2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

情動の権力

伊藤守・社会情報学会会長の著作。書下ろしではなく、これまで各所に発表された論文をまとめたもので、いくつかは既読だった。中でも注目すべきは、亀田父子問題を論じた第4章ではなかろうか。私はスポーツにほとんど興味がなく、亀田父子のこともスルーし…

差異の王国

京大の美学者、篠原資明教授が、短歌や俳句、マティスやデュシャン、森村泰昌などを題材に、美学を易しく講義する。

長屋紳士録

タイトルはややミスマッチかもしれない。小津安二郎が戦後まもなく制作した作品で、荒れ果てた東京、首都圏の姿が伺える。親にはぐれた「孤児」が長屋に持ち込まれ、一人暮らしの初老の女性が世話をすることになる。彼女は初め嫌がっていたが、次第に情が移…

メディアが震えた

東日本大震災を報じたラジオ、テレビの動静を振り返る。テレビは特に、政府広報垂れ流しなどと批判されることが多いけれど、本書の2章や7章で論じられているローカルテレビは、必死になって真実を伝えようと奮闘したことがよく分かる。また、海外のテレビ…

AKB商法とはなんだったのか?

AKBの話ももちろん出てくるが、むしろ1970年代以降の日本の歌謡界の流れを、売上ランキングとともに振り返ることの方に主眼があるようだ。AKB商法は決して新しいものではなく、CDの別バージョンを作って複数枚買わせるという手法は様々な歌手が使って…

世界史もわかる日本史 近現代編

明治以降の日本史と世界史とを、ほぼ10年づつに区切るかたちで対比して記述する新書。まあ高校生向けか。特に間違いはないと思うけれど、やや記述に偏りがあるのが難。また、河合敦監修となっているが、実際の執筆者は表に名前が出ていないというのも、ち…

驚きの数学 巡回セールスマン問題

「巡回セールスマン問題」とは、いわゆる「組み合わせ的爆発」を起こす問題の一つ。セールスマンが、なるべく短い距離で、与えられて都市をすべて回り出発点に戻る経路を求める問題だが、都市の数が増えると、検討しなくてはならない経路の数が爆発的に増え…

世界史

マクニールの「世界史」は、東大や京大の生協でとてもよく売れているらしい。読んでも損になることはないだろうと考え、私も手に取ってみた。世界史について批評するほど私は詳しいわけではないけれど、確かによく出来ていると感じた。マクニールの専攻は当…

「監督失格」まで:映画監督・平野勝之の軌跡

この本の「主人公」である平野勝之氏を簡単に紹介すると、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で3度連続入賞という経歴を持ちながらも、アダルトビデオ業界に入ってV&Rプランニングなどから問題作を多数出し、その傍ら「由美香」「流れ者図鑑」といった…

よくわかる都市社会学

ミネルヴァ書房から出ている「やわらかアカデミズム わかるシリーズ」の一冊。都市社会学については、全体をまとめた本は(おそらく)あまりないと思うので、この選択はありがたい。「都市の歴史と現在」ではさまざまな都市の具体例を論じ、また「都市社会学…

奇想の陳列部屋

16世紀、貴族たちの間で、「驚異の部屋」(ヴンダーカンマー)と呼ばれる、蒐集品を展示する部屋を作ることが流行し、のちにその一部は博物館の収蔵品へと受け継がれて行く。本書はその「驚異の部屋」のありさまを、美しい図版で紹介するもの。予想してい…

人は草である

原章二さんの本は好きで、以前いろいろ読んだが、本書は、十数年前に発売された『類似の哲学』の新装版だった・・・申し訳なさそうに、一編だけ新作論文が入っているが、それでもひどい・・・『類似の哲学』を読んでいない人には薦められます。

大阪府 謎解き散歩

こんなシリーズが、各都道府県ごとに出ているなんて知らなかった。大阪は橋爪紳也氏の監修。心斎橋って、「岡田心斎」って人が作ったのね。ほか、「いとさん」「こいさん」(谷崎潤一郎の小説などによく出てくる)とは何か、「日本一低い山」の話など、様々…

震災と過疎を越えて

東日本大震災の影で、やや忘れられがちだった「長野県北部地震」の被害地域・栄村。本書は、栄村在住の松尾眞氏が、震災後の経験を語ったもので、やはり復興への歩みが遅く、手続きにとらわれて素早い補修などをしてくれない政府・行政への怒りが中心となっ…

ゲーム化する世界

日本記号学会の「叢書セミオトポス」の第8巻で、2011年に二松学舎大学で開かれた学会大会での発表などが核となっており、立命館大学の吉田寛さんなどが論文を載せている。実行委員長であった松本健太郎氏が、ケヴィン・ロビンスの本を何度も引用してく…

時間のデザイン

早稲田大学渡辺仁史研究室というところが編集した本。「瞬間」「履歴」「同時性」「速度」など、時間に関する16のキーワードを抽出、解説と専門家によるエッセイが掲載されている。石川初さんの、GPS機能を使った「地上絵」というのが面白い。 参考サイ…

東京凸凹地形案内2

「東京凸凹地形案内」の続編。本書の方が、目白・落合、荻窪・阿佐ヶ谷、神楽坂・飯田橋といった、私にとってはより馴染みのエリアが掲載されている。巻頭には、「崖研究」の第一人者で、之潮の社長である芳賀ひらく氏も登場。また、巻末は、横浜、鎌倉、横…

土日は、東京の東洋大学で開催された第30会情報通信学会に出席。個人発表にも面白いものがあったし、TV60周年を記念したシンポジウムも出席するだけの価値はあった。 土曜日は、日大の福田充君、日本テレビの田村和人さんという、昔の「社情研」仲間と…

2050老人大国の現実

高齢化が現在の傾向のまま進んだら日本の衰退は目に見えているのに、政治家も官僚も一般庶民たちも、そのような現実を直視していない・・・著者たちの主張および、政治批判はまさにその通りだ。「福祉国家」から「ナショナルミニマム国家」への移行も、おそ…

南牧村、小鹿野町、秩父市

南牧(なんもく)村は群馬県の、高齢化率の高い村(同名の村が長野県にもあるが、読み方は違う)。ケーブルテレビを敷設しているが、費用節減のため、廃止したサービスも複数ある。小鹿野町と秩父市も行ってみたが、大した話は聞くことができなかった。小鹿…

十津川村天誅殺人事件

西村京太郎のトラベルミステリーの一つで、十津川警部がその名前の由来である十津川村を訪ねる、というのが主眼。西村京太郎には、初期作品には傑作もある(例えば『殺しの双曲線』)が、本作はミステリーとしてはダメダメ作品。十津川村の歴史を知るのには…

テレビ局の裏側

現役テレビディレクターの書いた本だが、残念ながら、あまり大したことは書かれていない。やはり肝腎なことは書けないのか?

コンピュータが計算機と呼ばれた時代

こちらは日本のコンピュータの歴史を振り返る書籍だが、こちらも(白黒ではあるけれど)写真が多く、歴史物となったコンピュータがどのような姿かたちをしていたのか、明確に理解できる内容となっている。日本で最初にコンピュータを作ったのが、富士通では…

CORE MEMORY

何と、コンピュータの美しさを味わう写真集。全体像から部品まで、「ヴィンテージ・コンピュータ」の各パーツが写真に収められている。これで興奮する趣味の人もいるのかもしれない。

毎日新聞ニュースより 復興庁ツイッター暴言:社民党・福島氏、証人喚問求める 毎日新聞 2013年06月16日 22時39分 復興庁の水野靖久参事官がツイッターで暴言を繰り返していた問題で、社民党の福島瑞穂党首は16日、「証人喚問すべきだと主張していきたい」…

遊ぶシュルレアリスム

大御所・巌谷國士御大による、シュルレアリスムの解説書であり、徳島市近代美術館で行われた展覧会の図録。「シュルレアリスム」は、「シュルレール」(超現実)+「イスム」であり、「超現実」というのも、現実を超えたもの、という意味ではなく、「すごい…

おどろきの中国

橋爪大三郎(奥さんは中国人で、中国と強いパイプを持つ)と、大澤・宮台という3人の社会学者が、なぜいつまでも毛沢東の支配は崩れなかったのか、なぜ中国人は国家が嫌いなのに共産党に服従を続けるのか、など、中国の本質をめぐって語り尽くした鼎談。基…

日本再編計画

これはずいぶんと前(1996年)に書かれた「改革の書」だが、まだ参考になる点はある。というより、政府も財務省も財政改革を怠ってきたことに、愕然とする。

進化するアカデミア

ニコニコ学会βの紹介本。30分もあれば読み終わる。現在の通常の「学会」が、特に査読制度等の点で様々な問題を抱えているのは確かなので、こうした、誰にも参加できる新たな試みには頑張って欲しい。

ロボットと日本

タイトルから、ロボットの表象を研究したものかと思ったが、鉄腕アトムや鉄人28号、ドラえもん等を扱ったロボット論は前半に集中しており、後半は、中上健次、村上龍、村上春樹論となる。ちょっと期待はずれの舌足らずな記述が多いが、これも立教大学の博…