2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ポピュラー音楽と資本主義

ごく平易に描かれた、ポピュラー音楽を対象とするカルチュラル・スタディーズ。確かに90年代は、「クリエイティビティ」や「自分らしさ」といったイデオロギーが席捲した時代だったと、なつかしく思い出す。

松岡利勝と「美しい日本」

これも必読書だと思う。 松岡利勝という代議士は、自殺する前から悪評が耐えなかったが、その悪評通りの巨悪であったことが、綿密な取材によって明らかにされている。著者は元朝日新聞記者で、退社後もアエラなどで健筆を振るうジャーナリスト。これまで何度…

short films

20分程度の短編映画を集めたものだが、なんともゆるくて眠くなる。うち3作は、麻生久美子のプロモーションビデオか?Short Films デラックス版 [DVD]出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント発売日: 2003/11/21メディア: DVD購入: 1人 クリック: 32…

言説分析の可能性

先月末の「酒宴」で、増田さんたちがやたらと話題にしていたのがこの本で、遅ればせながら手に取ってみた。確かに面白い。一冊の本の中で、言葉のプロレスが行われている感じだ。編者の一人、佐藤俊樹氏が序章で、言説分析をロマンチシズム的(?)に追求す…

13階段

原作は乱歩賞受賞のミステリ。「刑務所の中」と違って看守役の山崎努が、10年前の殺人事件の真相を探るという筋立て。犯人として逮捕されている男の冤罪が立証されれば、秘密の依頼人より成功報酬として3000万円もらえるという破格の待遇である。山崎…

日本の食と農

これは必読書だ。 農業問題や食料問題は、部外者にはわかりにくいし、例えば行政を批判するような単純なスローガンで「分かった気になる」危険も大きい。本書は、消費者エゴ、地権者エゴにあぐらをかき、手軽さを求める外食・中食に頼り、「おいしさ」「見栄…

システムのムダ

読売新聞ニュースより 社保庁年金システム入札に「不備」…専門家が見直し要請 社会保険庁が2010年度中に運用開始を目指す新しい年金オンラインシステムの調達方式に関し、厚生労働省が委託する民間の専門家が、特定企業による独占の弊害を排除できないと…

超人 高山宏のつくりかた

超人的英文学者・高山宏氏の自伝的エッセイ。私も「学魔」になりたいものだ。わずかにしか触れられていない、都立大の人文系を解体した石原都知事との戦いについては、きっと首都大学東京辞任後にもっと詳しく語ってくれるのだろう。戦いの約10年間、著書…

市場浄化

一年経ってやや色褪せた感はあるが、田原総一朗による、堀江・村上擁護本。孫や宇野も出てきます。

さらば金融奴隷

友人に奨められて読んだ。サラリーマンを辞めて出版社を自ら起業したはいいが、詐欺(?)に遭って経営難となり、意地で会社を存続させるため、著者は高利の闇金融に手を出してしまう。その後は、地獄の日々だ。次々やってくる、3時の利息支払い期限に間に…

甲骨文字の読み方

ありそうでなかった、甲骨文字の練習問題付き入門書。著者は立命館出身、ということは白川静氏の弟子筋なのだろう(「口」(くちではなくサイ)学説も受け継いでいる)。「南+殳」、とか、「祟」の変な形の別体とか、現代では使われない字も出てくる。

パール判事

パール判事といえば、東京裁判でただ一人、A級戦犯を「信念に基づいて」無罪意見を述べたとして、右翼思想家に便利に利用されてきた観があるが、パール判事の実像は、貧しい家庭から学力のみで這い上がって大学教育を受け、最初は数学専攻の大学教授だったの…

mixiと第二世代ネット革命

第一部ではmixiのシステムおよびその利用者特性について論じられる。見知らぬ人とも積極的につながりを求める「ヴァーチャリアラー」がカギをなしているという(ややトートロジー的ではあるが)。2005年の、早稲田大学IT戦略研究所の調査では、実名公開者…

情報の人間科学

認知心理学で知られる中島義明・早大教授による概説書。心理学を中心に、情報と人間にまつわる興味深い研究が紹介されている。特に第18章「食情報と人間」には「女性は魅力的な男性の前では少食になる」(Pliner,P.&Chaiken,S.Eating,social motives,and s…

自民党人事

谷垣、二階については特に感想はない。だが、伊吹幹事長、古賀選挙対策委員長には失望した。伊吹文明氏は元大蔵官僚で、バカではないのだろうが、これまで何度も金に纏わる疑惑は報じられているし、国会や記者会見での態度は傲慢そのもので、あまり好感は持…

京都市美術館で「北欧モダン デザイン&クラフト」展。 http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/exhibition/nordic.html細見美術館にも立ち寄る。「神坂雪佳-京琳派ルネサンス」展。 http://www.emuseum.or.jp/

ハリー・ポッターとはりぼての虎

春の陽射しの中で、殿様がのんびりと鼻毛を抜いていますと、そこへ家老が駆け込んできました。 「殿、一大事でござりますよ」 「どうした?ぼた餅でも空から降ってきたか?」 「またおたわむれを。そんなことではございません。曲者が現れました」 「切り捨…

ヒトと人のあいだ

理工系の学問に押されがちの人文系の学者たちを中心に、ヒトを考えるシリーズの一つ。今春に台湾でお世話になった山田さんも書いてます。私が一番面白かったのは、長谷川寿一氏の書いた第6章「ヒトがヒトを殺すとき」。戦後日本において殺人率が一貫して低…

友人の結婚披露パーティで京都へ。祇園ホテル(APA系)に宿泊。

フーコーの後で

図書館の新刊の棚で見つけたので借りてみた。原さんを排除した問題の書。 70年代後半のフーコーに焦点を合わせるという着眼点はよい。土佐弘之さんの論文などは勉強にもなる。だが、編者2人の論文がどうしようもなく「貧しい」。高桑氏はインセンティヴを…

論理と計算のしくみ

論理学から計算機科学まで扱った、内容豊富な数学書。第1章の「集合と関係」は平易であるし、第2章「命題論理と述語論理」は、だいたいどんな論理学書でも扱っているが、第3章の「様相論理」は、私は初めて知った。時間の推移によって真偽が変化する状況…

僕はパパを殺すことに決めた

両親ともに医師で、数学オリンピックに出たこともある奈良・東大寺学園生(16歳)が自宅に放火し、継母および幼い弟妹を焼殺した事件は、世論に大きなショックを与えた。本書はその少年の捜査段階での供述を軸に、事件の真相に迫る。 形式的な問題として、…

都道府県改革論

まだ若手の著者による、都道府県行政の計量的分析。例えば第二章では財政支出を目的変数に、市町村数や小規模市町村数、指定都市数などを説明変数にして、重回帰分析などを行っている。全体として道州制への移行を推進する立場のようだ(それがストレートに…

大阪・同和帝国の正体

(エセ)同和団体と、大阪市とがいかに癒着し、不正な交付金・補助金などが流れていたのかを明らかにする。読めば読むほど腹立たしさが増す。昨年、「飛鳥会」の小西邦彦被告が逮捕され、その一環にやっと司直の手が入ったが、小西被告一人の懐に入った金額…

異体字の世界

漢字には、一般に正字とされるもの(常用漢字体や、康煕字典体)の他に、同じ字であるのに別の形の「異体字」を持つものがある。簡単な例を挙げれば、「島」に対する「嶋」や「嶌」がそうだ。本書はこの異体字について、薀蓄を傾けたもの。 特に第5章の「旧…

「小さな政府」の落とし穴

財政学の第一人者による著作。大きな政府でも、小さな政府でもなく、中規模な政府を提唱する。過激な歳出削減論者からすると、やや物足りない印象を持つかもしれないが、全体として中庸を得た、まともな本。第3章の、北欧諸国の現状を描いた部分は、私にと…

遺伝子研究と社会:生命倫理への実証的アプローチ

遺伝子研究の社会的な意味付けが、非常に重要な問題であることは論を俟たない。本書はその上に、「実証的アプローチ」という魅力的な副題までついている。 一読してみて、勉強になった部分は確かにあった。しかし、実証的アプローチというのはやや誇大広告の…

范曉萱

大好きな范曉萱(Mavis Fan)のビデオも、YouTubeに大量にアップされているのに気が付いた。ありがたいやら申し訳ないやら。 http://jp.youtube.com/watch?v=BOqXOOLNn0Uトーキング・トゥ・マイ・セルフアーティスト: メイビス・ファン出版社/メーカー: ポリド…

シンメトリー

美術作品や生物の形態からシンメトリーについて論じ始め、最終的には数学の群論へとつなげる、ヘルマン・ヴェイルの1952年の著書。訳者は、水道方式で数学教育界の一世を風靡した遠山啓氏。

メディア時代の広告と音楽

関西大学の小川博司先生(お元気でしょうか)を中心とした研究グループによる、CM音楽研究の論文集。CM音楽は流行してもすぐに忘れられることが多いので、資料的価値は高い。増田聡さんも書いてますね。