2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

希望難民ご一行様

東京大学総合文化研究科に提出された修士論文を改稿したもので、ピースボートに乗り込む人々を対象にした調査が中心。ピースボートについては昔、別冊宝島かなにかで短いルポを読んだことがあったので多少の予備知識はあったけれども、本書はほぼ一冊全体が…

神的批評

若手批評家の単行本第一作。宮沢賢治、柄谷行人、柳田国男、北大路魯山人を各章で論じる。神的批評とはずいぶん大仰なタイトルだと思ったが、なるほど、実際に神の話が出てくる部分もあるし、また、そのくらい力を入れて書いていることも分かる。師匠にあた…

フラット・カルチャー

「フラット化した」と言われる日本文化のさまざまなあり方を、若手を中心とした執筆者で、41項目に渡って論ずる。項目の選択も、なかなか興味深い。「カフェ」「ユニクロ」に始まり、「ググれカス」「やおいとBL」などが含まれている。南後由和氏の「建…

瓦礫の天使たち

立教大学の映画学者、中村秀之氏の論文集。第1章および第4章で論じられているベンヤミン論が中心だが、私が特に面白かったのはロイドやチャップリンを論じた第3章。ハロルド・ロイドの「要心無用」は、ロイドが高層ビルを命綱もつけずに登っていくように…

質的データ分析法

暴走族や現代演劇集団へのフィールドワークで名高い著者が、質的調査法について、陥りがちなワナを避けて「分厚い記述」を目指すにはどうしたらよいのか、学生向けに詳しく解説するもの。 著者はよくない例(薄い記述)として、「読書感想文型」「ご都合主義…

環境政策学のすすめ

著者は元環境庁の官僚で、現在は京都大学で環境政策等を教えている。よくまとめられた書だと思うけれど、やはりこの本も、二酸化炭素の問題ばかりを過大に考えているきらいがあるように感じる。他にも重大な環境問題が多数あると思うのだが。

日本映画は生きている

岩波の「日本映画は生きている」シリーズの第1巻。なかなか面白いラインナップとなっている。李鳳宇氏による在日という立場から見た日本映画論や、肖像権問題を確信犯として乗り越えようとする森達也氏の文章などが特に印象深い。特に森氏は、表現者やメデ…

決闘 ネット「光の道」革命

ソフトバンク総帥の孫さんが「光の道」構想を説明し、それにジャーナリスト佐々木氏が懐疑的な質問をする。この模様はすでにユーストリームで公開されているが、私はやはり本の方が分かりやすい。この対談を孫氏は「巌流島」の戦いになぞらえているが、最終…

読売新聞ニュースより 拘置中の60代被告、書類ひも首に巻き付け死亡 読売新聞 11月27日(土)20時54分配信 姫路少年刑務所(兵庫県姫路市)は27日、同刑務所が管理する姫路拘置支所で、拘置中の60歳代の男性被告が、首にひもを何重にも巻きつけて死亡し…

書物と映像の未来

この本も大学や学問に大きく関わる。元は、2010年1月に開催された日本学術会議のシンポジウム「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保全・活用」。編者として名前が挙がっている3人のほか、名和小太郎氏や上野千鶴子氏、伊藤守氏なども執筆して…

不純なる教養

本書の著者の白石氏も、上智大学などで非常勤でフランス語を教えられている。『現代思想』を中心に連載した大学論・学問論をまとめたもの。日本が、国際人権規約の中の、高等教育の漸進的な無償化を定めた条項への批准を留保しつづけている(日本以外ではマ…

ホームレス博士

「高学歴ワーキングプア」の水月昭道氏の新作。若い大学院修了者たちが経済的に苦しい立場に置かれていることについて、本書に書かれてあることのほとんどは正しい(ただし、これが官僚や教授連中の陰謀という見方には私は与しない。文部科学省の官僚はそれ…

毎日乗っている地下鉄の謎

鉄道本の中で、地下鉄をテーマにしたものはさほど多くないと思う。実は地下鉄の定義自体も、法令等で定まってはいないそうだ。本書では、「連続する地下区間が5キロ以上」「連続する地下の駅が3駅以上」「国土交通省が挙げた10地下鉄業者と接続し、通算…

トリック・シアター

前作「プリズン・トリック」で乱歩賞を受賞した遠藤武文氏の二作目。トリック自体は前人未到というほどでもないだろうが、物語に力があり、ぐいぐいと読ませる快作となっている。

アメリカン・デモクラシーの逆説

米国をフィールドとする人類学者・渡辺靖氏の著作。米国の持つ光の部分と、闇の部分について、目配りの利いた記述がなされているのではないかと思う。特に、なぜオバマ政権の民主党が、中間選挙で厳しい審判を受けたのかについて、参考になる部分が多かった…

実は強欲なミッフィー 

私の名前はナインチェ。ウサギだけど、服も着るし、犬も飼うのよ。英語圏ではミッフィー、日本語では「うさこちゃん」て呼ばれてるわ。 まあ次の記事を読んでちょうだい。 「キャシーはミッフィーのコピー」とサンリオに生産停止命令 模倣を認定 オランダ裁…

デジタル時代の著作権

タイトル通り、デジタル化やネット化が進む時代の著作権にまつわる問題について解説したもの。日本の著作権は無登録方式だが、弁護士である著者は、登録制が必要ではないかとの立場に立つ。留学中にレッシグに学んだ人らしい。

限定合理性のモデリング

人間に完全な合理性を仮定せず、限定的な合理性を前提にするというのは特にハーバート・サイモンが確立した手法だが、著者のルビンシュタインはそれをさらに推し進めたモデルを本書で提案している。とはいっても、終章でサイモンが本書のモデルが経験的な裏…

常用漢字の改訂

常用漢字の改訂が閣議決定された。 http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_kyoiku-jyoyokanji20101123j-04-w530&rel=y&g=thaさて、新たに追加された字の「読み方」を眺めてみると、やはりまだまだ足りないところが多いように思う。「苛」は、いじめる、とか、さ…

妖談

車谷長吉氏による短編集。一つ数ページの作品が34本収められている。車谷氏は姫路(というより飾磨)の出身で、私も姫路に住んでもう4年になるので、作品内の地名に土地勘が働くようになった。 車谷の作品は「私小説」と言われる。本書においても、車谷氏…

選挙の経済学

米国の経済学者が、選挙における一般の人々のバイアスを研究した著作。もしバイアスがランダムなものである(ホワイトノイズ)ならば、極端な意見は打消し合って「集合的な英知」が実現するはずだが、実際にはバイアスは系統性を持っており、例えば自由貿易…

35歳の教科書

リクルートから、民間人初の中学校長となった藤原和博氏の著作。成長社会から成熟社会へと移行しているとの認識から、「ジグソーパズル型学力」より「レゴ型学力」が重要になったとする。私は、この両者は対立するものというより、まずは暗記や練習が重要と…

blogging

Polity PressのDigital Media and Society Seriesの一冊。このシリーズの本を私は愛読していて、翻訳した「ネット検索革命」もその一つ。 さて本書は、シリーズの中ではあまり傑出した本ではない。タイトル通り、ブログについて書かれたものだが、ブロガーに…

環境問題の数理科学入門

食物連鎖や気象から、生態系、人口問題まで、環境に関するさまざまな問題の数理モデルを作る著作。実は原題を直訳すると「球形の牛」で、これは数理モデルを作る際には本質的なものだけを残したモデル化が必要という意味らしい。 数学的にはやや難。章末に演…

ミクロ経済学Ⅱ

ちょっと間が空いてしまったが、八田「ミクロ経済学」の2巻。18章になって初めて「生産と消費の基礎理論」が出てくるユニークな構成、かつ、政策的な含意が前面に出ている。特に、所得税の累進強化を主張するところは私も大賛成だ。高所得者の所得の多く…

情報管理と法

図書館情報学の叢書の一冊だが、一般向けにも十分役に立つ。個人情報保護法制を中心に、図書館サービスで問題になる可能性のある情報法規について解説したもの。著者は慶応大学准教授の新保史生氏。

筑波大学で集中講義「映像文化論」。10時20分から18時まで。 つくば駅周辺のイリュミネーションは、割とキレイだ。 http://c0013553.cdn1.cloudfiles.rackspacecloud.com/x2_375c24b

つくばみらい市

その後、総武線・武蔵野線・つくばエクスプレスと乗り継ぎ、「みらい平」駅までやってきた。 取材に行くときは通常、きちんとバスの時間なども事前に調べておくことが多いのだけれど、今回は油断していた。首都圏の中だし、いざとなったらみらい平から市役所…

ブラスティラヴァ 世界絵本原画展とチェコの人形劇

チェコ(含スロヴァキア)は外国の中で、私が最も興味を持つ国の一つなので行ってみた。千葉市美術館。絵本だけでなく、人形劇の人形自体も展示され、(監視付きだが)実際に人形を動かすこともできて楽しい。平日昼間ということもあって、館内はとても空い…

暗澹たるみらいに向けて

明日の筑波大学の講義のために東京に来た。