2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

明日のメディア

情報通信総合研究所の研究員である志村一隆氏の著作。特に海外のネット産業、メディア産業の新たな動きについて詳しく書かれており、そこのところは大変参考になる。

政策研究のためのゲームの理論

いわゆる「ゲーム理論」の入門・概説書としては悪い本ではない。だが、BASIC公共政策学というシリーズのくくりから考えると、特に「公共政策」について配慮したようには見えない。一般的なゲーム理論の教科書なのである。もちろん、例として少数、外交政策の…

人名・地名の漢字学

「人名・地名の」とあるが、ほとんどが人名の話題で、地名は人名に関係する限りで出てくるだけ。普通の漢和辞典には出ていないような特殊な国字、読み方の話題が多数載っている。これだから戸籍・住民票は困るよね。

思想地図β 2号

特集「震災以後」。東浩紀の巻頭言で、やたらと「われわれはばらばらになってしまった」と書いているのが、ちょっと目障り。八代嘉美氏の科学論「私たちはどのような未来を選ぶのか」が、もっとも示唆的だった。報道内容を、客観的数値、科学的知見、社会的…

Profiling Machines

副題は「個人情報経済の位置づけ」。個人情報の商業利用に焦点を当てた小著だが、2004年の本でしばらく「積ん読」していたため、いろいろと古くなってしまった。著者のグレッグ・エルマーはフロリダ州立大学准教授。マッケンジー・ワーク、ウィリアム・…

「ぴあ」の時代

私も「ぴあ」世代で、学生・院生・助手のころなど、毎号とは言わないがかなり高い頻度でぴあを買っていた。だから、ぴあの歴史を振り返る本が出ることは待望していた。 だが残念ながら、本書はその期待に応えてはくれない。まあ、薄い本だから仕方がないとも…

身体のいいなり

『世界屠畜紀行』で知られるライターの内澤旬子氏の、乳ガンの闘病体験記。身体感覚の変化などが赤裸々に綴られている。

怪物ベンサム

ベンサムというと、功利主義哲学者の代表格で、「最大多数の最大幸福」や、パノプティコン型刑務所の設計などが有名なため、何となく「合理的な人間」を想像してしまうが、本書を読んで、その合理性の追及を「非合理」なまでに行なったために、こうした思想…

SQ

鈴木謙介氏の新作。きわめてわかりやすい、一般向け書籍。「絆より縁」「ショッピングセンターを地域回遊の核に」などのメッセージを発する。

日本短編映像史

どうしても映画史の中では劇映画が中心的に扱われるものだが、本書は、そうしたなかで隅に追いやられがちな、教育映画、文化映画、産業映画、科学映画などの歴史を丹念に追った、500ページを超える大著。著者は、岩波映画の取締役を勤めた経歴を持つ。 こ…

意思決定のための数理モデル入門

ORの大学初年度向け入門書だが、この薄さと中身で3150円という価格は高すぎる。せいぜい1500円くらいにすべきではないか。

ヤクザと原発

かなり話題となっているので読んでみたが、期待にたがわぬスゴい本だった。著者は、暴力団関係を専門とする四十代半ばのフリーライター(私とほぼ同年代か・・・)で、単に周辺取材をするだけではなく、実際に原発の下請け作業員となってみて、そのありさま…

個人情報保護の理論と実務

個人情報の第一人者である東大・宇賀教授の著作。砂を噛むような記述が続くのだけれど、時々ハッとするような指摘があるのはサスガである。

Environmental Risks and the Media

カーディフ大学を中心とした大学教員3人の編著で、15章構成だが共著者を含め執筆者は23人。第一部が「環境リスクを位置づける」、第二部は「リスク政治の脱自然化」、第三部「身体、リスク、公的環境」、第四部「リスクを負うグローバル環境」。 残念な…

ソーシャルメディアの夜明け

デジタルステージ代表取締役が描く、ソーシャルメディアの利用や未来像。写真や装幀は美しいし、中身も率直に過去の失敗を吐露するなど好感はもてるが、それだけで350ページ強というのはどうも・・・。密度は薄いし半分の厚さにできると思う。

奇面館の殺人

綾辻行人「館シリーズ」の新刊。 残念ながら期待外れ。あまりにもご都合主義的なシチュエーション。多過ぎる偶然の一致。中でも納得が行かなかったのが殺人の動機。まあこれ以上書くと犯人がバレてしまうかもしれないので止めます。

気分のエコでは救えない:データから考える地球温暖化

ジャーナリストのぶつける疑問に対して、電力中央研究所の研究者が答える形で、地球温暖化を中心とした事柄について、なるたけ客観的なデータに基づいて解説する。例えば京都議定書の失敗および終焉についてもきちんと解説するなど、信頼度の高い本だとは思…

辛酸なめ子の現代社会学

本書も文章と漫画のハイブリッドだが、上記の書よりさらに漫画の割合が高く、文章1ページ+漫画3ページという構成。雑誌『わしズム』に連載したものが中心。エコに走る人や、個人情報保護に過敏になる人など、極端に走る人々をおちょくり、笑うものだが、…

総統閣下はお怒りです

映画『ヒトラー 最期の12日間』は私も見た。ヒトラーに感情移入してはいけないのかもしれないが、とてもよく出来た映画だった。だからこそだろう、YouTubeやらニコ動やらで、その映像に日本語の嘘字幕をつけるという遊びが流行った。本書の著者の元木一朗…

atプラス10

atプラスはあまり読まない雑誌だが、この号はなかなかよかった。「現代社会の理論」について語った冒頭の見田宗介と大澤真幸の師弟対談も中身が濃いし、見田宗介著作集を買いたくなった。柄谷行人の、「資本主義は死にかけているからこそ厄介なのだ」も、氏…

できることをしよう

糸井重里およびほぼ日刊イトイ新聞のスタッフが、東日本大震災に関して行ったことや考えたことをまとめたもので、対談も多く収録されている。特に前半は素晴らしい。冒頭のヤマトホールディング社長との対談は、ヤマトがいかに震災後に素晴らしい貢献をした…

地球について、まだわかっていないこと

著者は麻布学園の地学の教諭。地震や、プレートの動く原因、地球温暖化等といった話題について、まだ科学的に解明されていない部分を丁寧に解説する。特に温暖化について、性急な結論を出していないところはよい。最終章は、必ずしも地学の範囲ではないと思…

新聞統合

四天王寺大学教授である著者が、東大に提出した博士論文をまとめたもの。タイトルから分かる通り、第二次世界大戦期の新聞統合をテーマにしている。著者の主張する通り、新聞統合は単に新聞社が国家による統制の犠牲になったというものではなく、新聞社を含…

先週から始まった、モッくん主演のドラマ「運命の人」を見ている。メディア論関係ではよく知られた、沖縄密約を暴いて裁判に掛けられた西山太吉氏をモデルとしたもの。西山氏にしてはちょっと格好よすぎる気もするが、こうした硬質なドラマが作られることは…

顔の科学

「科学」というタイトルがついてるけれど、必ずしも(狭義で)科学的な本ではない。医師である著者が、顔についての障害を負った人に会い、インタビューを行なった部分が中心。盲目となった人、顔に傷を負った人などだが、特に印象に残ったのは、「メビウス…

危いことなら銭になる

私は都筑道夫が好きなのだが、その『紙の罠』を映画化した作品。日活が昔の作品を新たに廉価でDVD化してくれたので、さっそく買った。紙幣用のスカシ入りの紙を強奪したギャング一味と、偽札作り職人の老人に絡んでうまい汁を吸おうとする「事件屋」たち…

音楽はなぜ心に響くのか

日本音響学会の編集する、「音響サイエンスシリーズ」の一冊(第4巻)であるそうだ。本書は、音響学、音楽学、社会学、心理学、情報学、医学といった分野から、専門家がそれぞれ一章を担当して、それぞれの学問分野の立場から、音楽が心に与える要因などに…

あやしい統計フィールドガイド

メディアに流れる統計にまつわるワナや紛らわしさを指摘する書。こうした本を読んだことのない人が初めて読むには悪い書ではないが、はっきり言って類書は多く(著者自身も『統計はこうしてウソをつく』『統計という名のウソ』などを書いている)、その中で…

「統治」を創造する

例えば先日取り上げた東浩紀の本は一種の極論だが、それと比べて堅実に「開かれた政治」を求めようとしているところは好感が持てる。ただ、論文集の常として、各章の出来は玉石混交で、編者二人のものや、第6章は参考になったが、中にはあまり意味のない章…

時刻表世界史

著者は時刻表のコレクターで、国内のみならず、海外の鉄道、航路、空路の時刻表を大変な数収集している。それを紹介しながら、当時の時代状況まで含めて解説してくれる良書。章構成は地域ごとで、第1章ではシベリア鉄道などを中心とする「欧亜連結とロシア…