2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

インターネットは自殺を防げるか

東京大学に提出された博士論文。著者自ら自殺対策のサイトを立ち上げるなど、アクション・リサーチの手法で行われた研究。対象が対象だけに、もちろん様々な限界があるのだけれど、このような内容の研究が博士論文として評価されているということは今後の研…

「ローマの休日」を仕掛けた男

脚本家として精力的に執筆をしていたところ、赤狩りの「ブラックリスト」に載ってしまったため、キャリアの半ばで強制的に「雌伏」を余儀なくされたダルトン・トランボの評伝。邦題では有名な「ローマの休日」が強調されているが、原題は「ダニエル・トラン…

Nothing to Hide

最近「understanding privacy」の邦訳がみすず書房から出た、米国の法学者ダニエル・ソロブの著作。「セキュリティ」対「プライバシー」という二項対立や、それに基づいてセキュリティのためにプライバシーを犠牲にすることを主張する人々を批判、国家が人々…

近代と未来のはざまで

中部大学の付属機関である「中部高等学術研究所」で行われた「新未来研究会」での研究から生まれた著作。編者の一人の桃井治郎氏が、第一部で「未来観の変遷」をレビューしている。未来学者は、初期の情報社会論者と人脈的にかなり重なっているので、その終…

検証・学歴の効用

学歴がどの程度有用であるのか、実証研究で明らかにしようとするもの。大学に進学することにどの程度のメリットがあるのか、だけでなく、女性にとって四大・短大・専門学校卒のメリットを比較した部分などは、とても興味深く読むことができた。また、第三部…

beautiful islands

地球温暖化による海面上昇で真っ先に沈没するとされるツバルを初め、ヴェネツィアやアラスカの状況を描いたドキュメンタリー。もっとも、タイトルに言うほど「ビューティフル」でもない。温暖化で島が沈んでしまっては確かに当事者には大問題だが、私自身は…

糞袋の内と外

なんともショッキングなタイトルだが、中身はロボット学で著名な石黒浩教授のエッセイで、しかもツイッターでのつぶやきを基にしたものという。研究者としての覚悟がひしひしと伝わってくる。もっとも、人間が糞袋という表現はちょっと変ではある。トポロジ…

現行戸籍制度五〇年の歩みと展望

「現行戸籍制度」の50周年を記念して、平成11年に多数の執筆者の手によって作られた論文集。1000ページを超える大著で、中身は玉石混交。興味深い論文もあれば、つまらないエッセイもあれば、戸籍と関係ない家族法関係(例えば相続について)の文章…

平成の大合併と地域社会の再編・活性化:岡山県の事例

市町村合併を歴史的に論じた序編と、津山市を論じた第1編、吉備中央町を論じた第2編からなる。津山市と吉備中央町について詳しく知りたい人には最適の本だろう。なにせこの1市1町に、大判約500ページの紙幅が割かれているのだから(津山三十人殺しな…

地方にこもる若者たち

若手社会学者の阿部真大氏の6冊目の著作。「現在篇」「歴史篇」「未来篇」の3部構成。現在篇は、岡山近郊の若者を対象とした調査結果を基にしているが、中心はやはり、彼らの余暇の過ごし方の中心に「イオンモール倉敷」がある、というところだろう。相当…

スルース

老いた人気犯罪小説作家(マイケル・ケイン)の邸宅を、若い俳優(ジュード・ロウ)が訪ねるところから話が始まる。俳優は、あんたの奥さんと愛し合っているから、離婚してくれと談判する。老作家の方は、それならうちの金庫にある宝石を「盗め」と持ちかけ…

マイナンバー

いずれもマイナンバー制度についての本だが、前者は批判、後者は賛成の立場から書かれている。参考にはなるが、両者とも法案通過前に出された本なので、細部においては変わってしまったところもあるだろう。要注意。

共通番号制のからくり

文学と映画のあいだ

東大で行われた連続講義「文学と映画」の書籍化。英仏独米中露、そして南米と、各国文学を専門とする教師が、好みの映画を取り上げて原作となっている小説との関わりで論じる。編者の野崎歓氏は、映画化することは、文学の「翻訳」の一種であると言う。それ…

四畳半神話大系

このアニメ、深夜枠で放送していたそうだが、リアルタイムで見たことはなかった。京都の大学に入学した「私」を主人公にした、パラレルワールドもの。失敗すると、時間が戻るのだが、その果てに何があるのか?モデルは京都大学吉田寮なのだろうな。駒場寮も…

ネットワーク中立性の経済学

インターネットにおいてはさまざまな「タダ乗り」が発生しやすく、かつ、動画サイトの興隆は、余裕のあったはずの通信容量をひっ迫させかねない。誰にとっても快適なインターネット空間を実現するには、どのような費用負担で制度設計をしたらよいのか、様々…

オックスフォード・サイエンス・ガイド

英国を代表するベテランのサイエンス・ライターが、最先端の科学を一人で解説する浩瀚な著書。タイトルは、原著がオックスフォード大学出版会から出されたため、オックスフォードを冠しているだけで、別に同大学の研究に限って紹介しているわけではない。7…

ドキュメンタリーの語り方

ビデオジャーナリスト歴20年を超える著者が、映像の理論から実際の映像制作まで、幅広く語り尽くす良書。ショット分析表などはすぐにでも役立つ。

現代本格ミステリの研究

私は比較的ミステリはよく読んでいる方だが、本書の前半で取り上げられている麻耶雄嵩氏の作品は読んでいなかった。読まずに言うのもなんだが、ミステリ作家というものは、特に知能を振り絞らなくてはならない職業だと実感した。取り上げられている作品は『…

統計データで読み解く移動する人々と日本社会

こちらも広い意味では統計に関係する書。学生向けに、日本に在住する外国人に関する統計を対象としながら、「論理数学的知能」の向上を目的とする。川村千鶴子氏の編著となっているが、実際の執筆者は別にいる。

それ、根拠あるの?と言わせないデータ・統計分析ができる本

ビジネスマン向けに統計の基本を教える良書。平均、標準偏差から相関分析、単回帰分析までだが、実際に使うのは確かにこの辺までなのだろう。

知民か和民か

日本を代表する情報社会論者の公文俊平氏が、以下のようなツイートをなさっていた。 鈴木寛(の支援者)対山本太郎(の支援者)の「対決」は、産業社会の「知識人」・「市民」対情報社会の「知民」の競合のようにも見える。嫌な感じだが。 情報社会の「知民…

関西学院大学で担当している、「プライバシーの社会学」の試験日。終わった後は、KAVCで映画『選挙2』を見た。想田和弘監督が、再び川崎市議会選挙に出馬した「山さん」こと「山内和彦」氏に密着するのだが、今回山さんはほとんど選挙活動を行わない。…

アニメ・マシーン

カナダのマギル大学教授である著者(しかも元は生物学や海洋学を専攻していらしい)が、縦横に日本のアニメやアニメ論(東浩紀やら斎藤環など)を読み解いていることに驚嘆する(むしろ訳語にはいくつか疑問がある)。後半に論じられている「ちょびっツ」と…

数学の想像力

私は数学や数学史の本は結構たくさん読んでいるので、あまり目新しいこともなかったのだけれど、初学者には良いかも。特に難しい数式などは出てきません。数学の正しさには普遍性があるが、その正しさを留保・確信させる方法には人間性が色濃く反映されてお…

参議院選挙の日。選挙区で私が票を入れた候補者は残念ながら落選してしまいました。

ボランティアバスで行こう!

ボランティアへのいざないのようにも見えるが、中身はミステリー小説。と言っても、殺人事件が起きるわけではなく(津波では亡くなるけれど)、ごく日常的なナゾを扱っている。読後感も爽やか。

科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳

これは大学生用の教材だが、大変よくできている。「遺伝子組み換え作物」「脳神経価格の実用化」「喫煙」「乳がん検診」「血液型性格診断」「地球温暖化」「宇宙科学への投資」「地震予知」「動物実験」「原爆投下」など、いずれも一筋縄では解決の出ない問…

貧困について

幸運なことに、日本では「殺人事件」は数少ない。その数少ない事件が大々的に報じられる。中でも、例えば秋葉原通り魔事件のように、まさに現代を象徴する事件となると、多くの人が論じたくなるのだろう。そして私もその一人だ。 さて、最近盛んに報じられて…