2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

出版・新聞絶望未来

こちらも暗澹たる本ではある。タイトルから分かるように、出版・新聞業界の暗い未来について語った書。まずは、電子書籍の暗い見通しについて。書籍の電子化には時間がかかり、また、売れているのはコミックが大半。トーハンが内部紛争で日販に遅れを取った…

あのとき、大川小学校で何が起きたのか

東日本大震災による津波被害の中でも、とりわけ悲惨な事例として語られたのがこの「大川小学校」の事例だった。50分間校庭に「避難」していた生徒も教員も、結局大半が波に飲まれて命を落とす結果となった。もし、早く「裏山」に避難していれば助かっていた…

災害弱者と情報弱者

3.11以降のマスメディアおよびインターネットにおける情報の分析が中心。例えば、マスメディアは急速に地震や津波への関心を減少させて行くこと、しかし、新聞はネット系メディアと比べると、比較的情報の多様性が保たれていることが、データで示されて…

「考えるクルマ」が世界を変える

クルマ同士、あるいは、クルマと信号機などが相互に通信して協調し、人間にとって快適な移動を保証するようなあらたな電気自動車「スマートビークル」。実は私は、今の自動車は嫌い(何より事故を起こすし、運転中に本も読めない)のだが、こんな車なら乗り…

ラジオは君を救ったか?

鹿児島シティエフエムの重役が、鹿児島からの視点で、東日本大震災時でのラジオの活躍を描く。第2章が大宗を占めているのだが、そこはゲストを招いたチャリティ特番の内容。九電の川内原子力発電所の環境広報次長なども招かれて話をしている。

識字神話をよみとく

日本は識字率99%と言われているが、実際にはもっと低いのではないか・・・という問題意識による著作。「日本人の読み書き調査」を再検討し、その問題内容や、あるいは、外国人や障害者がきちんと含まれているかという視点から、もっと識字率は低いのでは…

デジタル・ネイティブとソーシャルメディア

大学院の授業で学生に勧められて読んでみた。著者は実践女子大の准教授。中身はタイトル通りだが、中でも、ソーシャルメディアを使った就職活動(ソー活)について詳しく書かれた部分が興味深い。また、学生たちが、誰とランチを食べるかで頭を悩ましている…

iPhone5で始まる スマホ最終戦争

スマホ業界について詳しく取材し解説した書。アップルの戦略、アップルに振り回せる日本のケータイ業界の話が中心。

平成史

あれよあれよという間に平成も24年。堺屋太一氏が「平成三十年」を書いたころは、随分未来という感じがしたが、もうすぐである。 さて本書は、小熊英二氏を中心とした研究グループが、6人で執筆した平成史。小熊史が総説と「国際環境とナショナリズム」を…

社会(学)を読む

若林幹夫・早大教授の著作。社会学の入門書だが、古典的な書物を「読み解く」形で叙述が進められる。正直なところ、社会学の入門書としては、やたらと本を読んでいる学生のいるエリート大学でしか使えない気がする。中堅校ではもっと、現代社会の具体的な現…

一億総ツッコミ時代

「一億総評論家時代」(大宅壮一)を思わせるタイトルだが、本書の著者は芸人のマキタスポーツ氏。芸人本にありがちなおふざけとは違って、本書はごく真面目に書かれた社会批評であり、情報社会論とも言える。要は、お笑いの価値があがり、みなが「ツッコむ…

再配分か承認か?

フランクフルト学派第三世代のアクセル・ホネットと、米国のフェミニストナンシー・フレイザーとの対論。再配分と承認との両方が必要とするフレイザーは、ホネットが「承認一元論」に陥っていると断じて批判し、それに対してホネットが防戦する形。こんなも…

世界の織機と織物、山口晃展

昼食後、国立民族学博物館で「世界の織機と織物」展。内外の様々な織機が展示されているだけでなく、体験も出来、ビデオも流れている。織機というのは、産業革命の原点でもあり、また、パンチカードなどは直接に織機技術の応用であるのだから、情報革命の起…

ファイナルカット

大阪ヨーロッパ映画祭に出かけ、『タクシデルミア』のジョルジュ・パールフィ監督の『ファイナルカット』を見てきた。何と450本もの映画を切り張りして作った、オリジナル撮影の全くない作品。それでいて、ありふれた(?)恋物語が一本出来てしまうのだ…

格差の世界地図

翻訳書で、原書はカリフォルニア大学の教授2人が著者。「経済格差」「権力格差」「社会的格差」「アクセスの格差」「健康格差」「教育上の格差」「環境の格差」「平等に向かって」「データ、定義、資料」の9章構成で、世界地図上に様々な格差が色別で描か…

MAKERS

『フリー』『ロングテール』など、情報時代の生産や消費のあり方について、注目の書籍を発表してきたクリス・アンダーソンの新作は、まさにトフラーの言う「プロシューマー」を思わせる。「3Dプリンタ」「CNC装置」「レーザーカッター」「3Dスキャナ…

惑星ソラリス、サクリファイス

惑星ソラリスの方は実は、リメイクされた作品の方を先に見ていたので、ストーリーは知っていた。人間の観念を具体化するという、おそるべき能力を持った「惑星ソラリス」の海。主人公のいる宇宙ステーションに、かつて自殺した妻が蘇って現れるのだが、蘇っ…

今日も元町映画館に行き、タルコフスキー作品を2本鑑賞。

地名の由来を知る事典

これもどちらかと言えば歴史書。「事典」とあるが50音順などではなく、地名の由来について体系的に解説してくれる。例えば「蘇我」も「菅原」も、同じ「スガ」の生い茂る地に由来しているそうだ。愛知県の「吉良」は、雲母がキラキラと輝いているところに…

東大のディープな日本史

東大日本史の入試問題を肴に、日本の歴史を解説する。実は私は高校の時日本史を選択しておらず、その「教養の欠如」が今も尾を引いているので、本書の解説を感心しながら読んだ。著者は予備校教師とのことだが、日々受験生に鍛えられているためか、その解説…

ONE PIECE

「ワンピース」というと、国民的人気マンガと混同されやすいのだが、これは、矢口史靖と鈴木卓爾の二人が監督した、低予算固定カメラ一発アイディア短編映画集。「春コレクション」は何度か見たのだが、「秋コレクション」は初めて。バカバカしくも失笑して…

ハクティビズムとは何か

著者は1984年生まれの大学院生。ネット文化を生み出したカリフォルニアン」・イデオロギーや、ウィキリークス、アノニマスなどについて要領よく解説してくれる。カリフォルニアン・イデオロギーについては、情報技術が政府による投資であることを忘れ、彼ら…

ノスタルジア、ストーカー

元町映画館に行き、タルコフスキー作品を2本、はしごした。 「ノスタルジア」は、ソ連生まれでイタリアに行った作家が主人公。自伝的要素が強いのか、予備知識なしに見ても分からないところもあるのだが、「水」「火」といったタルコフスキーのモチーフが繰…

脱「原子力ムラ」と脱「地球温暖化ムラ」

『地球温暖化問題原論』の江澤誠氏の新作。より「脱原発」へと踏み込んだ中身となっている。私も江澤氏の意見にはほぼ賛成なのだけれど、原発と新自由主義や市場原理とを性急に結びつける考え方には、やや疑問を持つ。市場原理が貫徹すれば、原発は存在し得…

雑誌メディアの文化史

戦後の雑誌メディアについて書かれた論文集。「週刊朝日」「暮しの手帖」「POPEYE」「日本文摘」(台湾の日本文化紹介雑誌)などが研究対象となっている。

日本人の姓・苗字・名前

日本人の「名前」のあり方を概説。アイヌ人の「創氏改名」などについても触れられている。著者は東北大学教授。

混浴温泉世界

アートフェスティバル「混浴温泉世界」は現在も別府で開催中だが、本書は2009年に開催された前回(第1回)の図録。混浴温泉世界がどのような経緯で出現したのかも含めて、その際の芸術作品やアートパフォーマンスの概要が分かり、また、ところどころで別府…

中国映画のみかた

日本在住の中国人中国映画研究者6人が分担執筆した、中国映画についての入門書。中国のような、映画が検閲されるのが当たり前の国で、映画監督たちがどのような戦略でストーリーや構図、人物造形などを練り上げ、また、国家や党の側が何を考えて「改善」や…

メビウスの作った曲面

フックス&タバチニコフによる、元は一冊だった「本格数学練習帳」の第2分冊。本書では幾何学が対象で、第1分冊よりもとっつきやすくはあるのだが、それでも、聞いたこともないような概念は頻出する。例えばカスプとか、可展面とか、線織とか、ベズーの定…

「合理的思考」の教科書

京大医学部の最先端授業!と、表紙にある。確かに著者は京大医学部教授で、このような授業を行っているらしい。中身は結局、統計学やメディアリテラシーで、疫学にも役立つように工夫されている。悪い本では決してない。 しかし、一つの疑問がある。京大の医…