社会とは何か

「社会」概念を再考した書物で、特に難解なところはなく大学生あるいは高校生でも読める。特にホッブズ・ロック・ルソーを扱う第一章は、まあ高校の政治経済や倫理の教科書にも概説は載っているのではないか(スピノザが加わっているが)。第三章までがいわば理論・歴史部分で、第二章は『百科全書』の誕生やフランス革命を、第三章はサン・シモンやフーリエといった「空想的社会主義」から、デュルケーム社会学のアカデミーでの地歩確立まで。これも、まあ常識の範囲内か。本書の「売り」はむしろ、フランスにおける移民問題を扱った第四章、および、水俣病事件で浮かび上がったコミュニティの問題を扱った第五章にあると思う。
社会とは何か―システムからプロセスへ (中公新書)