2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ウォッチメイカー

ジェフリー・ディーヴァーのサスペンスミステリー。この著者の作品は初めて読んだ。「犯人」は実は早くから明らかにされているのだが、その本当の動機が伏せられ、事件の「真相」が二転三転する。捜査側のキャラが立っているところも良い。

こんな写真があったのか

幕末や明治の珍しい写真を紹介する。ヌード写真、五重塔や凌雲閣、首里城などだが、中でも貴重なのは、明治29年の「三陸大津波」直後の被害写真で、これは災害研究などにも有用だろう。

映画術

映画監督・脚本家の塩田明彦氏が、映画美学校で行った講義の書籍化で、映画術の中でも特に演出、俳優の演技に重点が置かれている。成瀬巳喜男の『乱れる』における二人(加山雄三、高峰秀子)の動線の妙、『サイコ』のアンソニー・パーキンスの演技、三隅研…

漢字の成り立ち

古代中国政治研究から漢字研究へ軸足を移した落合淳思氏の著作。これまでの漢字研究を踏まえながら、新しい資料を使い、字源研究の最先端を紹介する画期的な本。漢字好きに強くお勧めする。もちろんそれでも、「白」の起源など、分からないことは多いのだが。

振り込め犯罪結社

「振り込め詐欺」はいったいどんな人達が、どのような組織を作って行っているのか、それを知りたい人には好適。名前はさすがに仮名となっているが、著者は振り込め詐欺の若者に長期間取材し、彼らがどのように行動し、どのような思いでいるのか描き出す。ヤ…

父の戒名をつけてみました

これも戒名本の一つ。この本でも、ひどい坊主が出てくる。タイトル通り、著者は島田裕巳氏の本をもとに、父親の戒名を考えたのだが、戒名料をぼったくろうとしていた住職から、罵倒されるのだ。「どんなビジネスにも、立ち入ったらいけない領分がある」「そ…

日本「再仏教化」宣言

仏教の本はほとんど読むことがないのだが、最近「戒名」の問題に関心があり、タイトルに惹かれて読んでみた。仏教界内部の話が多いのだけれど、たとえばなぜ小乗仏教という「蔑称」が広まったのか、なぜ「仏陀再誕」は間違っているかなど、なかなか面白い論…

「新富裕層」が日本を滅ぼす

解説の森永卓郎の方が前面に出ているが、著者は元大蔵省のノンキャリア官僚であった武田知弘氏。いかに日本の富裕層が所得税、法人税、相続税の恩恵を被ってきたか、そして、消費税がいかに貧困層を苦しめるかを書いていて、その辺はまったく同意する。確か…

TVディレクターの演出術

テレビ東京の「空から日本を見てみよう」(これはいい番組)などを制作したディレクターによる、番組制作論。「「なぜ」を5回掘ってみる」「刺身のツマ(本筋ではないところの映像)に全力を尽くす」「「違和感」「調査感」「発見感」の「三感」を大切にす…

映画音響論

溝口健二監督の映画「東京行進曲」「ふるさと」「浪華悲歌」「残菊物語」「近松物語」「赤線地帯」を取り上げ、その音楽、音響を詳しく論ずる。分厚い本だが、本文は260ページ程度で、残りは大谷巌インタビューと、注釈など。黛敏郎の鼻っ柱の強さなど、…

自由か、さもなくば幸福か?

監視論を中心として、21世紀の社会を構想する、名古屋大の法哲学者・大屋氏の著作。新しい中世か、アーキテクチャによる「幸福」か、それとも、監視の徹底を通じた同一性と信頼の回復か、という三つの選択肢が語られ、著者は最後の選択に肩入れしているよ…

シュレーディンガーの猫、量子コンピュータになる

量子の部分よりも、チューリングやフォン・ノイマン、ファインマンなどのキーパーソンの伝記的な部分の方が分かりやすく、面白い。シュレーディンガーの猫については、並行宇宙の考え方(初めから猫は多数いる)で説明しているのだけれど、これはこれでなか…

物語岩波書店百年史 1 「教養」の誕生

岩波茂雄の生い立ちから始まり、東大選科での学習、神田高等女学校での教師体験、古書店の開業、出版業の開始、夏目漱石との関わりなどが書かれる。特に印象深いのは、古屋芳雄のエピソードだ。岩波は開業初期において、さほど文学書は出していないが、その…

新世紀メディア論(改定版)

社情研の先輩である水越伸教授の、放送大学教材。水越さんの独自色が強く、メルプロジェクトなどに相当な紙幅が割かれている反面、「アジェンダセッティング」とか「沈黙のらせん」などは出てこない。信念に基づいた選択なのだろう。

パズルゲームで楽しむ写像類群入門

「パズルゲームで楽しむ」という枕詞が付いているけど、本書は難しい数学専門書。よほどの覚悟がなければ読み通せない。

線路のない時刻表 完全開通版

国鉄再建法案によって、宙に浮いてしまった建設中の路線を、鉄道作家の宮脇俊三氏がルポしたもので、もとの原稿はかなり古いのだが、その後、めでたいことに本書で取り上げた智頭線(智頭急行)、北越北線(北越鉄道)、三陸縦貫線(三陸鉄道)、樽見線(樽…

魔方陣の世界

魔方陣は子どもにも分かりやすく、数学を趣味とする人にはファンが多いと思うが、それを極めるのはやはり容易ではない。本書は、数少ない魔方陣の専門書で、著者は長らく高校の数学の教諭を務めて退職した人物。3次、4次、5次、6次の魔方陣と解説する。…

日本とは何か

NHKブックスの「現在知」シリーズの第2巻(第1巻は「郊外」)。哲学者の萱野稔人氏が編者で、対談や座談会、寄稿論文などから構成されている。萱野氏は有能な哲学者の一人だと思うが、どうも「私権を制限する」方向に話が向かいがちで、氏が財政赤字や…

協働がひらく村の未来

平成の大合併を経て、全国の村の数が大きく減る中、長野県だけはまだ村が多数残っている。本書はその中で、阿智村の独特な行政に焦点を当てたもの。ここも一度行ってみたいものだ。

数字にだまされない生活統計

「数字の読み方・だまし方」「調査で必要なイ・ロ・ハ」「統計の基礎とexcel処理」の三部構成で、特に一般・学生向けに統計リテラシーをゆったりと解説した第一部が素晴らしい(第三部は」やや舌足らずだったり、駆け足だったりする)。

脳のワーキングメモリを鍛える

学術書なのか、実用書なのか、やや中途半端な印象を受ける。「充分な睡眠を取る」「整理整頓を心がける」「本能のままに身体を動かす」「創造性を発揮する」「いたずら書きをする」「フェイスブックを活用する」「戸外で過ごす」といった習慣を著者は推奨し…

オタク的想像力のリミット

本書は先に英語版Fandom Unbound(Yale Univ Press)が出版されていたものだそうだ。東浩紀、北田暁大、森川嘉一郎の、もはや古典的とも言うべき論文がまとめて読めるのはありがたいのだが、章によっては中身が薄く、これだけ厚くする必要があったかどうかは疑…

東大教授

東大生産技術研究所の沖大幹教授が、東大教授という仕事の魅力を若者に伝えるために、仕事の実際について語った書。著者の出身の「社会基盤学科」は旧「土木学科」だが、進振りでも大変人気の学科だそうだ。 昔は私も、東大教授にあこがれていたが、一流でな…

Mad Science 2

多くの本は続編はパワーダウンしてしまうものだが、本書は続編ながら正編よりパワーアップしていると思う。トマトを潰す磁石、粉糖による爆発など、危険な実験が満載。著者が日本のテレビに出演し、米村でんじろう氏と共演した際の実験も納められている。

小さな異邦人

昨年惜しまれつつ亡くなった推理作家、連城三紀彦氏の最後の短編集。8編を収める。標題作にはあまり感心しなかったのだけれど、六日町で奇妙な行動を取る女性の謎を指名手配犯と絡めて書いた「無人駅」、交換殺人の奇妙な結末を描いた「蘭が枯れるまで」、…

ゲーミフィケーションは何の役に立つのか

仕事や課題解決をゲーム化してモチベーションを高める「ゲーム化」は、今後さらに重要になる技法だと私は思う。「補講」にあるように、本書は理論的にはちょっと物足りないところもあるのだが、豊富な実例が挙げられており、実用的にも充分面白い読み物とな…

週刊東洋経済臨時増刊 鉄道完全解明2014

東洋経済は毎年、臨時増刊で鉄道本を出している。鉄道が経済に重要ということもあるが、大人になったかつての鉄道マニアの財布を狙っているのだろう(笑)。リニア中間駅をめぐる奈良と京都の綱引き、JR九州「ななつ星」の経済効果、「営業係数」の計測方法…

バカな経済論

高橋洋一氏の著作で、中身は氏のこれまでの主張と大差ない。「半径1メートル内の常識」で経済を判断してはいけないというのは、全くその通りだ。だが、円高より円安がいい、物価は上がる方がいい、インフレターゲットで金利をマイナスにできる、財務官僚は…