2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

毛沢東の大飢饉

中国共産党の悪行を暴いた本は既に多数出ているが、本書もその一つで、その悲惨さに涙を禁じ得ない。「大躍進」時代の、毛沢東の身勝手さ、そして、餓死し、幹部に暴行され殺される民衆の姿が描かれる。

リアルタイムメディアが動かす社会

明治大学での講義録を本にしたもので、八木啓代、常岡浩介、上杉隆、岩上安身といった人々が執筆しているのだが、記述にとても迫力があり、これで1400円というのはお買い得だた思う。特に前半がよい。検察やマスメディアの悪が完膚なきまでに批判されて…

IBM 奇跡のワトソンプロジェクト

私は知らなかったが、米国には「ジョパティ」というクイズ番組があるそうだ。IBMの人工知能研究者たちが、その番組に人工知能を出場させ、人間のチャンピオンを打ち負かすまでを描いたノンフィクション。チェスのチャンピオンであるカスパロフを「ディー…

誤訳の典型

受験参考書などで名高い中原道喜氏の著作。別宮貞徳氏の翻訳書批判などと比べて極めて上品、かつ周到に出来ている。ほとんどの事例が文学作品なのは一長一短だろう。人生の妙味を味わわせるという点ではよいのだが、文脈依存性が高く、小説などのごく一部を…

風邪気味だが一日中大学院入試関係の仕事に忙殺された。つらい。

古典日本語の世界 2

東大駒場の国文・漢文の先生方が作った本の第2巻。冒頭で齋藤希史氏が、白川静の学説(というより、白川ブームか)に対して苦言を呈しているのは注目に値する。

ソーシャルリサーチ

社会調査法について、50のキーワードを解説するもの。辞書的に引くにはいいかもしれないが、通読する必要はなかろう。

災害ユートピア

災害はもちろん避けられるなら避けたいものだが、災害時にはなぜか、普段の日常では存在しない、人と人同士の温かい交流や相互扶助が表れる。それが邦題の「災害ユートピア」(原題は「地獄に表れるパラダイス」)。著者は、サンフランシスコ地震や、ニュー…

キャタピラー

江戸川乱歩の「芋虫」を、若松孝二が映画化したもの。はっきり言うが、若松孝二はダメな監督なのではないか。なぜか戦時中と思えない現代を思わせるような場面があったり、ショッキングな記録映像を不自然に挿入していたり、また、結末を変えてしまっていて…

リトルピープルの時代

宇野常寛氏の話題を呼んだ文芸批評。村上春樹の「1Q84」読解が中心だが、中でも「ビッグブラザー、リトルピープル」および、氏のエルサレム賞受賞講演における「壁と卵」という二つの比喩を軸としている。「ビッグブラザー」は権力者の謂いであり、リト…

犯罪

ドイツの弁護士兼作家であるフォン・シーラッハの短編小説集。おそらくシーラッハ自身の経験を基にした、事件および裁判がモチーフとなっている。長年連れ添った妻を惨殺した「フェーナー氏」、強盗事件の悲劇的な末路を描く「タナタ氏の茶碗」、金持ち一家…

この前ラジオでたまたま聞いて驚いた曲です。

社会科学者のための進化ゲーム理論

タイトル通り、進化ゲーム理論の解説書。知的な好奇心を大いに満足させてくれる。私もこれを使いこなして理論構築をしてみたいものだ。

司法政策の法と経済学

刑事政策の本かと間違えて買ってしまったのだが、中身は面白かった。著者の福井氏は元建設官僚の大学教授だが、それだけに、官僚機構の病理を手厳しく批判している。 テーマはいくつかにわたるが、まず、司法試験など法曹養成制度が批判される。合格者を絞る…

盆踊り

こちらの副題は「乱交の民俗学」。下川氏の本は、かつての日本の「おおらかな性風俗」を強調するものが多いが、本書もその一冊で、盆踊りというのは乱交の場であったとまで言ってのける。現在でも、そうした習俗が確認できる場所が少なくとも5ヶ所あると言…

売春未満

はずみで図書館から借りてしまったが、読んで気が滅入る本ではある。副題に「新・名前のない女たち 素人女性偏」とあるように、著者は「名前のない女たち」で企画AV女優たちを取材した中村淳彦氏。中村氏が、『ストリートシュガー』なる素人ヌード雑誌に応…

赤字ローカル線は今 2

もう第2巻が出ている。地域別3部構成で、第1巻の方では取り上げられなかったJRおよび会社線のローカル線区が30程度載っている。冒頭の特集は神戸。山陽本線の支線である「和田岬線」と、神戸電鉄の粟生線で、どちらも利用客はそれなりにあるのに、廃…

小布施ッション

obsessionというのは強迫観念など、決してよい意味の言葉ではないと思うのだが、それを逆手に取り、セーラ・カミングス氏は「小布施ッション」(obusession)という言葉を作って、月一回、文化人等を呼んだサロンを開催してきた。その2001−2002年の記…

死のテレビ実験

スタンレー・ミルグラムが実施した「アイヒマン実験」は、人がいかに「権威」に弱いかを明らかにして衝撃を与えた。この実験の追試は既に何度も行われているが、著者たちは特にテレビの持つ魔力を測定するため、この実験をテレビ番組の予行演習という形で行…

社会はいかに記憶するか

英国の、在野の社会理論家の著作で、個人を越えた集団の記憶をテーマとするものだが、正直なところあまり得られるものはなかった。

コラプティオ

昨年かかれた小説を、東日本大震災後に改稿した真山仁氏の小説。震災後に原発を世界に売り込もうとする「カリスマ総理」宮藤と、政治学者の卵ながら総理側近となる白石、白石の高校時代の同級生の新聞記者の神林、宮藤の秘書の田坂、宮藤の元部下ながら宮藤…

弥勒の掌

著者の我孫子武丸氏について、私はあまり詳しくない。綾辻行人や法月綸太郎と同じように、京大推理小説研究会出身の俊英であると聞いてはいたが、その作品はこれまで「8の殺人」「0の殺人」「殺戮にいたる病」の3冊しか読んでいない。この中で、「8の殺…

韓国における情報化と縁故主義の変容

実は私は韓国のことはよく知らないのだが、情報化に関連する本なので手に取ってみた。著者の金相美氏は梨花女子大卒業後、UCLA及び東大大学院に留学、現在は名古屋大学で教鞭を執っている。 さて、本書は、韓国における縁故主義の中でも特に学縁(高校や…

尤をめぐる謎

先日ゼミで統計の教科書を学生に読ませていて、「最尤値」「尤度関数」の「尤」の字が読めないのにショックを受けたが、考えてみればこの字はほぼ統計学の教科書以外ではお目にかからないのだから、まあ仕方ないかと思い直した。 この「尤」の字の字源につい…

日本社会学会2日目。姫路から千里山まで通うのはけっこうキツイ。午前中は「変貌する沖縄離島社会」セッションへ。午後はシンポジウム。

ひきずる映画

フィルムアート社の新たなシリーズCineSophiaの第1巻。編者の村山匡一郎氏によると、ひきずる映画とは、「癒しの映画」の対極にあって、「われわれの心に鋭い棘のように突き刺さり、その痛みによって世界を新たな視線で見ることをうながす」ような映画。4…

血塗られた慈悲、笞打つ帝国。

副題は「江戸から明治へ、刑罰はいかに権力を変えたのか?」。江戸幕府は、統治のための手段として、一面では鋸引きや磔などの厳しい刑罰を設け、他方では「お目こぼし」をすることで「仁君」のイメージを演出していた。そうした戦略を米国人の学者(著者は…

日本社会学会に出席するため、関西大学へ出向く。

報道災害 原発偏

原発で一層明らかになってしまった、この国のマスコミ、社員「ジャーナリスト」の堕落ぶりを、上杉隆、烏賀陽弘道という二人の無頼派ジャーナリストが歯に絹着せずにぶった切る対談。読んでいて憂鬱な気分になる。

専門職の転職構造

大手家電メーカーのA社(松下だろうか?)を中心に、ローカル・ミドルのB社、基礎研究のC研究所を調査対象として、専門技術者の意識や転職について調査した博士論文。技術者は手に職を持って転職を繰り返すというイメージがあるが、実際には流動性は低いこと…