2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

数の魔力

ドイツの数学者が書いた、数学に関する啓蒙書。特に、バッハに見る数学と音楽のつながりや、ライプニッツに見る数と論理(2進法だけでなく3進法の話も出てくる)など、歴史上の人物に即して語られている。

音響メディア史

音響メディアの歴史についてよくまとめられた教科書。類書が少ないだけに、もっと冒険的な記述が欲しかったと願うのはないものねだりだろうか?

顔の百科事典

「事典」となっているが、50音順小項目事典ではなく、むしろ体系的な、通読のための「顔入門」と言える。よい顔を作るために、特によく噛むことの重要性が各所で強調されている。

子どものまま中年化する若者たち

精神科医が、豊かな社会となった現代の若者の病理を描く。「中年化」とは誤解を招く言葉かもしれない。まず安定を求め、守りに灰っているありさまを著者はこう呼ぶ。とはいえ、それが悪いことばかりでないことは著者も付記している。

地図から消された島

この本の舞台となっている大久野島は、今ではウサギと国民休暇村の島だが、第二次大戦中はここに毒ガス工場が作られ、動員された若者たちがその製造過程で多く被曝し、また、中国戦で使われて多くの中国人を苦しめた。読んでいて辛くなる物語だが、戦争とは…

無限小

数学における「無限小」という考え方は。のちに微分積分学を生み出すきっかけにもなるのだが、当初はキワモノ概念であり、かつ、イエズス会などから危険思想のように見られていた。数学と宗教との確執を、ホッブズなども脇役として登場させつつ、生き生きと…

タイム・イン・パワーズ・オブ・テン

イームズ夫妻による有名な映画「パワーズ・オブ・テン」は、宇宙から原子レベルまで「大きさ」に焦点をあてて「10のべき乗」ごとに描いたものだが、それに影響を受けた本書は、時間の長さを10のべき乗で解説する。原子の半減期もやたら長いものと短いも…

地方都市を考える

山形市(なぜか本文ではY市と書かれている)を対象に、地方都市の生活を描く。「まちづくり」が学校時代のカーストの再生産につながっているという指摘には納得した。地方の資産家層が資産防衛のために、首都圏のマンションを買いあさるという事実にも嘆息…

エニグマ アラン・チューリング伝 下

上巻を読んでから多少時間が空いてしまった。下巻ではチューリングの悲劇に向けて話は収束してゆく。上司であるチャールズ・ダーウィン(進化論で有名なダーウィンの孫)との確執や、同性愛行為の発覚と裁判、薬物治療、そして自殺。長生きしてくれたらもっ…

福岡に行ってオープンデータ・シンポジウムを聴講してきた。三菱総研が本気でビッグデータ、オープンデータ市場を狙いに行っているのではないか・・・坂村健理事長の話は面白かった。

AVビジネスの衝撃

約30年のAV産業の歴史を振り返る。VHSやベータの企業が自陣営のために村西監督に裏ビデオの作成を依頼した話など。当初、アウトローの巣窟であったアダルト産業が、時代を経るにしたがって近代化され、普通の人が働く場になっていったことがよく分かる…

ライバル国からよむ世界史

私も大学入試では世界史を選択したが、ふだんの生活に紛れて細部はだいたい忘れてしまった。本書は、独仏をはじめ、イランとイラク、ロシアと中国など、ライバル国の関係から歴史を概説するもので、平易かつ興味深く執筆された良書と思う。

ニュクス 1

堀之内出版から今年の初めに創刊された思想誌「ニュクス」の第1号。『現代思想』が時事的な方向に移動した穴を埋めようとするものだろうか。この時期に思想誌を創刊するとは大変な勇気だ(刊行頻度は高くないようだが)。前半は「エコノミー」や「経済」概…

他人を非難してばかりいる人たち

幻冬舎のインターネットマガジンPlusでの連載をまとめたもの。まあ中身はタイトルから連想する通り、やたらネットなどで他人を叩く日本人の病理を描いたものなのだが、みのもんたや松岡正勝まで擁護しているのは、私には違和感がある。ネットでバッシングさ…

奇跡の海

ベスが結婚したばかりの夫は、石油掘削現場で働いている時に、不慮の事故で全身不随となってしまった。夫は妻に、別の男と寝て、それを報告してくれと言う。ベスは戸惑うが、自らの「神」と対話する中で、その願いをかなえることに決め、危険な船へと体を売…

肉弾

岡本喜八監督作品。先日テレビで紹介されていたので見てみた。若き寺田農が、特攻隊となった学徒兵を全裸で熱演、大谷直子がその束の間の恋人を演じる。戦争の滑稽さを笑い飛ばす。

コミュニケーションのデザイン史

日芸での講義禄をまとめたもの。地図史や美術館史を含む、やや異色なメディア史の教科書とも言える。図版が多くて見ていて気持ちがいい。

セカンド・マシン・エイジ

そういえばマーク・ポスターには「セカンド・メディア・エイジ」という著作があったな。 こちらは『機械との闘争』のブリニョルフソンの新作。ただ、厚い割には陳腐なことが書かれているともいえる。「最頻値」を「最瀕値」と書くのは訳者が悪い。

ソーシャル物理学

『正直シグナル』の著者による新作。ビッグデータを用いて社会を科学する手法をここではソーシャル物理学と呼んでいる。社会学もこの辺を取り込まないとやられてしまうかもしれない。 個人的に興味深い論点は、住民の間のエンゲージメント(関与)が最大化す…

奇妙なナショナリズムの時代

伊藤昌亮氏のネトウヨ論が面白い。嫌韓というアジェンダは朝日新聞とフジテレビの両方を同時に攻撃できる道具だというのである。とすると読売や日経は攻撃されないのか・・・

メディアと自民党

自民党はどのようにメディアを利用してきたのか、気鋭の情報社会学者が外部から探りを入れる書。自民党も決して成功ばかりしてきたわけではないが、民主党が下手を打ち過ぎてしまったからな・・・

歌うネアンデルタール

著者は考古学者で、自称音痴(!)だが、ある時音楽の重要性に目覚め、ネアンデルタールの時代から人類は、音楽と言語の起源「Hmmmmm」を使ってコミュニケーションをしていたという仮説にいたった。

正直シグナル

人間は言葉でもしぐさでも嘘をつくことができるが、本当の心が表れてしまう「正直シグナル」として、著者は影響力、ミミクリ(模倣)、活動レベル、一貫性を挙げ、それをセンサーで測る。本心の監視につながる可能性もあるちょっと怖い研究だが面白い。

人間科学におけるエヴィデンスとは何か

例えば精神分析や臨床心理学など、人間を直接の対象として扱う「人間科学」には、客観的な証拠を挙げるのが難しい。しかしそうした質的な研究も、重要性においては劣らないことを、現象学などを援用して主張する。

明日のプランニング

グルメサイトなどを主宰する「さとなお」としても有名な著者が、情報過剰(情報が砂の一粒と化したという意味で「砂一時代」と著者は呼ぶ)の中でいかに広告をプランニングするか、ネットに浸っている世代と、いまだマスメディア中心の世代とでは別々の戦略…

[book:音楽と言語

タイトルから一般的な書かと思ったが、そうではなく、ミサについての専門書で素人が読んで分かるものではない。著者のもとに留学していたという理由で、なぜか精神分析学の木村敏氏が訳している。

十三億分の一の男

今朝はJRの事故で通勤電車に閉じ込められてしまい、その時に読んだ。朝日新聞記者が、現代中国における権力闘争を、綿密な取材で克明に描く。江沢民と胡錦濤との20年にわたる権力闘争と、その間をついて、本命と言われた李克強を抑えて最高権力者になっ…

「30万人都市」が日本を救う!

田中秀臣、飯田泰之、麻木久仁子氏の鼎談。僻地ではなく地方核都市への人口集中と資本投下を主張し、消費増税が貧困層を直撃したことを批判する。後者については賛成だが、前者については必ずしも説得されなかった。

その可能性はすでに考えた

井上真偽氏の第二作。登場人物はライトノベルか劇画のように戯画化されている。超絶美男子の探偵が、ある教団において一人の少女以外みな死んでしまった事件を「奇跡」である(論理的に証明がつかない)ことを証明しようとするという奇抜な構成。推理小説に…