2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

エキゾティックな量子

量子力学についての啓蒙書。時々難しい記述もあるが、物理学者の生活についての紹介などもあり楽しめる。特にディラックって、かわりものだなあ。私の好きな詩人、村野四郎の詩が扉に引用してあるのもポイント高い。「詩人の肖像」とか、あまり知られていな…

社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた

コロンビア大学に職を得て、シカゴから出てきた社会学者である著者は、麻薬の売人や、売春組織の元締め、不法移民労働者といった人々とコンタクトを取り、ニューヨークの裏面を描き出そうとする。そこで見たのは、むしろ特別ではない、自分とよく似た人々だ…

大予言

吉見俊哉氏の著作。ずいぶんと大風呂敷なタイトルだけれど、中身はさまざまな経済循環論や社会循環論を慎重に検討する書物。ブローデルやコンドラチェフ、見田宗介などからインスパイアされている。結局今後、停滞した時代が続くのか・・・

大西郷という虚像

著者は明治維新自体を、薩長によるクーデター、国家の私物化と見ている。その意見に賛同するかどうかは別として、確かに西郷隆盛には伝説やら物語がまとわりつき、実像が見えなくなっている面があるので、それを相対化する意味でなら一読の価値はある。本題…

粛清の王朝、北朝鮮

原題は「張成沢の道」で、張氏が残虐に粛清されるまでの人生がテーマ。しかし、結局亡命でもしない限り、張氏は粛清される運命であったことが示唆される。改革開放しか道がないと知りつつ、金王朝の前でそこに媚びるしかなかった張成沢・・・独裁王朝では、…

芸人迷子

2014年に解散した「ハリガネロック」のユウキロック氏の著作。私は正直、ハリガネロックのネタはあまり好きではなかったのだが、一時の彼らには確かに勢いがあった。芸人が売れることの難しさ、売れ続けることの難しさが垣間見える。それと、相方の大上氏と…

歌うカタツムリ

これはすばらしい。数年後には、岩波現代文庫ではなく、岩波文庫に収録して、長く読み継がれるべき作品ではなかろうか。 主題は進化論をめぐる論争で、ダーウィンの「知られざるライバル」とも言うべき宣教師ギュリックから話は始まる。ギュリックは、ハワイ…

ザ・シャウト

これは「怪作」というべきだろうか。 精神病院に収容された男は、自分の経験を、第三者である音楽家の視点で語りだす。 音楽家夫妻の家に、謎の男(語り手)がやってくる。男は図々しく夫妻の家に居候し、妻を寝取る。夫には、自分は呪いの叫び(シャウト)…