2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

数学は最善世界の夢を見るか

ジャンルとしては「数学史」だろうか。「最小作用の原理」を中心に置き、ライプニッツ、フェルマー、ニュートン、デカルト、ポアンカレなどの考えが語られる。英語版と仏語版でかなり内容が違っていたという面白い本で、本邦訳書は、英語版を訳したものだが…

アップル、グーグル、マイクロソフト

クラウド化、そして携帯情報端末の普及に対して、上記の3社がどういった戦略を取っているのかを解説する。特にマイクロソフトとグーグルは、前者が端末への情報蓄積を前提にしているのに対して、後者はすべての情報をインターネットへと吸い上げたいという…

心理学で何がわかるか

科学としての心理学を解説する。各章ごとに遺伝や意識、記憶、臨床心理などの問題を扱う。知能や性格について、環境や育て方よりも遺伝の影響が大きいということが、最近の心理学では分かってきているようだ。これは育児に悩む親にとっては救いになるか(?…

人間らしさとはなにか

人間が人間であることの根拠を問い直す科学の営みを紹介するもので、コミュニケーション、社会脳、道徳、津感情、芸術、身体などの問題を扱っているが、やや雑然とした印象を受ける。著者は『脳のなかの倫理』のマイケル・ガザニガ(カリフォルニア大学教授…

昨晩のニュース番組で、難病(筋萎縮症)に犯された徳田虎雄氏の姿を見てショックを受けた。毀誉褒貶あるだろうが、とにかくエネルギッシュな政治家だったのが、車椅子で、手足の筋肉が動かず、わずかに眼の動きだけで意思を伝える。徳田氏はお金はあるだろ…

沖縄を深く知る事典

「事典」とあるけれど、いわゆる小項目事典ではなく、エッセイや論説をあつめた大項目事典で、文体も硬軟入り混じっている。第1章は「日本・アメリカとの相剋から見える沖縄」で、基地問題など読み応えがある。第2章は「「女性」から見える沖縄」。第3章…

比較歴史制度分析

NTT出版の叢書「制度を考える」の一冊で、著者グライフはテルアビブ生まれのスタンフォード大学教授。ゲーム理論を使って、ヨーロッパ経済史(の一部)を分析する浩瀚な書物。扱われている主題が、私にとってはあまりなじみのない分野なので(例えばジェ…

放送メディア研究 第7号

NHK放送文化研究所の出している雑誌。特集が「都市、地域、メディアの関係性を再考する」なので眼を通してみた。実際に地域で実務をしている人々の座談会が最も興味深かった。

書店で、今日発売の週刊新潮をちょっとのぞいたら、片山さつきが前夫・舛添要一に受けたDVについて語っている。物を投げつけられた、サバイバルナイフを突きつけられたなど、もし本当であればひどい話で、家庭内でそんなことをする人間に総理になる資格は…

空港の大問題がよくわかる

こちらも航空業界を中心とした本だが、語り口はよりアカデミックである。第一章では、空港の会計をめぐる問題提起がなされ(要は、きちんとした会計作りはまだまだこれからだということ)、第二章では海外の空港について、第三章では海外の航空業界について…

JAL再生の嘘

元時事通信社記者の屋山太郎氏の著作。JALの組織としての腐敗のありさまが、これでもかと語られる。全労という労組が人事を壟断し、例えば日航生協の儲かる部分だけを切り離して「エルファスユニコ」なる別会社を作ったりする。 この本に書かれたことが全て…

進化する地球惑星システム

本書で提唱している「地球惑星システム学」とは、「地球惑星科学におけるあらゆる時間的・空間的スケールの対象をシステム科学的に扱う」新しい学問とのことだが、何もそんな肩肘を張らなくても、明示的にフィードバックの問題を扱っているところが新しいく…

毎日新聞ニュースより <事業仕分け>国鉄清算の剰余金「返納」…3日目 4月27日23時3分配信 毎日新聞 政府の行政刷新会議(議長=鳩山由紀夫首相)による「事業仕分け第2弾」は3日目の27日、11法人の35事業を精査した。「農業・食品産業技術総合研究…

語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ

翻訳は儲からない。私自身何冊かの訳書を出しているが、せいぜい本代の足しになるくらいだ。 しかしこの著者はすごい。まずその大胆かつエネルギッシュな姿勢に感嘆させられる。タイトルの「語学力ゼロ」というのは誇張だが、ほとんど経験がないのに、23歳…

情報戦の時代

加藤哲郎・一橋大学教授の著作。専門書というより一般書という位置づけだろう。大きく、序論、第一部、第二部と分かれている。情報概念などを論じた序論は、割と長いけれど、専門家の私からするとはっきり言って床屋談義のようなものだ。だいたい情報概念に…

友だち不信社会

いじめ問題は私が子どもの頃にもあったが、ネットやケータイの普及は、その問題をさらに悪化させたように感じる。本書は、臨床心理家の著者が、実際にあった事例を基にして、学校や職場でイジメを受けた場合の対策を提言するもの。ネットいじめの首謀者が、…

日本の島

別冊太陽の一冊。吉本隆明や立松和平なども寄稿する、離島に関する紹介およびエッセイ集。大型本で、美しい写真が多数掲載されている。厚岸小島とか舳倉島、筑前大島、小宝島とか、未だ行ったことのない島がいろいろと載っていて興味をそそられる。

危険不可視社会

著者はかつて「失敗学」を提唱した、東大名誉教授の畑村洋太郎氏。本書では、人間と機械との関係が変化してきたことを背景として、新たな危険対処を考える「危険学」を提唱する。マイコン化によって機械がブラックボックス化し、また、制御するという思想が…

競争と公平感

労働経済学者である大竹文雄氏の著作。やや細切れ的であるところは残念だが、一方で市場メカニズムの有効性を強調し、他方では、心理学、社会学などの他の学問領域からの成果を柔軟に取り入れて経済学的な思考を発展させる、内容豊富な新書となっている。中…

今日は帰るだけ。午前中は時間があったので、風月で自転車を借り、島の西端のマハナ展望台や、北にある洞寺(鍾乳洞)、東の長浜ビーチなどを見て回る。 一日一往復しかないフェリーで、那覇に帰る。那覇空港から、神戸空港へ。那覇も2日前と比べて肌寒くな…

粟国村

那覇泊港からフェリーに揺られること2時間。粟国島へ。生憎の天気で雨が降っていた。粟国村役場に行き地域情報化政策の取材。隣接した粟国村公民館の2階の図書室で、郷土資料を漁るが、あまりめぼしいものがない。 宿泊は民宿・風月で。写真はおそらくパパ…

Simulation and its discontents

フロイトの「文明とその不満」をもじったタイトルのシェリー・タークルの著作。学生や若者たちが、シミュレーションに頼って建築などを行うことに対して、それでよいのかと問いかける。実はタークルが自ら書いているのは前半だけで、後半はケーススタディと…

渡嘉敷村

那覇泊港から渡嘉敷島へ。渡嘉敷村役場で地域情報化政策の取材。渡嘉敷村役場は改装中のため、村役場は現在その向かいの公民館に移っていた。 取材後、阿波連に行き、沖縄そばで昼飯。ここも海がきれいだった。 夕方の船で那覇港へ戻る。連日沖縄料理を食べ…

座間味村

午前中は座間味海洋文化館を見学。写真は庭に置いてあった「人間魚雷」です。昼食は「豚々茶舗」でミミガーまんセット。ミミガーを使った肉まんで、ピリ辛の味つけがなされている。 午後に座間味村役場で地域情報化政策の取材。収穫多し。その後、船が出るま…

沖縄戦「集団自決」謎と真実

軍による「集団自決命令」はなかったとする立場からの著作。説得力があり、命令はどうもなかったのではないかと私も思う。実際にあったのは、「米軍につかまるとなぶり殺しにされる」と思い込んだ村の有力者(村長、助役、学校長)などによる一種の無理心中…

今日これからまた、沖縄の離島に取材に行ってきます。しかし、普天間基地の徳之島移設案はまずい。確かに沖縄県外ではあるけれど、沖縄と奄美は文化圏的には共通する部分が多いし、奄美は沖縄に差別された歴史もある。むしろ、さらに弱いところに皺寄せをす…

JAL崩壊

匿名のJAL関係者による著作。匿名ということから、内容を割り引いて考えなくてはならないかもしれないが、ここに書かれているJALの惨状はひどい。公務員以上の腐敗ぶりではないか。異常に高い給与で勝手な振る舞いを続けるパイロットたち、特に性格のゆがん…

スピンドクター

メディア等による情報操作を扱った書物。著者はフライデーや朝日新聞、実話誌編集長などを経て、現在は作家活動を中心にしている。 いろいろと実例が出てくる。一つ挙げると、民主党の永田代議士が失脚するきっかけとなった偽メール問題。私は永田氏に同情的…

ネット帝国主義と日本の敗北

元通産官僚で慶応大学教授の岸博幸氏の著作。グーグルなど、インターネットのプラットフォーム産業において米国の一人勝ち状況を憂い、新聞社やレコード会社などのコンテンツ産業が衰退するとジャーナリズムや文化の衰退を招くのではないかと心配する。構図…

瀬戸内海の発見

本書によれば、瀬戸内といった概念は江戸後期に出現し、広まったのは明治期であるらしい。その後、欧米人たちによる瀬戸内海風景の賞賛を経て、明治の後期には「近代的風景の発見と定着」という第一次変容が、そして昭和の後期には多数の工業地帯が瀬戸内海…