「東京物語」と小津安二郎

東京物語は言うまでもなく名作で、本書でも書かれている通り、外国の映画監督にも高く評価されているのだが、その名作たる由縁はどこにあるのか、作家の目で作品内容を細かく分析したのが本書。子ども、若者、中年、高齢者など各年代の人物がまんべんなく登場し、ある意味で主人公はおらず、結局すべてを流し去る「時間という王」が主人公かもしれない、というのが作者の見立て。そうすると、「ただいっさいは過ぎていきます」とする『人間失格』や、「あらゆるものは通り過ぎる」とする『風の歌を聴け』と、同工異曲の感慨ということになるのかな。