2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ウサギの日本文化史

ウサギの日本文化のおける位置づけを様々な角度から探ったもの。目次は以下の通り で、第一部は信仰が、第二部は狩猟が中心。第一部 兎神信仰の展開 第一章 ウサギの心象史 第二章 ウサギの信仰史 第三章 ウサギの神性 第四章 八月十五日夜の行事と兎神 第五…

サウンドとメディアの文化資源学

音楽学の大御所・渡辺裕東大教授の新作。これは名著。「旧制校歌」「民謡」「ソノシート」「鉄道音響」などを主題として、音楽と音楽ならざるもの、正調と非正調との境界を問い直すスリリングな試み。私も鉄道ファンの一人だけれど、鉄道に関する音響につい…

巨船ベラス・レトラス

筒井康隆御大の作品。『文學界』に2005年から2006年にかけて連載されていた。あの『大いなる助走』の続編的な色彩が濃く、文壇の裏側や、文学の置かれた状況などが語られて、そこまでは面白いのだが、最後になって作中に「筒井康隆」が登場し、北宋社という…

データ解析の実際

「多次元尺度法」「因子分析」「単回帰分析」「重回帰分析」にそれぞれ1章づつをあてて解説したもの。統計解析プログラムを使用することを前提としながらも、その背後の理論への目配りを怠らない良書。初心者には難しくて無理だろう。

日本人はなぜ存在するか

若手日本史学者の與那覇潤氏による、一般教養の「日本の歴史・文化」をまとめたもの。語り口こそソフトだが、一般教養の授業としてはかなりレベルが高いのではなかろうか。日本史でありながら、再帰性を初めとして、結構社会学的なタームや学者が頻出する。…

文藝春秋2014年の論点100

文藝春秋が例年出しているシリーズ。300ページあるがすっと通読できる。著作権の保護期間延長は是か非か、シェールガスに期待できるか、など、興味深い論点が多くためになる。著作権に関しては、若手の生貝氏と、玉井教授の対論。これは論理的にどちらが…

再起動せよと雑誌はいう

仲俣暁生氏が「Meets Regional」に二〇〇九年から連載した記事をまとめたもので、言うなれば「雑誌批評」。「ポパイ」「ブルータス」に始まり、「ユリイカ」や「東洋経済」「鉄道ファン」まで、幅広い雑誌が俎上に挙げられている。山岳雑誌の「ランドネ」と…

紅白歌合戦と日本人

著者の太田省一氏は、かつて「紅白」を日本人の「安住の地」であったと喝破し、紅白を中心にしながら戦後日本の歌謡史を通覧する。ちあきなおみの「夜へ急ぐ人」を、司会の山川静夫アナが「気持ち悪い」といったというエピソードには笑ってしまった。

メモリースケープ

人々が音楽と触れ合うさまをフィールドワークによって集めた著作。みすず書房の本としては、随分と軽め。

読む統計学 使う統計学(第2版)

なかなかよくできた統計学の教科書だが、この本であっても、確率・統計を初めて学ぶ人には難し過ぎるだろうと思う。入試で数学を勉強したはずの国立大学の学生であっても、統計にアレルギーを持つ学生は非常に多い(私立文系ならなおさらだろう)。日々困っ…

アンバサダー・マーケティング

会社を熱烈に応援してくれる顧客のことを「アンバサダー」と呼び、そのような顧客を養成する方法を書いた本だが、はっきり言って中身は薄い。

自閉症遺伝子

原著はフランス語。フランスのベンチャー企業が、「自閉症の遺伝子」を発見したとし、その遺伝子検査キットを売り出したのだが、著者はそれに疑問を抱き、各所を取材する、というもの。確かに遺伝要因もあるのだが、多数の遺伝子が絡まり合って発現している…

ラスト・タイクーン

巨匠エリア・カザンの晩年の作品。ロバート・デ・ニーロ主演。スコット・フィッツジェラルドが、ハリウッドのMGMの大物プロデューサーであったアーヴィング・タルバーグをモデルに書いた同名の小説が原作。モデル小説とはいっても、タルバーグの生涯とは…

世界はなぜ「ある」のか

世界はなぜ、無ではなく、何かがあるのかというのは、存在論と呼ばれる難問である。哲学ライターである著者は、この問いを胸に、多くの哲学者や作家と会って話をし、著者なりの見解を導く出す。ここで著者の答を書いてしまっては、これから読む人の興を削ぐ…

家族と社会の経済分析

第一部「社会構造の変化」、第二部「家族と共同体の経済分析」、第三部「社会政策のあり方」の三部構成。家族の問題、少子化の問題、ケアの問題などを、経済学をツールとして解決に導こうとする政策的含意に満ちた一冊。オリジナリティあふれる著作というよ…

地図はどのようにして作られるのか

これもタイトル通りで、元国土地理院測量部長の著者が、地図の作り方を解説する。航空写真って、まさに雲一つない晴れた日を待って撮るんだね・・・

エジプト革命

日本のニュースでは、アラブの春やエジプト革命の話題は断片的にしか伝えられないため、なかなか全貌や背景がつかみにくい。本書は、ムバラク政権、エジプト軍(陸軍とそれ以外の間にも対立がある)、イスラム同胞団、そして青年たちといった、さまざまな政…

独裁者に原爆を売る男たち

パキスタン人のカーン博士と言えば、各国に核兵器を売りさばいた「闇の商人」として知られているが、本書はこのカーン博士の行ったこと、および、彼の作った組織について、毎日新聞記者が鋭く追究したもので、巻置く能わざる好著。もともと祖国パキスタンの…

変革探偵小説入門

ミステリ研究で知られる谷口基・茨城大学准教授の著作。タイトル通り、変革探偵小説について紹介するもの。第一章で概論を述べ、江戸川乱歩、横溝正史、小酒井夫木わが夢野久作、橘外男などを論ずる。変格探偵小説の中にこそ、ミステリの可能性が隠れている…

『新青年趣味』第14号

新青年研究会の定期刊行物、といいたいところだが、前号(12号、13号は今のところ欠番)から8年経ってしまっているのはちょっと残念。8年って、ネコの寿命くらいの年月ではないのか。今回は特集記事はなく、各同人が論稿や動向、創作を載せている。

「いいね!」が社会を破壊する

これは一種の情報社会論であり、文明批評と言ってよいだろう。槍玉に挙げられているのはフェイスブックだけではなく、アマゾンであり、グーグルである。中心は、こうしたIT系の企業が成長したところで、雇用は増えず、結局は自分で自分の首を締める結果にな…

複眼凝視

著者は東京大学出版会で編集部長や営業部長を務め、重役まで上り詰めた。本書は、著者が『UP』に連載したコラムが中心だが、巻頭に書下ろしで、「学術出版における編集の仕事・営業の仕事」が付されていて、これが面白い。昔の学術書の編集が、いかに牧歌…

エロス+虐殺

松竹ヌーヴェルバーグの一角を占める吉田喜重監督の1970年の映画で、実はプライバシー訴訟関係でも有名。大杉栄が刺された「日蔭茶屋」事件を扱っており、刺した当人である神近市子(映画中では正岡逸子と名前を変えてある)がプライバシーの侵害で訴え…

大人もハマる地理

中学校の社会科教師を長く務めた著者が、地理の面白さをクイズで伝える。「一級河川」と「二級河川」の見分け方とか、全く知らなかった・・・

「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方

プロップの「物語の構造分析」を基に、良いストーリーの筋立てを「13フェイズ構造」にあるとし、様々な映画をこれにあてはめて批評する。主人公は「葛藤」を経て「成長」しなければならないらしい。『悪人』の主人公を柄本明だと喝破するなど面白いが、そ…

英語教育、迫り来る破綻

英語教育の専門家4人による共著。「入試へのTOEFL利用」「小学校英語の教科化」「大学の授業の英語化」といった、文科省などが進めようとしている「グローバル化」を中心とした英語教育に、論理的に完膚なきまでに反論する。

戦争のかたち

「六本木クロッシング」展で見て気になり、本の方も手に取ってみた。トーチカや砲台、掩体壕といった戦争の遺構が、もう敗戦から70年近く経つのに、全国のさまざまな場所に残っているのだ。東京湾に人工要塞島が三つ作られているという事実にも驚く。

日本人には二種類いる

1960年を境に、日本人の生育環境は一変したため、それ以前と以降とで日本人の性質が変わってしまった、と説く。「子供中心」「インスタント」「テレビ」「肉・油脂・パン食」「カップ麺」「民主化」「女性優位」などが立項されており、行き当たりばった…

世界を変えた100日

ナショナル・ジオグラフィックの本は良いものが多い。本書は、1851年の「第一回万国博覧会」に始まり、世界近現代史上の重要な事件を写真に語らせる。戦争や暗殺といった血なまぐさいものが多いけれど、「大西洋横断飛行」「DNA分子構造発見」「プレ…

「漢検事件」の真実

いわゆる「漢検スキャンダル」を読売新聞が報じたのが二〇〇九年。あの時は、漢検の創設者であった大久保昇およびその息子の浩に大変なバッシングが行われた。しかし著者は、いわゆる「漢検スキャンダル」の背後には、漢検でおいしい思いをしようとする、さ…