2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

社会的選択と個人的評価

アローの定理を扱った古典。社会科学の本なのだが、中身は数学、もしくは数理論理学に近い。投票にはパラドックスがつきものであるということを、論理的に明らかにしてゆく。ドジソン(ルイス・キャロル)や、日本人である村上泰亮、稲田献一、宇沢弘文など…

アニメーションの本

もともと1978年に出された本で、2010年に改訂されてはいるのだけれど、レイアウト等時代を感じさせる。とはいえ、内容は面白いし、今読んでも有益な個所に満ちている。アニメーションを作り始めようをかんがえている人にとっては、必読書の一つではないだろ…

統計学と統計利用

統計学に関する、各章がある程度独立した論文集。 第1章と第2章までは、統計学、統計制度が主題。第3章から第6章までは経済統計、第7章と第8章は人口統計がテーマ。私が最も興味深く読んだのは第2章の「統計過程と統計制度」だが、日本の製造業の都市…

カンバセーション 盗聴

盗聴をテーマにフランシス・コッポラが1974年に製作した作品。盗聴する側を主人公に、サスペンスを盛り上げようとしているのだろうが、まず話の導入がまどろっこしく、また、描写もどうにも古臭くて、時代の変化に耐えうる作品ではなかった。最後、狂気に陥…

数学的経験

こちらは上記と違い、内容豊富な分厚い本。レベルとしては「数論への招待」よりもやや易しい。単なる数学書ではなく、数学論や数学史的な記述も含んでおり、飽きさせない。著者は米国の数学者二人。数学的経験作者: P.J.デービス,R.ヘルシュ,柴垣和三雄,田中…

数論への招待

第一章「七五三の心と類体論の心」では、三辺の長さがそれぞれ「7」「5」「3」である三角形では「3」と「5」の間の角度が120度になる、という話題から始めて、ではどのような三つ組なら120度になるのか、双子素数、ガウス素数、万華鏡素数、ゼー…

contacts

これはなかなか興味深いDVD。現代活躍中の写真家11人へのインタビュー音声を、その作品をバックに流すもの。何を考えて写真作品を作っているのか、自身によって語られる(但し、必ずしも本当のことを言っているとは限らないけどね)。登場する写真家は…

裸の経済学

著者はエコノミスト誌の記者で、経済学的な考え方を、実例を基にしながら分かりやすく解説する書。経済学を学んだことのない学生さんや社会人には有益であろう。

殴り合う貴族たち

平安朝の貴族というと、優雅な暮らしをしていたという印象があるが、あにはからんや、暴力的な者たちも多かったというお話。藤原実資の『小右記』を基本資料に、特に藤原道隆・道兼・道長3兄弟の子供や孫たちが、その早い出世から傲慢になり、宮中内外で暴…

方言漢字

漢字・国字研究の第一人者である笹原宏之・早大教授の著作。日本全国の、地域独特の漢字(方言漢字)について、エッセイ風に自由に綴る。網羅的なものではない。「函館」の「函」字の中央部分を「了」のように書く書き癖の話など、私も無自覚に行っていた。…

機械との競争

実はこの本はキンドルで原書を読んでいて、翻訳したらいいかもしれないなと考えていたのだが、考えている間に邦訳が出てしまった。要するにコンピュータを代表とする機械によって人間の仕事が奪われていくさまを描いた本。Freeman & Soeteの、”Work for All …

集合知とは何か

情報学の泰斗、西垣通先生の新著。タイトル通り、「集合知」が機能する条件や、いかに生かしていくかが焦点。時間のない人は、第六章だけ読めば、要点が分かるようになっている(と言っても、こうした読み方は、西垣先生が最も嫌うものかもしれないが)。集…

中の人などいない

NHK広報局の公式アカウントでツイッターでの情報発信を行っている担当者が、その経緯を述べた著作。なんと最初は非公式にこっそりやっていたものが、後から追認されたらしい。NHKの硬直的な官僚組織の中で、「中の人」が奮闘している様子がよく分かる。が…

田直し、道直しからの村づくり

長野県栄村と言えば、東日本大震災の翌日の「長野県北部地震」の被災地の中心である。本署は地震に前に書かれたものだが、5期20年にわたってこの栄村の村長を務めた高橋彦芳氏が、そのむらづくりの方針について語ったもの。栄村も、積極的に、合併をせず…

ヒトと機械のあいだ

岩波の「シリーズ ヒトの科学」の第2巻。廣瀬通孝氏による論考の部分と、廣瀬氏と3人の研究者(石井威望、比留川博久、伊福部達の各氏)との対談部分から成っている。歩行ロボットは老人並みの運動能力であり、視覚情報を全く使わずに歩いているという話は…

読める年表、日本史

大判で約1200ページもあるので、5000円という価格も高いとは言えないだろう。古代から現代(2011年)まで、記述に濃淡はあるものの、一気に通読して得られることは多い。欠点としては、政治史、事件史に偏っていて、経済や科学技術、文化が相対的に記述…

さむけ

ロス・マクドナルドの名作。本格かどうか(真相解明のための全ての手がかりがフェアに提示されているかどうか)は議論があるだろうが、最後の真相暴露にはタイトル通り「さむけ」が走る。

たくらむ技術

「ロンドンハーツ」「アメトーーク」のプロデューサーが語るテレビ論であり仕事論。確かに今の笑いは進化していると思う。それが良いことがどうか、私には分からない。

考えの整頓

元・電通CMプロデューサーの佐藤雅彦氏が、『暮しの手帖』に連載した記事の単行本化。つまらない訳ではないけれど、やはり佐藤氏はCMや映像作品の方がいいなあ。あまり期待すると失望する。

駄作の中にだけ俺がいる

現代美術家、会田誠氏を主人公としたドキュメンタリー。約1年間の「密着」から作られたもので、よくできていると思う。ナレーションは妻の岡田裕子。会田氏がいかに一つ一つの作品を大切に扱っているか(そのため、「滝」などはいつまでも完成しない)が分…

メディア学入門

東京工科大学のメディア学部が、授業用に編集した「メディア学大系」の第一巻だが、正直あまり得るところはない。メディア学入門 (メディア学大系1)作者: 飯田仁,近藤邦雄,稲葉竹俊出版社/メーカー: コロナ社発売日: 2013/02/13メディア: 単行本(ソフトカバ…

地域イノベーション成功の本質

富士通総研の榎並利博氏の著作。第一部は地域活性化の意味を明確化し、独自の「地域活性化5段階モデル」を援用しながら、成功事例と失敗事例から成功の条件を探る。成功例とされているのは上勝町、内子町、馬路村、藤沢市、失敗例とされているのは(旧)山…

社会科学のリサーチ・デザイン

定性的な研究をいかに「科学的」に行うか、詳細な議論が展開されるが、これも結局は難しいということを、様々な言い方で述べているという印象。

ビッグデータ時代のマーケティング

個人レベルの購買データをいかにマーケティングに活かすことができるのか?本書は様々な統計的なモデルを紹介してくれるが、かなり難度は高い。講談社は総合出版社だが、こういった専門書もけっこう出しているのだな。ガンベル分布とか知らなかった。

SNSが世界を統一する

魅力的なタイトルの本だが、残念ながら中身はありていに言えば「独自研究」のたぐい。著者はサラリーマンだそうだ。

ニーチェの馬

以下ハライチ風に。 「ニーチェの馬」「ああ、なんか哲学的でいいですね」 「ソクラテスの豚」「太った豚より痩せたソクラテスになれ、ってことですかね」 「サルトルの猿」「なんかダジャレになっちゃったよ」 「ヘーゲルの牛」「よく分からないけど、弁証…

日本全10,000市町村うんちく話

昭和の合併前の旧町村を含め、各市町村の特徴をごく短い言葉で説明する。地方の順番がちょっと独特で分かりにくい。情報化については、岩見沢市について「情報化先進都市」と書いてあるだけなので、ちょっとさみしい。西興部村の項がないのはうっかりミスか。

僕達急行 A列車で行こう

森田芳光監督の遺作。 しかし、普通に見ればこれは駄作かもしれない。松山ケンイチと瑛太が、鉄道オタクの若者を演じる。高度経済成長期に植木等などの主演で作られた、サラリーマンのサクセスストーリーを意識的になぞっているのだろうか?変な演出、変なカ…

顔を科学する

顔認知に関する論文集。「顔認知のメカニズム」「顔認知の発達と障害」「顔認知の脳内基盤」「顔と社会」「顔認知の応用と未来」の5部構成で、17本の論文が収められている。

なめらかな社会とその敵

東大の特任研究員を務める鈴木健氏の著作。随分とありふれた名前だが、本の内容はありふれていない。味方と敵、内部と外部を峻別するような社会から、内部と外部がゆるやかに連接するような社会を提唱する。情報技術の利用でそれが可能になるとする点からす…