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先月に触れたシャマユーの博士論文 ふだんの生活で意識することはあまりないけれど、私たちが享受している医療の進歩の影には、人体実験に供された多数の人々がいる。本人が納得しているならまだましだが、必ずしもそうとは限らない。本書は、そのような医学…
著者はVR研究の第一人者で、フェイスブックのザッカーバーグも著者の研究室を訪れてVRシステムを体験した。私は実際に本格的なVRシステムを自ら体験したことはないが、本書を読むだけで、それがいかに臨場感があり、有効(危険な任務のシミュレーショ…
映画監督リドリー・スコットの家でハウスキーパーを務めていた著者が、スコット家での経験や、その他イギリスで感じたこと、考えたことをまとめたエッセイ。 著者は割とぶっとんだ経験の持ち主で、姫路生まれ、調理師となり、料理修業のためヨーロッパに渡る…
著者の竹内啓氏は日本を代表する著名な知識人の一人だから、もはや説明の必要はないのかもしれない。若くして大著『数理統計学』を表し、東大経済学部教授を務めた。80年代に岩波書店から『無邪気で危険なエリートたち』『情報革命時代の経済学』を出版、こ…
「黒子のバスケ」脅迫事件(「黒子のバスケ」の連載中止や関連イベントの中止を求めて、掲示板での脅迫や、上智大学での毒ガス発生や、食品への毒物混入)の犯人が自ら書いた手記。一読して分かる通り、相当な性格の歪みもあるけれど、検事が漏らしたとおり…
きたたんこと北田暁大・東大教授による時評集だが、何と言っても読みどころは上野千鶴子氏の文章を徹底批判した第1章「脱成長派は優し気な仮面をかぶったトランピアンである」だと思う。元となった上野千鶴子氏の新聞記事は話題になったので私も読んだが、…
副題は「日本を支配する600人の野望」。キャリア警察官の「出世」について詳述してある。特に第2章、山口敬之・元 TBSワシントン支局長によるレイプ事件をもみ消した中村格について詳しく書かれているところは必読である。中村はそれだけでなく、同じT…
随分と長いタイトル!タイトル通り、人類学者の著者が、ボルネオのプナン族のもとでフィールドワークをして考えたことがエッセイ風に記されている。 このプナン族、日本人というか、先進国の人々とは考え方が大きく違う。まず「反省」ということをしないし、…
「はじめての沖縄」といえば岸教授のこの本。便利なガイドブックでは全くなく、むしろ沖縄に向き合うわれわれの姿勢を問題にしている。 私が行っている地域情報化政策に関する調査は、個人と向き合うというよりは自治体を対象とするものだが、それでも「どの…
河野勝・早稲田大学教授の論文集。なぜ安倍内閣の支持率は何度も復活するのか、東日本大震災の被災者にどのような態度を取るのが正しいのかといった思索が展開されるが、もっとも興味深かったのは、憲法を扱った第九章「なぜ憲法か」だ。憲法と民主主義との…
ジェイン・オースティンの小説からゲーム理論を解説する異色の理論書。ゲーム理論といっても、おなじみの「利得行列」は第2章に数枚出てくるだけだし、登場人物の行動を戦略という点から読み解く色彩が強い。立場の強い人間は、相手の気持ちに注意を払わな…
東京大学に提出された博士論文(を加筆訂正したもの)。日本人にとって血縁がどんな意味を持つのかという問題を、養子をとった親、ならびに、養子自身へのインタビューから明らかにしようとするものだが、問題の複雑さが見えたというところで終わっている。…
プラットフォームを築き上げて成功した企業の紹介が主。中でも、アリババが中国でいかにイーベイ等のライバルを蹴落としたの説明は興味深かった。
邦題通り、質的研究のための各種の理論をやさしく解説する。原書は2005年刊行だが古さは感じない。「シンボリック相互作用論」「解釈学」に始まり「ポスト構造主義」「ポストコロニアリズム」まで。ギデンズとブルデューを論じた第11章「構造化と実践…
タイトル通りなのだが、地図好き、地理好きには大いに楽しめる。第1章では地形、第2章は歴史、第3章は交通、第4章は産業がテーマ。南茅部から出た土偶を「茅空」と呼んでいるとは知らなんだ。所得ベスト1が猿払村というのも意外。
人気アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」で、ほとんど同じ内容を8回に渡って放送し、賛否(というかほとんど否)を呼び起こした「エンドレスエイト」。私はこのことを知らなかったくらいだが、著者の三浦俊彦氏は、分析哲学という鋭利な武器を使って、この「エンド…
英語でべらべらしゃべるのがカッコイイという軽薄な思いから英語入試を変えようとする不勉強な政治家たちと、それに追従する(せざるを得ない?)文部省、そして、審議会で暗躍する英語試験業界関係者たち。著者の阿部公彦・東大准教授が言うように、この改…
クリオ城のルーディメント王子は勉強嫌いで、邪悪な魔法使いに唆されて呪いの言葉を発し、家庭教師のパウリーノを黒猫に、他の召使たちを人形に代えられてしまう。召使たちは命令に従うことはできるものの、人間の意図を推し量ることはできない。そこへ、王…
著者は元・辞書編集者だが中国古典に造詣が深く、本書でも、「霧」のところで出てくる張楷(五里霧を操る)と裴優(三里霧を操る)の対立や、地方長官として蓄財に励んだために妻に去られた荅子の話など、いろいろと面白い。
タイトル通り、地政学を応用して日本史を読み解くものだが、特に、気候の温暖化・寒冷化現象が、西国と東国の力関係に影響したというのが興味深い(温暖化は現在だけの話ではない)。ところどころ偏見混じりではないかと感じる部分もあるが・・・。例えば、…
タイトルが示す通り、日本において無戸籍の人が被る問題とその原因、そして戸籍とは何か、なぜ戸籍で差別が起きるのか、それから、蓮舫氏で話題になった多重国籍や重婚の問題まで、幅広く論じられている。特に印象に残るのは、樺太から引き揚げてきた人の苦…
タイトルにもある通り、大正7年に刊行された文部省検定済の中等教育程度の地理教科書をほぼそのままの形で復刻したもの。中身は日本の地誌が中心だが、朝鮮、台湾、樺太も含まれる。順序としては、まず帝国の中心の関東地方に始まり、続いて奥羽(東北)、…
われわれが生きる「デザインされた世界」を、店員によるオーダー処理や、コスプレ、プリクラ、童貞などをテーマにして心理学的に考察する。
名著「基本統計学」などで知られる統計学者が、歴史の方へと歩みを進めた。福沢諭吉、大隈重信、杉亨二、阪谷芳郎などが論じられるが、中でも、森鴎外が加わった、「統計」という用語法に関する論争が詳しく紹介されていてとても面白い。
早稲田大学の長谷正人教授による映像論集。書き下ろしがないのが残念ではあるが、著者が各所で書いた17本の論文・エッセイがほぼそのままの形でまとめられている。ヴァナキュラー(土着的な)モダニズムというのは、元はミリアム・ハンセンの用語法だそう…
著者は弁護士かつ、愛知大学の法科大学院の教授を勤める。その経験から、法科大学院がいかに失敗したのか、そして、どのように改革すればよいのか、説得力のある提案が語られる。しかし、中坊さん(弁護士会長時代に法曹人口増加に舵を切った)って、功より…
この本は素晴らしかった。清少納言といえば、知的で天真爛漫といったイメージを私は持っていたが、本書で描かれる清少納言はまったく違う。何よりもまず中宮定子を支えるために枕草子を執筆、著者が精緻に読み解くところでは、清少納言は有名な歌人の家系に…
新自由主義が民主主義を掘り崩すさまを描き出す。特に第4章で、イラクの戦争と旱魃の乗じ、それまで自立的に行われてきたイラク農業に対して、米国のアグリビジネスが襲い掛かり、結局モンサントの種子がなければ農業を営めなくさせてしまうさまは衝撃的と…
データの研究への活用が主題で、特に第6章「社会科学におけるデータの学問」は、インターネット研究に多くの紙幅が割かれていて有益である。ただ、有名な「マタイの法則」を「マシューの法則」と訳してはダメだ。
タイトル通り、地理学の入門書。主として大学生向けだと思うが、意欲ある高校生にも進められる。ただ、内容は自然地理学に偏していて、人文地理学については手薄。