巨船ベラス・レトラス
筒井康隆御大の作品。『文學界』に2005年から2006年にかけて連載されていた。あの『大いなる助走』の続編的な色彩が濃く、文壇の裏側や、文学の置かれた状況などが語られて、そこまでは面白いのだが、最後になって作中に「筒井康隆」が登場し、北宋社という弱小出版社に『満腹亭にようこそ』という単行本を勝手に作られた恨みつらみが続いて終わりになるのは、随分とがっかりだ。
作中、詩壇の大御所の七尾霊兆が、現代を監視社会だと語り始めるところは興味深い(150ページ)
「今は監視社会だからだよ」七尾は話し始めた。「高度経済成長の時代は文学隆盛の時代でもあって、文学者全体の生活水準が上がって中流になり、評論家もその波に乗って共に生活水準が上がって中流になり、その中で文学を自分たちの好みの切り口で論評し、それでもって自分たちが文学を管理している気分になれた。つまり高度成長の時代は管理社会だったから自分たちこそ文学の指導的立場に立っているという幻想が可能だったわけだが、冷戦以後バブル崩壊以後は文学も構造不況の影響を受けずにはいられなくなって衰退しはじめて一般社会と同様に経済力の二極分化みたいなことが起ってごく少数の文学者のみが『勝ち組』として残って大多数の文学者の生活水準が下層へと下がって・・・(以下略)