2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

彼女はもういない

西澤保彦氏による、倒叙型ミステリ。倒叙型とは言っても、大切な部分はいくつか伏せてあり、謎ときの妙味もある。「容疑者Xの献身」と、わずかに似ているところもあるのだが、こちらの本は後味の悪さは半端ない。

コーポレーションの進化多様性

青木昌彦氏の著書としては、あくまで相対的にだが、重要度は低いのではなかろうか。ただ、レオニード・ハーウィッツの業績については教えられた。

原子力村の大罪

タイトルから明らかなように、原発批判であり、それを推進した原子力関係者を批判した書。京大助教の小出氏を初めとして、世間では「保守派」と見られる佐藤栄佐久・元福島県知事や評論家・西尾幹二氏などが執筆している。その中ではむしろ、作家の玄侑宗久…

北の無人駅から

「無人駅」とタイトルに入っており、確かに各章ごとに北海道の無人駅の話から始まる(小幌、茅沼、新十津川、北浜、増毛、奥白滝)のだが、テーマは鉄道よりもむしろ、その土地に住む人々の生活まるごと、と言ってよい。小幌は特に秘境駅として有名だが、そ…

松井冬子展

横浜美術館で松井冬子展を鑑賞。屍体を描いても「写生」とはこれいかに。その後は初めて、根津美術館へ。広い庭園もあり、和装の女性も多く、優雅な雰囲気を醸し出している。すぐ隣りが青山墓地であることも、知らなかった。「木津さん」が夜中の墓地で「志…

文化庁メディア芸術祭

休日出勤の代休を取り、東京は六本木で開催中の「文化庁メディア芸術祭」へ。会場の設定や、プログラムの上映時間のわかりにくさにやや不満はあるものの、これだけのメディアアートを基本的に無料で見せてくれることはありがたい。いくつか印象に残った作品…

東京電力 失敗の本質

東京電力関係の本もいくつか読んだので、知っていることも多かったが、それでも有益だった。電力業界の歴史が中心。まあよくも悪くもバランスの取れた著作。関西電力が力を失い、二強時代から東電が一社で電力業界のドンとなってしまったという過程は、さも…

原発危機と東大話法

著者の安富歩・東大教授の本は、以前にも紹介したことがある。学者の書くものはたいてい自己抑制が効いているものだが、安富氏の本はかなり自由奔放に書いているという印象を受ける。 本書は、原発危機を主題としたものだが、その中で、著者が「東大話法」と…

屋根裏プラハ

上記の阿部氏の著作は学術的なものだが、本書は、東京・佃とプラハの二か所に居を構える写真家の田中長徳氏が、主としてプラハについてエッセイとして語ったもの。

複数形のプラハ

著者はプラハやパリへの留学経験を持つ阿部賢一・立教大学准教授。プラハというと私はどうしてもカフカのことを思うのだが、本書ではむしろ、カフカは脇役の位置づけである。ドイツ語文化とチェコ語文化など、複数の文化が交錯する場所としてのプラハを描く…

世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ

50代の旅行作家が、40代のカメラマンを引き連れて、シベリアの最東端から、中国、カザフスタン等を経由してポルトガルへと向かう鉄道旅行に出る。「世界最悪」とは誇張だけれど、途中、同じ路線の列車が前日に鉄道テロに遭い、ロシアからの出国を求めら…

青森の逆襲

青森という地域を紹介する本だが、「逆襲」というほどラディカルなこともなく、ちょっと期待はずれだなー。他に群馬、高知、北海道、茨城と出ているらしい。

音の科学と擬似科学

1.不思議な音の科学、2.音の都市伝説、3.音に関する雑学・蘊蓄、4.音にまつわる怪しい科学、5.科学が誤るとき、の5章構成。音が伝わるメカニズムや、難聴の構造(難聴の人は小さな音が聞こえなくなるだけで、大きな音がうるさく感じるのは他の人…

フリーエージェント社会の到来

ゴア副大統領のスピーチライターを勤め、その後フリーランスになったダニエル・ピンクの著作。フリーな働き方をしている人々の実態を取材した著作だが、正直なところ、「だからどうした?」感が漂う。

ワールド・イン・2012

英エコノミストの「ワールド・イン・2012」の日本語版を、クーリエ・ジャポンが編集したもの。クーリエ・ジャポンは、日本の雑誌の中で、面白さでは三本の指に入ると思う。

地球温暖化問題

科学技術社会論学会の第9号学会誌。特集が「地球温暖化問題」で、8本の論文が載っている。冒頭の解説文にあるように、中身は大きく「IPCC支持派」に偏っている。その理由は、懐疑派の論文が査読を通らなかった、ということらしい。 とはいえ、中身を見てみ…

偶然の科学

原題は「Everything is Obvious Once You Know the Answer」なので、かなり意訳している。人間の常識がいかにあてにならないか、から説き初め、科学的な思考の限界を論ずる。それなりには面白いのだが、私としては既に知っていることも多かった。また、結論…

ドラゴンフライエフェクト

副題に「ソーシャルメディアで世界を変える」とある通り、ソーシャルメディアをいかに活用して、世の中を動かすか、実際の事例を基に解説している。その四つの原則は、「焦点」「注目」「魅了」「行動」。目標を絞り、人の注目を惹く。そのためには、個人的…

対話としてのテレビ文化

2009年に開催された、放送文化基金35周年記念シンポジウム「テレビがつなぐ東アジアの市民」を基にした著作。日本、中国、韓国の市民に対するアンケート結果や、各国のテレビ製作者による経験談などが収められてそれなりに興味深い。

IT時代の震災と核被害

「コンピュータテクノロジー」の編集部が、例えば「インターネット白書」などに掲載された文章を、再編集してまとめたもののようだ。 第一部の「初動」においては、グーグル、ヤフー、アマゾン、ユーストリームといった企業が、震災直後にどのように支援を開…

現代史のリテラシー

一時は東大社情研の院生室で「机を並べた」こともある、佐藤卓己・京大准教授の書評集。特にドイツ史や近現代史の著作が多く取り上げられている。初出における紙幅の制限で、やや短めのものが多いのが残念だが、それでも私が読んでいない本が多く、佐藤さん…

閃け! 棋士に挑むコンピュータ

人工知能には昔から関心を持っていて、いくつか関連書も読んで来たが、この方面の最近の話題はやはりIT将棋だろう。チェスにおいて、ビッグブルーがカスパロフを破って話題になった時、次は将棋と囁かれた。2005年に日本将棋連盟は、「公の場で許可なく…

父・金正日と私

東京新聞記者の五味洋治氏が、金正男とのメールのやりとり、および会見時の会話などを明かした著作。金正日自身が実は3代世襲を望んでいなかったことなど、意外な内容が語られる。また、中国型の改革・開放路線を主張する正男と、父との間で路線対立があっ…

愛のむきだし

園子温監督の映画だが、上映時間はなんと4時間。オープニングだけでも1時間近くある。もう少し短くできるような気もするが、4時間もさほど長くは感じない。 ストーリーの中心は、主人公の純愛物語。幼い頃に母を亡くした主人公は、母の生前「あなたのマリ…

情報社会と議会改革

第1章「情報社会」、第2章「縮減社会のはじまりの必要な情報政策」、第3章「議会の情報化と独自性の確保」、第4章「民主主義とソーシャルネットワーク」、第5章「結論」、という構成。第2章では日本の人口構成の変化を詳述し、人口減少のなかでいかにI…

クラウドの未来

「クラウド」概念は、インターネット用語のうちでもなかなか把握しにくいものだが、本書では明確に整理し、「アマゾンが圧倒的に有利な」現状についても手際よくまとめられている。「ハードウェアから高度な機能を担うアプリケーションが分離し、データ・セ…

「首こり」をとれば90%以上完治する

私も「首こり」や「肩こり」に悩まされている一人なので、図書館で借りて読んでみたが、残念ながら90パーセント以上が、著者の経営する病院のPRだった。

官報複合体

日経新聞に二十年以上勤めたあと独立し、現在はカリフォルニアでフリーランスのジャーナリストをしている著者が、主として日米のジャーナリズムを比較しながら、日本のジャーナリズムの問題点を指摘、批判する著作。 特に共感したのは、第三章「権力側は匿名…

元素生活

「大人たばこ養成講座」のイラストレーターが、元素一つ一つを人型のキャラクターにして描いたもの。髪型と服装で、その元素の属している「族」や、どんな用途に使われるのかが分かるようになっている。

数学を哲学する

タイトルに惹かれて通読したものの、中身はどうにも・・・。難しいと言えば難しいのだが、純粋な数学の難しさとはまた違い、哲学の方から「あいまいさ」が持ちこまれてしまっている感がある。あまりお勧めできない。