2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

イメージの運命

ジャック・ランシエールの本を読むのは初めて。本書についてはうっかり英訳書を買ってしまっていたが、そちらは放棄し邦訳の方を読むことにする。しかし、中身は分かりにくい。訳者の堀氏は、「隙のない論理展開」とあとがきで述べているけれども、本当に隙…

人生という作品

『現代思想』『ユリイカ』などの編集長を務めた批評家の三浦雅士氏の著作。文学や美術、舞踊などについても論じられているが、私の興味の対象は何と言っても「文字論」。白川静の字源説は学界で疎んじられたといわれているが、実際に誰が疎んじていたのか、…

授業修了後、夜行バスにのって松江へ。

ネオ・デジタルネイティブの誕生

情報学環の橋元良明先生と、電通総研とが組んで作った本。年齢よりむしろ世代(コーホート)間で情報行動が明らかに違っており、本書では特に76世代と86世代との差異でまとめている。簡単に言えば、前者はPC中心で後者はケータイ中心。さらにその後の…

朝日新聞ニュースより。備忘録として。 「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策 インターネットでどんなサイトを閲覧したかがすべて記録される。初めて訪れたサイトなのに「あなたにはこんな商品がおすすめ」と宣伝される――。そんなことを可能…

電子書籍の衝撃

ジャーナリスト佐々木利尚氏の著作。出版界より一足先にネット配信が一般化した音楽業界を導きの糸としながら、電子書籍の普及で何が起きそうなのかを推定し、また、日本の出版業界の置かれた状況と、その病巣を抉る。自分でISBNを取得できることは、私…

産経新聞ニュースより 「切り裂きジャック」起訴 売春婦3人殺害容疑の研究者 2010.5.29 11:12 スティーブン・グリフィス被告(ロイター) 【ロンドン=木村正人】英イングランド北部ブラッドフォードで、売春婦3人を殺害したとして、ブラッドフォード大学…

グーグル秘録

グーグル社員等に幅広く取材し、創業者2人の半生や、その他の社員のこと、これまでの経緯について、それなりに詳しく書いてあり、読んで無駄だったとは思わないが、既に周知の事柄も多く、もう少し短く書けないものだろうか。著者オーレッタ(「ニューヨー…

時代のデモクラシー

社会が個人化し、人生の意味を自分で見つけなければならず、個人に対する尊重・敬意(リスペクト)が社会的に不足する中で、民主主義はどのように機能させるべきか・・・。著者はトックヴィルの政治思想の研究者だが、本書は現代の民主主義の抱える問題を非…

人生2割がちょうどいい

高校の同級生(私にとっては高校の9年先輩)であるCMプランナーとコラムニストの対談本。日経ビジネスオンラインの連載していたらしい。岡氏は離婚したり電通を辞めたり、小田嶋氏は20代をぶらぶら過ごしたりアル中になったり、けっこうぐちゃぐちゃな…

テロとインテリジェンス

社情研時代の後輩の福田君の本。やっと読んだ。ごめんね。中身は主として、米国におけるテロ対策。日本ではこの分野の研究は手薄ということもあるが、非常に勉強になり、読み応えがある。私の関心に近い監視社会のところはもう少し充実して欲しかったが、そ…

思想地図Vol.5

北田暁大氏が編集する最後の号だそうで、社会学色がそれなりに色濃く出ている。私が最も面白かったのは、永井均氏の「馬鹿げたことは理にかなっている」。犯罪者の「合理性」を論ずるものだが、やはり永井氏は「哲学学者」ではなく本物の「哲学者」だ。思想…

地方分権とローカルテレビ局

第3章で情報社会論や情報政策について書かれてあるのだが、あまりのいい加減さ、おざなりさに泣きたくなった。これはひどい。(おそらく)三野裕之『デジタルメディア概論』という、何の正典性もない本からの孫引きで全てを済ませているのだろう(文献では…

独創者列伝

マイクロプロセッサの嶋正利、青色発光ダイオードの中村修二など、大きな業績を挙げた技術者への取材でその生きざまを探る。日本人に独創性がないというのは端的に間違いだ。これから仕事をする上で大いに励みになる。

モバイル産業論

経済や法律の視点からモバイル産業を解説するものだが、東大出版会の本としては軽めで、むしろ日経やダイヤモンドのビジネス書的な色合いが濃い。執筆者陣も、大学人ではなく、情報通信総合研究所の研究員が大半を占めている。EF(エッセンシャル・ファシ…

妻がケーキを買ってきてくれました。近所のRed&Greenのケーキは色鮮やかです。

我らの時代の哲学史

やけに壮大な邦題がついているが、原題は「トマス・クーン」で、クーンの研究や、そのパラダイム論の影響をどちらかと言えば批判的に探求した著作。特に、ハーバード大学学長を務め、クーンを引き立てたジェームズ・コナントとの関わりが詳しく取り上げられ…

労働市場制度改革

法学者と経済学者が、労働市場の改革をめぐる問題を扱った論文集。だが、問題自体の難しさのためだろうけれど、問題提起程度で話がとどまっている論文が多く、読んでもあまりタメにはならない。

女ひとり家四軒もつ中毒記

佐藤優の本で、外交官の蓄財の実例として挙げられているので読んでみた。軽い本で、すぐに読み終わる。著者は女性外交官。東京の安アパートに憤慨して奮起、東京、千葉、パリなどに次々と家を買う。バブル崩壊での損といい、著者の行動も文章もユーモアにあ…

ブルジョワジーの秘かな愉しみ

ルイス・ブニュエルの作品。しばらく前に買っておいたのだが、これまで見ていなかった。麻薬の密売に手を染める外交官など、俗物のブルジョワたち6人が中心だが、彼らがなぜか食事になかなかありつけず、脇筋として親を殺されたことの復讐が繰り返され、現…

これからを生き抜くために大学時代にすべきこと

大学教師が大学生に向けたアドバイス。勉強、人間関係、恋愛、アルバイト、就職など、章ごとに主題が分かれている。著者は私と同年代なので、書かれていることにはかなり共感する(例えば、アルバイトをすべきでないというのはその通りで、アルバイトで疲れ…

セカイ系とは何か

「エヴァ」くらいしかセカイ系の作品に慣れ親しんでいない私にとって、「セカイ系」というのはイマイチつかみどころがない概念であったけれど、本書で「セカイ系」についてよく分かった。セカイ系の作品には、「社会がなく個人的なことと世界とが直接つなが…

地域政策アセスメント

地域政策とのタイトルだが、中身はほぼ都市計画や土地政策に限定されていて、それ以外の政策についてはほぼ載っていない。土地利用策についても、単に法的に規制するだけでなく、インセンティブ等経済学的な視点が必要というのは、その通りだろう。中心商店…

神の小さな土地

ノンフィクション作家による旅行記。離島本かと思って買ったのだが、離島関係は奥尻と佐渡のみだった(もう一つ、琵琶湖の内海に浮かぶ沖島も離島と言えば離島かもしれない)。が、読んで損した気はない。昨年大きな話題を呼んだ八ツ場ダム周辺地域の、10…

出会い系のシングルマザーたち

正直に言って、暗澹たる気持ちにさせられる本である。心が弱っているときには読まない方がいい。 本書の主役は、売春をしているシングルマザーたち。それだけで、良識派の人々に眉をひそめられそうだが、彼らの人生は、まったく過酷である。なぜ売春をするか…

鉄道・路線廃止と代替バス

国鉄再建法以降、特に多数の路線が廃止されたり、第3セクターに転換したりした。中には3セク転換後に廃止された路線もある。国鉄・JRのみならず、私鉄においても、経営難からバスに代替された路線も多い。 本書はこうした、バスに代替された路線について…

大学論

大学人を盛んに批判しているように見えた大塚英志氏が、神戸芸工大の教授に就任したときはやや驚いた。本書は、大塚氏が自らの経験を基にして語る大学論。 大塚氏が在籍しているのは「まんが表現学科」。私の在籍する学科も「人間表現学科」だから、多少は参…

のたれ死にでもよいではないか

ロシア人の父と日本人の母の間に生まれたニヒリスト文学者の大泉黒石や、放浪の俳人種田山頭火、文字通り芝講演でのたれ死に(凍死してしばらく身元不明だった)した藤澤清造など、6人の無頼的文学者の生涯を描くもの。新書版という制約もあるのあろうが、…

堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産

ライブドア関連の綿密な取材で知られる朝日の大鹿靖明記者の新刊。JALの内情が腐っていることは、既にいくつかの類書で読んでいたのでもはや驚かなかったが、第2章、第3章で詳述されている、「JAL再生タスクフォース」の経緯はきわめて興味深かった…

この国を動かす者へ

佐藤優氏が「アサヒ芸能」に連載していた記事をまとめたもの。「民主党へ」「自民党へ」「外務省へ」「諜報にたずさわる者へ」「海外有事へ」「この傑物たちへ」「日本社会へ」の7章構成。民主党と自民党を「カレー味のうんこ」「うんこ味のカレー」に喩え…