イギリス人はおかしい

映画監督リドリー・スコットの家でハウスキーパーを務めていた著者が、スコット家での経験や、その他イギリスで感じたこと、考えたことをまとめたエッセイ。
 著者は割とぶっとんだ経験の持ち主で、姫路生まれ、調理師となり、料理修業のためヨーロッパに渡るが、イギリスで音楽家の青年と出会い、結婚。しかし二人で日本に帰ってから離婚し、祇園のホステスを経て、再び渡英、料理人やハウスキーパーとして働くこととなった。
 リドリー・スコットは大変なお金持ちで、ロンドン、アメリカ、フランスに大邸宅を所有し、なおかつ大のキレイ好き、帰ってくる前には大掃除が必要なだけでなく、帰るとスコット氏自らも掃除をしている。
 しかし、著者がイギリス人一般に向ける目は辛辣だ。特権にあぐらをかいて学ぶことをせず、労働者や外国人をバカにする「貴族」階級と、勤勉に働くことをしない「労働者」階級。木村治美林望が美しく描いたイギリスとは違うイギリスがここにある。そしておそらく、高尾氏の描くイギリスの方が実態に近いだろう。サッチャーに対しても厳しい。
 20年前の本だから、多少はイギリスの事情も変わったかもしれないが、大きく変化したとも思えない。このまま英国は沈んでゆくのだろう。日本にとっても他山の石として学ぶべきことは多数ある。

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