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テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅

西田厚聰氏の名前は前から知っていた。東大大学院で政治学を学んでいたが、やはり東大大学院で学んでいたイラン人の奥さんとともに学究の道を去り、東芝に人より約10年送れで入社。その類まれな能力と努力でのし上がり、特にパソコン部門で頭角を現す。そ…

母性のディストピア

宇野常寛氏の長編評論。宮崎駿、冨野由悠季、押井守のアニメーションが核だが、現代の日本社会そのものを「母性のディストピア」として厳しく批判する言辞がその前後にあり、特に、情報社会批判としても読める。 右派、左派の両方をバッサリと一刀両断にする…

ロボット

MIT(マサチューセッツ工科大学)出版局が出している、エッセンシャル・ナレッジ・シリーズの一冊で、ロボットについて広範囲に書かれているが、訳者が専門外らしく、あまり訳はよくない。たとえば、222ページでは、「メカニカル・ターク」を「メカニカル…

乱流のホワイトハウス

著者は朝日新聞のワシントン特派員として、ホワイトハウスの内部に深く入り込み、オバマや高官の素顔に触れた。しかし読むほどに、オバマの素晴らしさ(特に広島訪問の決断)と、トランプの未熟さが浮かび上がる。

日本殺人巡礼

フリージャーナリストが殺人事件を取材したもの。私が印象に残ったのは、覚えていなかった事件だが、ネパール人の男が日本人と結婚して来日したものの、約1年後にその妻と幼い子供を殺した事件。実は男にはネパール人の妻子もおり、れっきとした重婚、小さ…

電通巨大利権

タイトル通り、電通の持つ巨大な利権や闇が語られる。 特に東京五輪および、憲法改正国民投票について。東京五輪はもはや、電通が金儲けをするための道具になり下がっているのではないか。電通やIOCは巨大な利益をむさぼりながら、無償で若者たちを炎天下…

あなたは自分を利口だと思いますか

表題など、オックスフォードおよびケンブリッジで出題された「難問」を紹介する。「歴史はつぎの戦争をとめ得るでしょうか?」うーん。今では階級的ということであまり奇抜な問題は出されないそうだ。

検証 産経新聞報道

産経新聞は「商売右翼」であり、まあまっとうなジャーナリズムとは言えないが、きちんとそれを裏付けた著作。朝日の植村隆記者を攻撃したものの、植村氏に反論されてボロボロになっていく阿比留記者のことを、植村氏自身が第2章で書いている。また、大阪本…

性の夜想曲

これは一種の奇書。チェコ・アヴァンギャルドの詩人と画家がコラボして、性を描き出す。

クラシック音楽の歴史

うちの母はクラシック好きだったのだけれど、私はあまり興味がなかったので、中高の音楽教科書程度の知識しかない。本書は人物中心、平易に説明してある。個々の楽曲がまだ消耗品であったころ、楽譜にも残されずに消えてしまった多数の曲を思うと泣けてくる…

「美少女の記号論」

日本記号学会による「叢書セミオトポス」の12巻。美少女についていろんな論者が語るが、なんといっても藤浩志氏の話が衝撃的だった(どこが衝撃的なのかは読めば分かります)。巻末には謎の「有毒女子通信」が付されている。

模様と意味の本

「点と水玉」「線と縞」「四角と格子」「曲線と花柄」「枠組みを超えたパターン」の5章構成で、洋服や壁紙などを題材に模様の意味づけを語る。

印刷という革命

副題に「ルネサンスの本と日常生活」とあるように、ルネサンス期の出版産業や、人々と書物とのかかわりを、詳細な資料をもとに跡付けた浩瀚な書。パピルスの大敵は湿気である、とか、ベネディクト会子デ・ストラータによる印刷批判とか、エラスムスによるラ…

特攻隊映画の系譜学

日本は戦時中、特攻隊という名のいわば「自爆テロ」へと若者を追い込んでいった・・・映画に描かれた特攻隊を精緻に読み解く。私がこの中で見たのは、終章で挙げられていた岡本喜八の「肉弾」だけのだが。

ルポ沖縄 国家の暴力

沖縄県東村高江における米軍ヘリパット建設を、地元の人々の反対に関わらず政府は暴力を使って強行していった。そのありさまを糾弾する書。著者は沖縄タイムズ記者。しかしマスコミの中でもMXテレビのように、権力の尻馬に乗る形で沖縄を侮蔑する者たちがい…

大阪鉄道大百科

大阪の鉄道を紹介するムック。悪い本ではないのだが、最後になって、難読駅名のところで、「鴫野」を「鴨野」と書いてあってガックリ来た。「鴫」という字を知らないのだろうか?

ハイパーワールド

著者の池上英子氏は、サムライ精神を描いた『名誉と順応』などで高名な社会学者だが、まさかこうした情報化の領域に入られてくるとは思わなかった。先日もNHKで、関連したドキュメンタリーを放送していたので、単行本の方も読んでみた。自閉症傾向を持っ…

ど田舎うまれ、ポケモンGOをつくる

ポケモンGOは私も楽しませてもらっているので、どんな人が中心に開発したのか興味があったのだが、こんな人とは思わなかった(いい意味で)。著者は野村達雄という名前を現在は名乗っているが、もともと中国黒竜江省生まれ、家族を失った中国残留婦人が、中…

風格の地方都市

辻村明による先行研究を参考に、京大の行政学者である著者が、日本全国の都市の「風格」を数量化した意欲的な研究。分化、経済、交通などの多数のデータを、「規模の風格」「心意気の風格」の2種に集約した。たとえば近畿地方では、「規模の風格」は大阪市…

煙が目にしみる

ハワイ出身の女性が、「死」への感心からサンフランシスコの葬儀社に就職し、遺体の火葬などの仕事を経験する。その仕事のありさまや、その時に感じたことを綴ったエッセイ。葬儀ディレクターの仕事を学ぶためにほどなく退職するが、失恋などのために自殺に…

ウェブに夢見るバカ

原題は「ユートピアは薄気味悪い」。ネット・バカ、オートメーション・バカに続くニコラス・カーのエッセイ集。ところどころに機知のひらめきがある。

文学研究から現代日本の批評を考える

論文集。文学のみならず映画やアニメも射程に入れているが、面白かったのは第三部で、柄谷行人の『近代日本文学の起源』が、亀井秀雄の強い影響下にあるのではないか、そして、それを柄谷が隠蔽しているのではないか、と論じている。亀井秀雄は読んだことが…

反「大学改革」論 若手からの問題提起

こちらは若手大学教員十数人による共著。確かに問題提起としてはおもしろいものも含まれているが、いかんせん一つ一つの論が短すぎて喰い足りない。やはり一人が十分な紙幅を取って書くほうが良いのではなかろうか。

「大学改革」という病

徳島大学の哲学者、山口裕之氏の著作。大学改革についての本はいくつも読んだが、本書がその中でもっとも優れているのではないかと思う。日本の大学はそれなりに優れたシステムであるので、変な風に改革すると、その良いところまで失われてしまう危険がある…

世界をまどわせた地図

地図は決して、現実の忠実な写し絵ではない。本書で扱われるのは、実際にはないのに、地図にのっていた島や山脈、都市など。特に島が多い。冒険家が、スポンサーに媚びて名前をつけたり、話を盛ったりするために島を捏造するのはまだいい方で、「ポヤイス国…

昭和の翻訳出版事件簿

著者は早川書房、タトル商会、日本ユニ著作権センターなどで翻訳出版に関わる業務に携わり、出版社や翻訳者に幅広い人脈を持つ。本書では、日本の翻訳出版にまつわる裏話が満載されている。「無断翻訳」は決して多くなかったが、さまざまなトラブルが向こう…

秘境駅跡探訪

タイトルから分かるとおり、今はすでに廃駅となってしまった秘境駅を訪ね歩く(スイッチバックが廃止されただけで、駅そのものは残っている駅も含まれている)。鹿島鉄道の代替バスにも見放された「借宿前駅」とか行ってみたいな。一般に乗車できない「立山…

人文学の沃野

成蹊大学文学部設立50年を記念して行われたシンポジウムが基で作られた書籍。うちの妻の「師」の一人というべき浜田雄介教授が中心になって編集したもの。わが友、見城武秀氏も執筆している(が、10年前になくなった村山敏勝氏に恥じないだけの活動をし…

奄美大島の地域性

駒沢大学で、奄美大島を舞台に行われてきた授業「地域文化調査法」「地域文化演習」の成果。学部生が主体で行ったとしてはとてもレベルが高い。特に、奄美に固有の料理ではなかった「鶏飯」が、いかにして奄美の観光資源となったのかを追究した第12章には…

現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史

北田暁大氏を中心とした鼎談。いわゆるリベラル系の人たちが「経済オンチ」であることに対して、北田氏が怒りをぶちまけ吠えまくる展開。特に内田樹氏などが槍玉に上がり、増田聡さんにもそのとばっちりが・・・