原発危機と東大話法
著者の安富歩・東大教授の本は、以前にも紹介したことがある。学者の書くものはたいてい自己抑制が効いているものだが、安富氏の本はかなり自由奔放に書いているという印象を受ける。
本書は、原発危機を主題としたものだが、その中で、著者が「東大話法」と呼ぶ、まあ東大関係者に特徴的に見られる不誠実な話法、言葉の使い方を厳しく批判したもの。「信念ではなく、立場に合わせた思考を採用する」「都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事する」「いい加減でつじつまの合わないことでも自信満々に話す」など、20か条を安富氏は指摘する。その仮想敵となっているのは、池田信夫氏や、香山リカ氏、原子力の学界関係者などである。多くの東大教授には「底知れない不誠実さ」「抜群のバランス感覚」「高速事務処理能力」が備わっているという指摘など、かなり当たっているかもしれない(?)。
一歩間違えばトンデモ本なのだが、それでも安富氏の言うことには一理ある。確かに、東大教授を初めとする東大関係者には、そうした意味で不誠実な人は多い気がする(もっとも、じゃあ庶民が誠実かと言えば必ずしもそうでもないが。庶民は学者をバカにし、学者は庶民をバカにするという「悪しき関係」)。