剰反応や、個人情報保護に名を借りた役所による「情報隠し」について、舌鋒鋭く追及している。

「ネットの自由」vs.著作権

知的財産権に詳しい福井健策弁護士が、TPPにおける米国知的財産条項を検討する書。廉価な新書で読めるのはありがたい。ヨーロッパを席捲する「海賊党」(ネットの自由を強く主張する政党で、ドイツでは既に第3党)についても記述がある。

メディアとICTの知的財産権

共立出版の「未来へつなぐデジタルシリーズ」の一冊。中身はタイトルからも自明だが、理科系の学生には法律の、法科系の学生には技術の知識を与えるというのが主目的らしく、内容は盛りだくさんで、普通の学生にはキツそうだ。86ページに、「法の謙仰性(け…

機械より人間らしくなれるか?

天才アラン・チューリングが考案した「チューリング・テスト」を現実化したものがローブナー・コンテスト。審判がコンピュータ端末を使って、姿の見えない相手と5分間チャットを行うのだが、その「相手」は一方はコンピュータ・プログラムであり、他方は人…

週刊誌の歌

週刊誌の歌 1.いつもの本屋で 週刊誌めくる なぜだか心が なごむ瞬間 恋した 別れた ハダカになった 他人の ことだから 安心できる ぼくらは いつでも 人を肴に 自分を 隠して 生きて 生きている2.文春 新潮 ポスト 現代 どぎつい見出しが 目次を飾る 「…

メディア芸術アーカイブス

文化庁メディア芸術祭の15年間の簡便な記録。毎年行ったはずだが、もちろん忘れていることの方が多いので懐かしく読んだ。備忘録のため、いくつか印象深い作品にリンクを張っておこう。 メディアアート部門 グラインダーマン 岩井俊雄 クワクボリョウタ 高…

大月町、土佐清水市、四万十市、黒潮町、四万十町

大月町、土佐清水市で地域情報化政策の取材。大月町は光ファイバー網の大規模投資を、土佐清水市は大規模投資を避け関西ブロードバンドを使ったDSLでブロードバンド化を行なった。足摺岬に寄り、昼食は土佐清水でカツオ丼。さらに、四万十市(旧中村市)…

八幡浜市、伊方町、西予市、鬼北町、愛南市

八幡浜市を起点に、まずは伊方町へ。原発や風力発電の町として知られるが、さほど財政的には潤沢でもない様子。八幡浜と伊方は、旧通産省の「ニューメディア・コミュニティ構想」で整備された「八西地域総合情報センター」が運用するCATVが、情報化政策の軸…

松本俊夫展 白昼夢

上記したように、久万美術館での企画展。正しくは「昼」字は左右反転している。松本俊夫のこれまでの作品が多数、場内に置かれた大小7つのスクリーンで上映され、また、台本や原稿なども展示されている。図版も素晴らしい。松本俊夫が、日本の実験映像界に…

砥部町・久万高原町・内子町

朝早くに出発し、丸亀でレンタカーを借り、松山インターまでは高速で移動。 砥部町は焼き物「砥部焼」で知られる、松山市郊外の町である。2005年に広田村と合併し、新たな砥部町となった。人口は約2万人だが、松山市のベッドタウンとして増加傾向にある。 …

家族進化論

京都大学理学部長の山際寿一教授が、霊長類学のこれまでの成果をまとめた著作。なかなか簡単な仮説では霊長類の行動を説明しきれないことがわかる。特に興味深く読んだのは、サルの「子殺し」行動の解説を含む第4章。オスによる子殺しは、哺乳類の中でも特…

フランドル

2006年のカンヌ映画祭グランプリ作品。美しい映像、大胆な省略を含むストーリー展開で、確かに名作の風格を備えている。舞台は主として、タイトルになっているフランス北部のフランドル地方。主人公は農場で働くデメステルと、幼馴染みの少女バルブと言って…