2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

子どもの頃の思い出は本物か

記憶が当てにならない、特に小さな頃の「虐待」の記憶は後から容易に植え付けられる、という事実は、既にロフタスの本などで読んでいたので、本書から得られるものは少なかった。本書でもロフタスなどが登場するが、ロフタス自身が、その学説のために、大学…

アラブ大変動を読む

2010年末、チュニジアで起こった反乱を皮切りに、アラブ各国で政府を倒す民衆運動が起き、チュニジアとエジプトでは大統領が追放される事態に到った。リビアでカダフィーが惨殺されたニュース映像は、まだ生々しく記憶に残っている。いわゆる「ジャスミン革…

国鉄の基礎知識

序章で「鉄道黎明期から昭和戦中まで」を扱い、それ以降の章では、国鉄が解体される昭和62年まで、一年ごとに出来事を記述する「編年体」形式。新幹線が完成、準急から急行から特急への改変、寝台特急の減少など、なつかしい列車の名前とともに語られる。…

日本経済の底力

戸堂康之・東大教授の著作。グローバル化、TPP礼讃。「まえがき」で、この本の中身は査読を通っているんだぞー、と誇示するところが、微妙な雰囲気を醸し出している。本書をよんで、TPPがいいのか悪いのか、ますます分からなくなった。

IT社会の経済学

「IT企業の動向」「ソーシャルメディア」「新聞・放送・出版」「日本・教育・日米比較」の4章構成。面白い話題や、鋭い突っ込みもあるが、ブログを元にした著作の悪い面が出ている。他のネット記事等をサカナにして、断片的に引用しながら、上から目線で叩…

現代思想 総特集 宮本常一

青土社の水木さんに送っていただいた。ありがとうございます。私が離島を渡り歩いていたことを、水木さんは覚えておいてくれました。 宮本常一のようになりたい、とも思います。さて本書は、宮本常一について論じた文章と、宮本、岡本太郎、深沢七郎の鼎談(…

彼らが写真を手にした切実さを

日本現代の写真家について、大竹昭子氏が論じたもの。取り上げられている写真家は、森山大道、中平卓馬、荒木経惟、篠山紀信、佐内正史、藤代冥砂、長島由里枝、蜷川実花、大橋仁、ホンマタカシ。このうちの過半数が、例えば学校などで写真技術を学んだ人で…

ニーダム・コレクション

中国科学技術史の第一人者であるジョゼフ・ニーダムの大部の著作『東と西の学者と工匠』から、一部を抜き出して文庫化したもの。第一部で東西(東と言っても、中国、インド、イスラムで異なる点もあるが)の科学技術の比較や伝播が、第二部ではより具体的に…

[地域情報化政策}下呂市、東白川村、白川町、関市

午前中は下呂市役所で地域情報化政策の取材。温泉資料館というのが、湯快リゾートのすぐそばにあったのだが、残念ながら木曜休み。山の上の方にある、「ふるさと歴史記念館」というところに行ってみた。下呂の歴史や(どうも開拓先で松前藩にいじめられたら…

白川村、高山市、飛騨市

平瀬地区を出て、車で白川村の中心部へ向かう。白川村役場で地域情報化政策の取材。高山市への合併を避け、単独行政を選んだのは、やはり世界遺産の観光地という矜持があるのか。取材後、合掌作りの住居を見学。 その後、高速で高山市へ。高山市役所で地域情…

山県市、郡上市

JRで岐阜に行き、レンタカーを借りて、山県市役所へ。地域情報化政策の取材。続いて郡上市役所でも。高速で荘川まで北上し、白川村の平瀬地区にある温泉宿に泊まった。部屋にカメムシが何匹かいるので最初は戸惑ったが、考えてみればこんな山の中で、もし虫…

産経新聞が産経抄で、「38人の沈黙する目撃者」を紹介してくれた。ありがたい。ただ、中身は、私がこのブログで23日に述べたこととあまり変わらないのが気になるが・・・

冷淡な傍観者

中国で2歳の女の子が車に轢かれているのに誰も助けない、という動画が話題になっているそうだ。 この問題は、目新しいことでは全くない。様々な条件下において、人は「冷淡な傍観者」にもなれば、心温かな救助人にもなる。それを実験で明かしたのが、ジョン…

講座 社会言語科学2巻 メディア

情報学環の橋元先生の編著の論文集。通常「社会言語科学」という言葉から連想されるものより、かなり幅広い範囲から論文が選ばれているところが、メリットでもありデメリットでもあると思う。つまり、通常のメディア論の論文集と、ほとんど違いが見えない。

ソーシャルゲームはなぜハマるのか

本書で事例として挙げられているGREEの釣りゲームや、モバゲーの「怪盗ロワイヤル」といった「ソーシャルゲーム」を、私は自分ではやりたいとは全く思わないが、なぜそれほど人気があるのか興味があったので読んでみた。まあ確かに、人の欲望を上手にそ…

世界史の哲学 古代篇

大澤真幸氏の著作は社会学とは言っても、当初から哲学的な色彩が強かったが、本書ではまさに「哲学史」的な領域へと踏み込もうとしている。主役はイエス=キリスト、准主役はソクラテスで、なぜキリストがこれほど長く西洋で信仰の対象となったのかというナ…

Google+ 次世代SNS戦争のゆくえ

Google+の解説書。簡単に言えば「フェイスブック」と「ツイッター」のいいとこ取りをしようとしているとのこと。たまたま本書を読んでいるときにGoogle+の招待メールが来たのだが、まだまだ使いこなせない。

情報セキュリティの思想

まさに私の専門に近い本なので、どうしても点は辛くなる。情報社会論、大衆社会論、市民社会論、2ちゃんねる論などが、広く浅く論じられていて、内容的にも、ほぼ知っていることばかり、目新しいことはほとんどなかった。また、タイトルから連想される内容…

マス・リテラシーの時代

副題にある通り、近代ヨーロッパにおける読み書きの普及を主題としたものだが、残念ながら私にはあまり面白くはなかった。その中で、「国家が制定した暦に人々を従わせた最大の要因は、戦争や偶発的な革命の勃発ではなく、ますます利益を上げていたジャーナ…

鉄道未完成路線を往く

前掲書がいわば、鉄道史の「オモテ」だとすれば、結局完成にいたらなかった路線の歴史をたどった本書は「ウラ」と言えるだろう(もっとも、四国新幹線の話題などは、両者で共通しているが)。成田新幹線、四国新幹線、羽越新幹線といった「未完成新幹線」か…

鉄道ルート形成史

国鉄・JRで長らく鉄道建設や改良工事に従事した著者が、日本における鉄道建設を振り返るもので、第1編「幹線鉄道」、第2編「都市鉄道」の2部構成。第1偏では東海道本線や各地の新幹線が、第2編では京浜・中京・京阪神各都市圏における私鉄の勃興と、…

消費税か貯蓄税か

元日銀マンでエコノミストの白川浩道氏の著作。主張は単純で、消費を冷え込ませ、低所得者に厳しい消費税よりも、資産を持っている人に課税する「貯蓄税」を入れよう、というもの。 この主張には、私は全く賛成する。しかし、現実には難しい。国税庁は国民の…

漢字が日本語をほろぼす

漢字に関する本2冊。前者は笹原宏之・早大教授のエッセイで、日本だけでなく、中国、韓国、ベトナムなどの漢字事情を取材したもの。通貨の表記、「○×」の書き方、地名や人名、電子化による文字の変容など、様々な話題が触れられている。後者は、言語学者で…

漢字の現在

監視スタディーズ

デイヴィッド・ライアンの「Surveillance Studies」の翻訳。原書も読んだが、日本語版も持っていると便利なので買って再読。まあライアンさんの本は多数読んでいるし、中身も重複が多いので私はすぐに読み終わります。 中身に不満はないし(なぜタイトルが「…

メディア論

人文書院から刊行されている「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」の一つで、メディア論関連文献の30冊を、ひとつ7ページで解説している。第一部「メディアの生成」に10冊、第二部「マス・メディアの世紀」に10冊、第三部「メディアの現在進行形」に…

デジタル文化資源の活用

MLA(博物館、図書館、文書館)連携をテーマとした鼎談および文集。さらには大学や産業まで巻き込んだ連携や、活用までを視野に入れている。 冒頭の鼎談は贅沢にも吉見俊哉氏を司会とし、長尾真、高山正也、青柳正規の3氏が語る。前半の論文はMLA連携…

鶴の恩返しと浦島太郎

鶴の恩返しと浦島太郎は、「恩返し」の物語という点、そして、約束を違えた男性を女性が罰するという点において、共通性を持っている。助けられた鶴は若者に、決して機を織るところを覗いてくれるなと言う。覗かれた鶴は、若者の元を去っていった。乙姫は、…

官僚制批判の論理と心理

著者の野口氏はウェーバーを中心に政治思想を研究する立教大学准教授。ポリットとブーカールトによる「ウェーバー的エレメント」の影響下に書かれた本と言ってよいだろう。この「ウェーバー的エレメント」とは、それまで官僚制批判の文脈で読まれることの多…

繁栄(上・下)

科学啓蒙家のマット・リドレー(以前には遺伝子に関する本を読んだ)が描く、人類の歴史。さまざまなトピックを取り上げているが、全体を貫いているのは、交易・交換(物の交換、アイディアの交換の両方を含めて)こそが人類を繁栄に導いてきたという視点で…