日本の数学 世界の数学

円の求積法を中心に、現在の微積分に関わるような事象について、西洋の数学と和算とを比較する。和算というと関孝和や建部賢弘が有名だが、本書ではそのほかにも、松永良弼、久留島義太、安島直円、和田寧などが登場する(和田の頃は和算も衰退期で、彼は極貧のうちに亡くなったそうだ)。天文学で知られるケプラーに「酒樽の立体幾何学」なる著書があることも知らなかった。
各エピソードも面白いのだが、本書が全体として問いかけている問いは重い。それは、数学は一つであるのか、それとも文化が違うように複数あるのか、という問題。前者の論者としてワルデンが、後者としてはボホナーが挙げられているが、どちらの言うことにも一理ある。
日本の数学 西洋の数学―比較数学史の試み (ちくま学芸文庫)