2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

続 次の本へ 

神戸の書肆、苦楽堂による発行。51人によるブックガイド。なんと15年かけてシリーズ化し、1000通りの「本との出合い方」を届ける予定という。「パイプのけむり」みたいになるのかしら。是非私にも原稿を依頼して欲しいものだ。 ちなみに、私が最も読…

情報法概説

3人の共著による情報法の教科書で、類書と比べて最も優れているのではないかと思うのだが、唯一の欠点は、情報公開法についての記述が乏しくわずか1ページしかないこと。公文書管理法については記載すらない。児童ポルノについて10ページ以上書かれてい…

歴史認識とは何か

左右両派のイデオロギー的な見方に陥らずに、先の大戦をいかに理解するのか、外交史家の著者による本書は一つの答えとなるだろう。「あとがき」で書かれているように、諸大家の業績のパッチワークではあるけれど、その編集の仕方には紛れもなくオリジナリテ…

女子学生はなぜ就活で騙されるのか

就職活動中の女子学生が陥りやすいワナを解説。世間、親、大学、就活産業、企業とも、それぞれの論理で動いているわけで、必ずしも正しいことを言ってはいない。軽い本ですぐに読み終わる。まあ何事にも本音とタテマエがあり、それを見抜けないと人生は苦し…

ギリシア人の物語 1

名著『ローマ人の物語』の塩野七生女史が描くギリシア史・全3巻。本書のハイライトは言うまでもなくペルシア戦争。大群のペルシア軍を、ギリシアがいかに撃退したか。主人公はテミストクレスだが、クセルクセスなども厚く描かれている。

「読まなくてもいい本」の読書案内

複雑系、進化論、ゲーム理論など、現代の人文社会科学を刷新した概念をわかりやすく解説。橘さんはこういう啓蒙書を書かせると上手だが、勢いに乗って大学を批判するのは的外れだと思う。

故人サイト

個人情報保護法では基本的に死者の個人情報は保護されないことになっているが、近年では死者の個人情報も積極的に保護すべきとの意見が表明されることも多く、そういう人からすればこうした書も批判の対象になってしまうだろう。私は、確かに死者の名誉に尊…

活きる

1940年代の共産主義革命から毛沢東支配の50年代、60年代を生き抜いたある家族の生き様を描く。主人公は割りと大きな家に生まれたものの、ギャンブルで身を滅ぼし、家を取られてしまう。しかし「塞翁が馬」で、家を得た男は地主として処刑され、命だけは助か…

中曽根康弘

中曽根元首相本人をはじめ、多数の政治家へのインタビューや資料をもとに、大勲位政治家の実像を描き出す。「風見鶏」や「青年将校」と言われ毀誉褒貶激しかったけれど、一貫した情念で動いていたことが分かり有益だった。靖国神社参拝にこだわった背景には…

意思決定と合理性

ハーバート・サイモンの主著。文庫化されたことはよろこばしい。

日本人という鬱病

精神科医が書いた日本人論は有名なものが何冊かあるが、本書もそのカテゴリーに属する。タイトルから分かるように、(特に生真面目な)日本人は鬱病に親和性が高いというのが全体の主張。また、日本人の贈与は「金銭的」であり、すぐさま同等のものを返さな…

文系学部解体

横国の室井尚教授の著作。室井氏が所属するコースはまさに、文科省が解体しようとしているゼロ免課程。私がいる神戸大学発達科学部も同じように解体されようとしているため、まさに同感の個所が多かった。 「今回の国立大学の改革は戦前の体制への回帰」(p.8…

三つの棺

私はミステリファンだが、海外の作品は苦手でさほど読んでいない(クリスティは10冊くらい読んだ)、カーも「曲がった蝶番」に次いで2冊目。確かに傑作といわれるだけのことはある。

日本の地域間格差

企業立地や賃金、行政サービスなどにおける地域間格差をきちんとデータで示してくれるところは良い。ただ終章の「東京一極集中をやめる方策」となると、誰考えても妙案などないのかなと感じる。

物を作って生きるには

会社から独立し、自分でモノを作って暮らすという生き方を実践している人たちに対するインタビュー集。元は「Maker Pro」というタイトルの洋書だが、日本版には日本人インタビューも付されている。

なぜニワトリは毎日卵を産むのか

著者は生化学専攻、家禽を研究してきた静大名誉教授だが、本書は講義中の雑談を集めたもので、やや悪乗る気味だが、卵や鶏肉に関する小ネタが多数含まれている。鶏鳴新聞に連載されていたそうだ。そんな新聞あるのか。

神戸、書いてどうなるのか

ガイドブックにはあまり載っていない、神戸の生活者の裏スポットを紹介する。著者の安田さんは神戸生まれ。高校まで神戸に住んでいたが、高卒で入った会社を数ヶ月で辞めてしまったことをきっかけに、母のもとを離れて京都で一人暮らし、そして結婚を期に神…

インターネット法

インターネットと法律との関わりを、「青少年保護」「プライバシー」「わいせつ表現」「ヘイトスピーチ」「電子商取引」「知的財産」などテーマごとに、13人が一章づつ分担執筆した教科書。

小泉改革の政治学

郵政民営化で強権発動した印象の強い小泉首相だが、その政権の前半はむしろ、改革が思うように進まずに批判される場面も多かった。本書は副題に「小泉純一郎は本当に「強い首相」だったのか」とあるように、その実際を振り返り問い直すもので、不良債権処理…

地球はもう温暖化していない

ここ十数年間、温暖化は止まっているのに、IPCCは温暖化が進んでいるかのような偽装や強弁を行っている。むしろ寒冷化の方が心配されるのに、お人好しの日本は温暖化対策の名のもとに金をむしり取られている。このままでいいのかという強い危機感が感じられ…

『図書』のメディア史

京大のメディア史家、佐藤卓己氏が、岩波の有名なPR誌である『図書』を読み解く。特に、戦時中の岩波の動きが興味深い。委託販売制から注文買い切り制に移行したのは1939年、合理的な用紙の配分という「国家的見地」からの理由づけを行っていた。また、出版…

新・犯罪論

荻上チキ氏と、犯罪学の浜井浩一教授の対談。日本の犯罪件数が減少していること、犯罪統計は警察など当局のサジ加減で変化させられること、そしてメディアのセンセーショナリズムといった問題は、大学生・市民の基礎教養として身につけるべき事柄だろう。

大都市自治を問う

橋下大阪市政について問い直す書で、言論弾圧を受けた京大の藤井教授が中心に執筆している。橋下氏の強権的な姿勢はそれだけで嫌悪感を催すものだが、第七章にあるように高校入試制度をぐちゃぐちゃにしたことは受験生を酷く苦しめただろうなと推測する。

アニメ研究入門

アニメ研究の入門書だが、各章ごとに執筆者が違い、執筆の姿勢についてもややちぐはぐな印象を受ける。若手の執筆者が多いようだが、入門書については実績のある人を増やした方がよかったのではなかろうか。

大日本帝国の海外鉄道

大日本帝国の海外領土であった台湾、朝鮮、関東州、満洲、樺太、南洋の鉄道事業を振り返る。よく調べたものだ。貴重な写真も多数掲載されている。大連と新京(長春)法定時速80キロ超で結んだ冷暖房完備の特急「あじあ」がやっぱり素敵。 チチハルには同名の…

パクリ経済

ファッションや料理、コメディアンのネタ、手品のタネ、文字のフォントといった分野では、著作権の強化と関係なく創造性が開花している。知的財産権の強化策に対して疑問を投げかける本の一つだが、挙げられている事例が面白い。

「大学への数学」に挑戦 ベクトル編

ブルーバックス『「大学への数学」に挑戦』の第2作で、ベクトルの話題。基本的に高校の範囲だが、第11章では高校の範囲を超えて、平行六面体が語られる。もっとも、行列が高校数学の範囲外で言われても、私はピンと来ないのだが。

アンドロイドは人間になれるか

アンドロイド製作の世界的研究者である石黒教授の新著。ライターの飯田一司氏が参加している。 これまで製作してきたアンドロイドについての解説が中心だが、石黒教授がもともと絵画に熱中していたこと、「人の気持ちを考えなさい」といったお説教に強い違和…

京都の道はややこしい

京都の道路は、碁盤目ながら、それぞれに独特の名前がついている。本書のテーマはこの「京都の道」。平安京から、豊臣秀吉による改修などを経て、現在にいたる歴史の経緯から、京都の道のおもしろさを語る。