2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ルポ虐待

「大阪二児置き去り死事件」を、女性ルポライターが関係者に丁寧に聞き取り調査をしながら描き出す。とはいっても、私の事件に関する印象は変わらなかった。本人も悪いが、本人の父親もひどいし、そして、婚家の元夫や両親も、はっきり言って相当に悪い。子…

0と1の話

ブール代数、シャノンの情報理論、チューリングマシンなど、デジタルでいかに計算が行われるのかという理論を解説する。巻末には、短編SF小説まで付されている。これは良書なので、デジタル回路を勉強したい人に、是非お薦めしたい。

ガロア理論の頂を踏む

「一般の5次方程式が根号で解けないことの証明を、一番やさしい筋道で理解し感得する」ことを目指し、「整数」「群」「多項式」「複素数」「体と自己同型写像」「根号で表す」の6章で構成する。それでも5章くらいからはかなり難しくなるが、それは耐える…

マクルーハンとメディア論

博士論文の前半だけまとめたもの(後半はJ・ギブソン論)。マクルーハンの語る「人間のextension」論(日本語では拡張、延長、外化などと訳される)を深く追究する。特に、スチュアート・ホールやバックミンスター・フラーとの関わりが語られる。サイバネテ…

テレビジョンは状況である 劇的テレビマンユニオン史

著者の重延浩氏は、長年テレビマンユニオンの経営をしつつ、自らも番組制作者として質の高いテレビ番組を作り続けてきた。その著者が、自らおよびテレビマンユニオンの歩みを振り返る。著者は樺太で医者の息子として生まれ、札幌に引き上げ、大学はICUを…

チェコ・アニメーションの世界

原著は2004年にチェコで出版された「アニメーションと時代」という本で、その本の半分弱を翻訳したのがこの本(それでも、4段組で300頁近くある)。チェコアニメ好きにはたまらない情報が満載。第一部「チェコ・アニメーションの歴史」で歴史が概説…

エスター

3人目の子供を死産で失った夫婦(夫は建築家、妻は音楽家)が、孤児院からロシア系の孤児「エスター」を養子にもらったところ、奇怪な事件が次々と起こる、というホラー。結構本気で怖い。

かつて誰も調べなかった100の謎

週刊文春で、1995年から2011年まで連載されていたコラム「ホリイのずんずん調査」の中から100本の記事をまとめたもの。「全局のアナウンサーが映っている時間を調べる」という大変な力作(一週間7局の番組を全て録画して、アルバイトも多数使っ…

来るべき民主主義

國分氏が、住んでいる小平氏で、都道328号線の延長問題が持ち上がった。渋滞解消のためにまっすぐに広い道路を通したいというのが推進側の論理だが、その場所には住宅もあり、コストは高い。國分氏らは、「説明会」がおざなりであること、また、住民投票…

神戸市長選挙の日

今日は神戸市長選挙の投票ならびに開票の日である。私はもはや神戸市民ではないけれど、職場は神戸であるほか、神戸市立図書館を初めとして神戸市の施設にもいろいろとお世話になっており、ある程度の関心は持っていた。 市長選挙は、事実上、現在の矢田市政…

団地団

「団地団」を結成した3人の著者が、各地の団地を回って写真を撮り、また、ロフトプラスワンで団地映画などを熱く語る。確かに「しとやかな獣」は団地映画ナンバーワンだと僕も思います。

戸籍と国籍の近現代史

戸籍制度の変遷から、日本国家を考える。「国策として開拓民を異郷の地に送り込んだときには戸籍に縛り付けて「日本人」として扱い、戦後に帰国事業を打ち切って未帰還の「日本人」の戸籍を奪ったのが日本政府である」(p.261)といった事実が胸を打つ。

犯罪は予測できる

現在行われている防犯対策の多く(地域安全マップ、防犯ブザー、住民パトロール、街灯など)をあまり効果のないものとして批判、犯罪機会論に基づき、犯罪を起こさせにくい設計を提唱する。後半では犯罪科学の歩みが概説されているのだが、デュルケームやマ…

「アリス・ミラー城」殺人事件

クリスティ「そして誰もいなくなった」や、綾辻「十角館の殺人」の系譜を受け継ぐ孤島ミステリ。東北地方の離島「江利カ島」に招かれた7人の探偵は、皆殺しにされてしまうのか?むしろこの二冊を読んでいる人ほど、騙されてしまうかもしれない。多用される…

夜の経済学

荻上チキ、飯田泰之の『週刊SPA!』連載に加筆訂正したもの。風俗産業の経済分析に始まり、大学生の生活の実態、生活保護世帯への人々の冷たい視線、流言とデマ、第三者効果などを、データを基に分析する。特に第4章の、「弱いものがさらに弱いものを叩…

ロジカルな田んぼ

「日本一の稲オタク」を自称する農家の語る実践的な農業論。著者は農家に生まれたが、父親からは跡などつぐなと言われていたと言う。現在支配的な、「何も考えずに農薬を撒く」形の農業を批判、常に実験を繰り返し、様々な品種の稲を植える。さらには、胚芽…

ネット・モバイル時代の放送

10人による論文集。第一部「放送を巡る制度と事業者」、第二部「放送番組と視聴者・聴取者」、第3部「3.11を通して考察したソーシャル・メディアと放送メディア」の3部構成。ややまとまりを欠いているが、2011年放送法に関して考えるのには好適。

アニメ・マンガで地域振興

アニメ・マンガを利用した地域振興について語る。実際の事例は面白い(「らき☆すた」の鷲宮町、「戦国BASARA」の白石市、「サマーウォーズ」の上田市)が、トフラーの『第三の波』をきちんと読んでいないことが丸分かりなのは悲しいことだ。私も、地域情報化…

CDは株券ではない

音楽家菊地成孔氏が、2003年から2005年にかけてbounce.comで連載した記事の単行本化。毎月3枚のCDを取り上げ、それが何枚売れるのかを菊地氏が予想、「答え合わせ」もついている。CDが売れなくなった時代、たいてい予想を下回る場合が多いが、…

無限解析のはじまり わたしのオイラー

九大の数学史家、高瀬正仁氏の著作。何と言っても一番興奮したのは第3章「ベルヌーイの等式とオイラーの公式」。ベルヌーイが、自分の発見した等式とも矛盾する、負数の対数に関する見解を発表するのだ。ライプニッツも絡んで大論争となるのだが、オイラー…

淀川長治映画ベスト1000

淀川長治氏の映画評論を千本分まとめて読める。と言っても書下ろしではなく、編者の岡田喜一郎氏が、淀川氏の数多い著書や文章からまとめたもの。各映画とも、前半が通常の解説で、後半が「ハイ淀川です」という淀川さんの意見。 淀川氏というと、褒めてばか…

データ分析ってこうやるんだ!実況講義

この本はビジネスマン向けに、データ分析について教示する本だが、ジニ係数のような操作的な変数を否定するなど、なかなか独特の考えに基づいている。著者の主張は、表のデータをじっくり見る、ということに尽きる。

とある弁当屋の統計技師

統計学の入門書を書くのは誰にとっても難しいことだ。本書は、お弁当屋さんの娘と、その店に雇われたデータ・サイエンティストの対話という形で統計の初歩を語るものだが、はっきり言えば、苦い中身を糖衣でくるんだだけ。表面上は、何やら青春ドラマのよう…

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド

東浩紀の『思想地図』シリーズの一冊。東氏や津田大介、開沼博といった人々がはるばるとウクライナに出かけ、チェルノブイリ周辺を取材して作った。ダークツーリズムというのは、「負の遺産」をめぐる旅行のことで、本書53ー61頁ではチェルノブイリ以外…

waking life

実写映像にデジタルペインティングを施した前衛的アニメーション。中身はと言うと、主人公の若者が夢の中で、多数の人と出会い、夢について、人生について、対話を続けるというもの。その中には、いきなり焼身自殺をしてしまう人もいる。主人公は何回も目覚…

数字を追うな 統計を読め

著者は総務省統計局勤務。日本の統計制度の歴史、統計の読み方、統計官僚の実際の仕事のやり方などを平易に解説。

Introduction to Surveillance Studies

監視研究入門。「序と概要」「技術」「考察」「プライバシーと立法」「リソース」の5部構成だが、中心は技術(テクノロジーとテクニック)を論じた第二部で、視覚、聴覚、伝播、GPS、バイオなど様々な分野の技術が挙げられている。私が知らなかったのは…

劣化国家

『憎悪の世紀』『マネーの進化史』などで知られるハーバード大学教授、ニーアル・ファーガソンの著作。西洋文明がいかに衰退しているのかを描く。将来世代の負担を積み増す財政赤字、銀行の強欲とそれを規制できない政府、法律家支配、市民社会の衰退などを…

日本の写真家101

タイトル通り、日本人の写真家から101人を選び、生年順に並べて解説したもの。執筆者も12人にわたる。こうした本は人物を選定する基準が難しいだろう。例えば若手では、長島有里枝や澤田知子が入っているが、梅佳代や本城直季は入っていない。そこに根…

ネット時代の地方自治

住民基本台帳ネットワークや、平成の大合併に関わった総務官僚(神戸市の副市長も歴任しており、現在神戸市長選挙にも立候補中)が、地方自治について語る。良くも悪くも官僚が書いた本、という感じ。法律に関する部分に間違いはないのだろうが、社会風潮に…