2013-01-01から1年間の記事一覧

東大入試問題で数学的思考を磨く本

東大の数学入試問題を解説した本。「中学生レベルでも解ける問題」「高校で習う初歩的知識で解ける問題」「分析力を鍛える確率の問題」「発想力を求めるグラフと図形の問題」「論証力を問う整数問題」「試行錯誤と予測を楽しむ微積分の問題」の6章構成。長…

ビジュアル 歴史を変えた1000の出来事

ナショナル・ジオグラフィックによる歴史書。タイトル通り、1000の小項目で歴史を語るが、たまに「大項目」となっている。アメリカにおいて、電気通信前夜に1年半だけ使われた「継飛脚」の「ポニー・エクスプレス」とか知らなかったなあ。西部劇ではよ…

浸透する教養;江戸の出版文化という回路

江戸の出版文化に関する論文集。文学の話題が中心ではあるが、「江戸名所図会」や、百科事典の話(「和漢三才図会」など)も出てくる。医学書の話(吉m丸雄哉「啓蒙的医学書」)が面白かった。江戸時代、現在のように医療も進歩しておらず、医師免許が整備さ…

毒婦たち

副題は「東電OLと木嶋佳苗のあいだ」。上野千鶴子、信田さよ子、北原みのりの3人が、木嶋佳苗を中心に、角田美代子、上田美由紀、さらに(犯罪者ではないが)壇蜜などについて語る。東大を辞めた上野さんは、例えば佳苗の被害者に対しても、言いたい放題を…

数字が明かす日本人の潜在力

統計数理研究所の林知己夫御大が、国民性調査の結果をもとに日本人の国民性について、けっこう大胆に語っている。第二章「政治を変える能力」については賛否両論あるだろうが、しかし、後の政権交代の不毛さを予見しているとも言える(本書の発行は2002…

北からの世界史

北極および北極海航路を主役とした歴史書。バイキングによる征服や、ロシアによる探検などが中心。ベーリングによる探検などは、涙なしでは読めないほど悲惨なものだ。壊血病で彼が息を引き取った島は、ラッコの一大繁殖地で、後に毛皮商人の草刈場(清朝に…

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国

嫌韓、嫌中の本と見まがうようなタイトルだが、本書はごく真っ当な本であった。韓国が、なぜ反日的な行動を取らざるを得ないのか、キーワードは経済における中国依存である。中国と米国との間でうまくバランスを取ろうとし、そのためには日本を叩くのが最も…

露出せよ、と現代文明は言う

京大のラカン派精神分析学者が、現代文明のあれこれに対して批評する(文句をつける?)。共感するところと、随分変なことを言っている部分があり、それを含めて面白い。ラカン派って、20あまりに分派してしまっているんですね。

人類の歴史を変えた発明1001

タイトル通り、人類の歴史に大きな影響を与えた発明品を解説する。冒頭の項目「石器」(紀元前約260万年前)に始まり、「火」「住居」「衣服」「槍」と続き、「iPhone」「人工視覚」「大型ハドロン衝突型加速器」(2008)にいたる。サンドイッチが、…

ラジオのこちら側で

ピーター・バラカン氏の自伝的な性格の強い本だが、土壇場に追い詰められたラジオ・メディア論としても読める。ラジオというメディアは私にとっても、ある種青春時代の懐かしさと共にあるのだが、今後どのように生き残れるのか、なかなか難題だろう。多数の…

戸籍の謎と丸谷才一

ユニークなタイトル。なぜ、「戸籍」と「丸谷才一」が結びつくのか?しかし読んでみたら、これは名著だった。著者は日本女子大学の名誉教授。丸谷才一の各作品を論じながら、人間のアイデンティティに関わる根源的な問いへと迫ってゆく。丸谷を読んで、どこ…

無の本

ケンブリッジ大学の数学および物理学の教授であるジョン・バロウ氏の啓蒙書。数字としてのゼロの話題から始まり、「真空」の話、宇宙の起源の話、相対性理論や量子の話にまで及ぶ。じっくり読むのがおすすめ。

聖地巡礼ツーリズム

聖地巡礼というと、もはやアニメのことを思い浮かべる人の方が多いかもしれない。本書においても「鷲宮神社」が掲載されてはいるが、基本的には本来の宗教的な「聖地巡礼」の話が86編、国内および海外を含めて掲載されている。第6章「悲劇と聖地」、第8…

レクチャー情報法

情報法の幅広い範囲を15章でまとめ、13人の執筆者が分担した教科書。悪い本ではないのだが、第5章で紹介されている私の訳書の名前が「田畑」ではなく「川畑」になっているのはがっかりだ。どこで間違えたのだろう?

地域ブランドと地域の価値創造

「地域デザイン学会」の機関誌、第一号と第二号。2012年に設立された新しい学会のようだが、このような学会があるのを知らなかった。抽象的な論文が多いのはやや残念。第2号に掲載されていた、「四川省成都市に関する研究ノート」が面白かったのだが、…

地域革新と地域デザイン

メディア技術史

若手を中心に8人の執筆者によるメディア技術史の教科書。編者の飯田氏の章は面白かったのだが、ほかの章はどうにも物足りない。もっと突っ込んだ記述があってもよかったのではないだろうか。

我々はアノニマス

各種の「サイバー攻撃」で話題を作ってきたアノニマスだが、その実像はベールに包まれてきた。本書は、アノニマスの代表的な人物数人に焦点を当て、実際にどんなことを話し合い、何をしてきたのか、臨場感溢れる記述がなされる。中でも「サブ」がFBI側に寝返…

若者を見殺しにする日本経済

原田泰・早大教授の著作。こちらの原田氏はエコノミストだから、経済に関する記述はそれなりに信用できるが、それ以外の教育論などは、主観的な意見を垂れ流している印象が強い。やや細かく見ていこうか。 財政再建には、経済成長が重要という指摘はその通り…

さとり世代

博報堂若者研究所の原田曜平氏(まだ30代半ばなのに随分と老けてみえるな)が、多数の大学生と語り合った内容をそのまま新書にしてある。安直ともいえるつくりだが、大学生のホンネの部分はよく出ているような気がする。キーワードは「面倒臭い」か。あま…

インターネット時代の法律問題

タイトル通り、インターネットと絡む法律について、18人の論者が論ずる。500ページを超えていて、通読するのは割と厄介。

インターメディアテク

東京大学総合研究博物館の所蔵品カタログ。1ページから168ページ、および、233ページから399ページまで、写真によって所蔵品を紹介し、その間の169ページから222ページまでが文字による解説(日英両語による)。動物の骨格や剥製、数学模型…

思考実験

玉川大学の岡本裕一朗教授の著作。1自己、2他者、3倫理、4社会の四章構成。哲学・思想上のさまざまな思考実験が語られる。上記の本と共通するような、サイボーグに関する話題や、サンデル教授で有名になった、「友達を助けるために嘘をついていいか」「…

サイボーグ・フィロソフィー

早大の表象文化論研究者、高橋透教授によるサイボーグ論。1章、2章は先端技術の話が中心(悪く言えばつまみ食い)だが、後半3章・4章は、『攻殻機動隊』『スカイ・クロラ』を論ずる。「我々の存在は宇宙という胎児の一夜の夢に過ぎない」という思想が前…

午前32時の能年玲奈

第1章はタイトル通り能年玲奈論だが、全体としては短文の寄せ集め。例えば2章は寺山修司論など文学論、3章はこれまで書いてきた文庫解説、5章は宮台真司、東浩紀、石原慎太郎を論じている。 中森明夫の本は私はこれまであまり読んだことがなかったが、な…

統計データが語る日本人の大きな誤解

著者の本川さんの本は面白いものが多いが、本書は、統計データを基にして、日本人自身が自分たちのことを誤解している側面があることを説明する。「日本は『小さい政府』である」「日本人は多忙ではない」「日本人は食べ過ぎではない」「日本はまだ儒教国で…

私の愛、ナムジュンパイク

ビデオアートの第一人者であったナムジュン・パイクの生涯を、未亡人で自身もアーティストであった久保田成子が振り返る。パイクの実家は韓国でも屈指の大金持ちであったのだが、父親が亡くなり、兄たちが事業に失敗すると、結構経済的に厳しくなり、さらに…

世界の歴史を変えた日1001

世界史上の重要な事件1項目を1頁もしくは半頁で紹介する。900頁を超える大著だけれど、絵や写真も多く、文字だけならその半分くらいか。歴史の裏エピソードもふんだんに記載されていて読んでいて楽しい。「ビッグバン」に始まり、最後の項目は、2011年1…

復興文化論

「復興」とついているが、東日本大震災の復興と直接の関係はない。むしろ、日本文化全般の中から「復興」を拾い出す試みで、つまみ食い的に様々な作品が論じられる。第三章の「水滸伝」論などが私には最も面白かった。最後の村上春樹論などは、随分と雑とい…

社会の抜け道

若手社会学者の古市憲寿氏と、哲学者國分功一郎氏との対談。消費社会(具体的にはショッピングモール等)について、デモと民主主義について、食について、保育園についてなどが話題。両者とも本音で話しているように思える。