2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

妖女のねむり

泡坂妻夫のミステリの一つ。泡坂氏には意表をつく発想の傑作が多く、私もむかし、かなりの作品を読んだ。代表作と言ってよい「乱れからくり」、細かな伏線の積み重ねが美しい「11枚のとらんぷ」、亡くなったはずの男がよみがえる「湖底のまつり」、傑作『…

安倍政権の罠

タイトルからは、安倍政権への厳しい批判が書かれているものと想像してしまうが、むしろ本文はきわめて冷静・抑制的であり、むしろ応援しているように感じられる個所もないわけではない。議題を単純化してしまうメディアの側を批判する箇所もあり、また、消…

制御と社会

立命館大学映像学部の北野圭介教授の著作。北野氏の専門は映画のはずだが、本書では制御(コントロール)をテーマに、幅広い領域の文献を渉猟し、思索を展開している。コントロールを制御と訳す方がよいかは、一律には言えず、私はどちらかというと「管理」…

生命倫理の教科書

日本医科大学の基礎科目「生命倫理」を契機に生まれた著作。第6章の「遺伝子操作」を目当てに通読したが、全体としても良書だった。多くの著作や論文が紹介され、生命倫理について最初に読むには本書が最適だろう。

つながれない社会

なぜ「無縁社会」化してしまうのか、京大に集っていた社会心理学者3人が、「社会的交換」「文化心理学」「社会構成主義」という3つの立場から論ずる。やっぱり山岸俊男の言う、日本人の一般的信頼の低さが致命的なのだろうか。とても薄いので、大学1年生…

こども映画教室のすすめ

映画を使った教育をいかに行うかをテーマにした、映画監督や実践家、学者など8人の共著。フランスで特に映画教育を盛んに行っているのは、やはり、リュミエール兄弟を生んだ国だからなのか?教材も充実しているようでうらやましい。

ハリウッド・ビジネス10年の変遷

著者はUSCフィルムスクール出身で、在米15年、ハリウッドでさまざまな仕事をこなすドリーマーの一人。本書は、映画雑誌「FLIX」連載のコラムをまとめたもので、ハリウッドビジネスの内側が書かれていて興味深い。成功者はごく一握り、夢見る者たちを搾取す…

地球全史スーパー年表

年表1枚と、24ページの解説書。年代のスケールが分かるように工夫されている。特に解説書が素晴らしく、地球温暖化といった問題を考えるのに役立つ。いま、二畳紀といわないで「ペルム紀」と言うのか・・・

ヒルガードの心理学

心理学の本は何冊かは読んだことがあるのだが、全体像が掴みにくい。本書は電話帳並みに厚いが、感覚、知覚、感情、知能などさまざまなトピックが扱われており、心理学の全部とは言わないがかなりの部分をカバーしている。特に良いのが「両面を見る」という…

壁の向こうの天使たち ボーダー映画論

明治大学教授、アメリカ文学者の越川芳明氏が、各種の雑誌に発表した映画批評をまとめたもの。ボーダー映画とは著者の造語で、さまざまな境界線上の「壁」を題材とする映画だそうだ。まあそういった定義にこだわらずとも、面白そうな映画がたくさん紹介して…

暴露:スノーデンが私に託したファイル

エドワード・スノーデン氏がNSAによる一般国民の監視を内部告発したことはまだ記憶に新しいが、本書はスノーデンと会ってガーディアンとの間をつなぎ、自らもジャーナリストとして記事を書いたグレン・グリーンウォルド氏の著作。スノーデンが純粋な動機…

お麩料理

あまり肉を食べ過ぎると、妻の乳が詰まってしまうので、肉を減らしてお麩料理を増やすことにした。もともと私は、麩が嫌いではない。で、肉じゃがの代わりの「お麩じゃが」、ハンバーグの代わりの「お麩バーグ」などを作ってみたが、なかなかいけます。しか…

創造農村

「創造都市」があるなら「創造農村」も、ということなのだろう。理論的にはお決まりのフロリダなどで新味はないが、事例研究は面白い。アートや伝統工芸、ツーリズムなどを使ったまちづくりを紹介しており、神山町とか直島町といった有名どころだけでなく、…

捜索者

典型的な西部劇と言っていいだろう。ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演で、中身はインディアンに襲撃されて兄と兄嫁、甥を殺され、姪二人を誘拐された主人公が、インディアンに復讐を果たし、姪(の一人)を奪還する話。2時間超はちょっと長い。…

メディア・リテラシー論

タイトル通り、メディア・リテラシーについての実践および解説書。実際に高校や大学でこうした授業展開をする人には参考になるだろう。ただ、メディア・リテラシーの捉え方は私とはかなり違うようだ。私は中高の「普通の授業内容」をきちんと理解することの…

グラフィックデザインで世界を変える

デザイナーが世の中にどのようにインパクトを与えるのか、いわゆる「ソーシャルデザイン」分野を中心として、さまざまな実例を紹介する。ケアーズ移動安全センターをPRするバス、困っている隣人を助けるサイト「Reason to Give」など。

出版産業の変貌を追う

出版業界の専門紙記者が、これまでつづってきた文章をまとめたもの。出版不況の本質は雑誌不況であり、その最大要因はデジタルネットワークの普及というのが著者の見立て。細部は充実しており出版業界に興味を持つ人には読んで損はない。

モンスター

尼崎連続殺人事件についての書だが、本書の特徴は、主犯である角田美代子の背後に、「M」という指南役の男(暴力団関係者)を置いていること。ただ、この男が本当に存在しているのか、残念ながら確証は得られない。

震災ビッグデータ

NHKスペシャル「震災ビッグデータ」を基にして作られた書。番組も素晴らしかったが、本書も素晴らしい。人々が震災直後にどう動いたのか、どのように渋滞したのか、経済取引はどう変わったのかといったことが、美しいCGで目に見える形になっている。是非一…

原発事故と放射線のリスク学

リスク学の第一人者である中西準子・横浜国立大学名誉教授の著作。放射能の専門家ではないとのエクスキューズをつけながらも、現在進行中の問題について、大胆な提言を行っている。政府の「年間1ミリシーベルト」という基準は、厳しすぎるかもしれず、「1…

現代思想2014年6月号 「ポスト・ビッグデータと統計学の時代」

前述のシンポジウムの予習として読んだ。ビッグデータといえば、日経や野村総研による「煽り記事」「煽り単行本」が多いのだが、本書は幅広い学者がビッグデータについて批判的に検討していて読み応えがある。私の恩師の竹村先生も登場。

ニァイズ

東京都写真美術館を面白くしているマンガ「ニァイズ」、初の単行本。私は基本的にマンガを買わないし、読まないのだが、つい買ってしまった。写美での仕事を、虚実織り交ぜて紹介。学芸員などの姿は、相当にデフォルメされていて、これを広報誌にしてしまう…

海うそ

南九州に設定された架空の島「遅島」を舞台にした小説。主人公の若き地理学者、秋野は、地元の青年らの協力を得ながら、島の洞窟や、廃仏毀釈の犠牲になった寺院を探索する。そして五十年後、老いた秋野が訪れた遅島は、架橋され、リゾート開発で姿も一変し…

漢字世界の地平

私は漢字好きなので、本書も期待して読んだが、期待したような中身ではなかった。シニフィアン、シニフィエの訳語に「能記」「所記」を充てた小林康夫を批判しているのは鋭い。確かに、ヨーロッパの言語の音声中心性を考えると、ここに「記」を使うのはまず…

近所のイーグレひめじに出かけて行き、「ひめじ国際短編映画祭」の最初のプログラムだけ見る。「ウサギと鹿」とか、大変な傑作だと思った。 http://www.rabbitanddeer.com/

マス・コミュニケーションの新時代

北樹出版の「現代の社会学とメディア研究」叢書の第4巻。武蔵大学の教員の人たちが、メディアに関わるさまざまな話題について分担執筆している。特にアンジェロ・イシ氏の、ブラジルから見た視点が興味深かった。小田原氏はマクルーハンのことを、「マクル…

データ・アナリティクス3.0

ビジネス向けにビッグデータの活用などを説明した本だが、厚い割りに中身は薄い。

中央大学駿河台記念館で、社会情報学会シンポジウムにコメンテーターとして出席。その後、中央大学勤務の砂川君と久しぶりに会う。

21世紀社会とは何か

放送大学での講義テキスト「21世紀の社会学」の改訂版。編者の代表である船津衛先生にはお世話になったこともあり、また、船津先生が一人でかかれた『コミュニケーション・入門』はむかし教科書として使っていたので言いにくいのだが、本書は教科書として…

安倍政権のネット戦略

雑誌『創』に掲載されたいくつかの記事をもとにした書だが、いやあ、復活を遂げて二度目の安倍政権の行っている「メディア戦略」は、ある意味で「上手」と言ってもいいが、イジメに近く、えげつない。もう少し大人になってください。