2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

トラオ

徳洲会病院グループの創設者であり、政界でも独特の存在感を示した徳田虎雄氏がALSという難病になったことは、新聞記事か何かで読んだことはあった。ALSは全身の筋肉が動かなくなる、治療法のない病気で、その時は、「かわいそうだな」という感想しか…

知的文章とプレゼンテーション

東大教授や岐阜大学長を勤めた高名な医学者の黒木登志夫氏が、自らの経験から語る文章論ならびにプレゼン論。論文の書き方だけでなく、申請書の書き方や、審査のあり方などにも紙幅が割かれていて参考になるところは多い。ただ、やや抽象的な事柄が多いこと…

死因百科

人間がどんな要因で死ぬのか、その「死因」ごとに中項目で解説した書。著者は米国人で、扱われている統計も米国中心だけれど、「もち」という日本的な項目も立項されている。統計数値は、行き当たりばったり的に収集されたもののようで、一貫性には乏しいけ…

表現の技術

非常に「大きな」タイトルだが、著者は電通のディレクターで、本書で掲げられている「表現」も基本的にはCM映像なり、短編映像である。すきまの多い、速く読める本だけれども、「感情は振り子である」「主人公にプチ不幸を」など、実際に映像を製作する上…

芸術回帰論

写真家・港千尋氏の著作。港氏は多摩美大の教授も務める人だが、本書についてはあくまでエッセイあるいは「詩」と捉えるべき著作だろう。もちろん本書においても、掲載されている写真はすべて港氏自身の撮ったもの。文系・理系の他に「美系」を提唱するなど…

メディア文化と相互イメージ形成

九州大学アジア総合政策センターの主催で、2009年10月20日に行われた同名のシンポジウムの内容をまとめた書籍。シンポジウムをまとめた本の中にはどうしようもなく内容の薄いものやいい加減なものもあるが、本書はその後に書き下ろされた内容ということもあ…

ベニスに死す

言わずとしれた、トーマス・マンの小説を原作としたヴィスコンティの映画。原作とは多少設定を変えている。原作では主人公は老作家だが、この映画では音楽家(40代くらい?)で、老人ではない。また、原作では一人娘は嫁いでいるのだが、映画では早くに亡…

浜辺の女

先日から何本か見ているジャン・ルノワールが、戦時中にハリウッドで撮ったものだが、日本での初公開は1988年になってからだそうだ。失敗作との評価もある。確かに、物語としては破綻を来たしている。悪夢に取り付かれている主人公の沿岸警備隊員スコッ…

リスクの社会心理学

各章およびコラム合わせて22人の著者が分担執筆した著作。後輩の福田充君も第8章を執筆している。各章ともそれなりに面白く読んだ。私は授業で学生に、日本人の死因別の死亡人数を考えて推定してもらうことがあるのだけれど、それはもうLichtensteinが197…

http://vimeo.com/15888296

コンテンツビジネス・デジタルシフト

東大情報学環に提出された修士論文を加筆訂正したものだそうだが、学術書というより、ビジネス書的な色合いが濃いように思われる。2006年をピークに縮小期に入った日本のアニメ産業を、どのように立て直すかという問題意識。私は見ていないのだが、『イヴの…

日本の難題をかたづけよう

シノドス本の一つで、付録も含めて6人の著者が分担執筆している。各章の性格づけはかなり異なっていて、安田洋祐氏が専門のメカニズムデザインを解説した第1章や、菅原琢氏が計量政治学を解説した第2章はかなり理論的(菅原氏の出題した定期試験の問題例…

残念ながら広島国際アニメーションフェスティバルに行けないので、YouTubeで関連動画を見ることにする。

韓国が漢字を復活できない理由

豊田有恒氏と言えば、過激な原発擁護で知られるSF作家なので警戒していたが、本書はなかなか面白かった。韓国の漢字表記がかなり日本語の影響が強いこと、そのためもあり漢字教育についての態度が(日本以上に)揺れ動いており、漢字を知る世代と知らない…

あたまの地図帳

著者は博報堂の若いコピーライターで、地理に関しては全くの素人だから、地理マニアや地図マニアを満足させるような内容ではない。まあ、地理について何も知らない人が読むにはよいかも。

ビッグフェータ時代のライフログ

野村総研を中心に、13人の研究者による共著。ライフログに関する問題の解説書だが、特に野村総研が行なった具体的な調査結果に興味深いものがあった。例えば、パスワードについて、一つも記憶できないとしている人が3,7%もいるが、これは冗談では済ま…

ミッシングリンク

副題は「デジタル大国ニッポン再生」。現職の総務省大臣官房企画課長が、日本の情報通信産業不振の原因を「機器とサービス」「供給者と利用者」「情報通信産業と他産業」「国内市場と海外市場」「官と民」という、五つのミッシングリンク(失われた連携)か…

天井桟敷の人々

マルセル・カルネ監督の名作映画。女芸人のガランスをめぐる恋物語。第一部では、ガランスも、俳優志望の2人バチスト、フレデリックもみな貧しく、無名であった。第二部はその6年後で、バチスト、フレデリックの2人ともパリで俳優として大成しているとこ…

棒・数字・文字

「地下鉄のザジ」などで知られる作家レーモン・クノーのエッセイ集。残念ながら、フランス語に通暁していないとよく分からない記述がある。「書記法さまざま」の章には、絵文字や漢字の話題も出てきて楽しい。

美人の歴史

16世紀以降のヨーロッパにおける美人の表象を、主として絵画に基づいて論ずる美術史の著作。巻頭の口絵が美しい。

マッシュ

これは文句なしに面白かった。マッシュというのは「米軍移動外科病院」の略称で、その「野戦病院」で型破りな医師たちが巻き起こす珍騒動を、リアルな手術シーンを織り交ぜながら描く。朝鮮戦争に舞台が設定されているのだが(撮影はカリフォルニアで朝鮮に…

心と社会を科学する

「社会心理学」を「成功した学問」の一つとして俎上に乗せ、それをよりよくするにはどうしたらよいか、社会心理学者と、科学哲学者が考えるという、やや異色の本。第8章で出口康夫氏が書いている、複数の研究を構造方程式モデル(SEM)を使ってメタレベ…

シャカイ系の想像力

岩波の「若者の気分」の一冊で、いわゆるライトノベル群から、そこにどのように社会が描かれているかを分析し、若者の社会観を探る。ライトノベルって沢山出てるんだなー、というのが第一印象。そこに描かれている事柄も、必ずしもバカにしたものでもない。…

欲望

「アントニオーニが、究極の不条理世界を描く」といった謳い文句に誘われて買って見てみたが、目を引くのはファッションやインテリア、美術的な部分だけで、話そのものは変な(チンケな?)話で、引き込まれない。ひとりよがり、ということか。欲望 [DVD]出…

大阪が首都でありえた日

タイトルは、鳥羽伏見の戦い直後に大久保利通が、「大阪遷都」を本気で主張する建白書を出したことに由来する。「天皇親政」「宮廷改革」そして、大阪の経済中心性というのが、大久保が大阪遷都を主張した理由。しかし、前島密の東京遷都案に大久保は説得さ…

プロファイリング・ビジネス

原著のNo Place to Hideを半分くらい読みすすめた後で、この邦訳があることに気がついた。米国の「個人情報産業」「諜報産業」の実態が中心。アクシオム、チョイスポイントなどが例として挙がっている。警察官がいつでも、一般人のデータを勝手に覗き見る云…

少女連続殺人を扱った、フリッツ・ラングの1939年作品。精神障害者による犯罪をどう裁くべきかという問題は、現代にも通じるものがある。M (エム) CCP-271 [DVD]出版社/メーカー: 株式会社コスミック出版発売日: 2012/04/03メディア: DVD クリック: 1回この…

メディアと知識人

副題にある通り、清水幾太郎の生涯の軌跡を追った著作。著者の竹内洋氏は最近、「学問の下流化」といった質の低い本も書いているからどうかとも思ったが、本書では質は復活していた。清水幾太郎は、一時期大変な売れっ子で、その残した著述の量も膨大だから…