人間の尊厳と八〇〇メートル

深水黎一郎氏の短編集。日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞したという表題作は、あまり面白くなかった。いわゆる「賭け」を扱った作品だが、私でも書けそうといったら失礼か。しかし、他の作品はとてもよかったので、読んで損した気はしない。
一応ミステリなのだが、殺人事件が扱われているのは一編だけ(「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」)で、この作品を私は最も買う。倒叙ものだが、最後の結末が利いている。他の3作は、推理とは言っても他愛のない「事件」だが、女性の意外な性格が明らかになる「蜜月旅行」など、話としてよくできている。
人間の尊厳と八〇〇メートル