本を生みだす力

フィールドワークの第一人者として知られる佐藤郁哉氏などの研究グループが、学術系出版社4社の仕事のありさまを調査したもので、有益な情報がふんだんに盛り込まれている。一人出版社のハーベスト社の話も面白いし、有斐閣がその印象と違って(純粋学術書より)実は大学教科書の出版が主と言うのも気づかなかった。有斐閣東大出版会が、社員数を大幅に減らしている、というのも知らなかった。学術出版のあり方が、欧米と日本とで大きく違い、必ずしも欧米が優れているとしていないことも好感が持てる(ところで巻末の、全米大学出版部協会加盟社一覧表の中に、ハーバード大学出版部が2回出てくるのは何かの間違いなのだろうか?)。不満を言えば、リサーチ・クエスチョンや理論化にこだわり過ぎている点か。あまり切れ味鋭い道具とも思えない。特に背景となる理論などなくても、出版社へのフィールドワークだけで十分面白いと思う。
本を生みだす力

陰獣

江戸川乱歩の有名な作品をフランス人監督が映画化したもの。設定も大胆に変えてあり、時代は現代、探偵役はフランス人作家、ヒロインは芸妓、その愛人はヤクザ(?)である。なかなかにオリエンタリズム臭はするが(製作総指揮がベン・サイードというのも、なんとも)、期待以上の面白さだった。ヒロインを演じる源利華は美人とは言えないが、魅力的に描かれている。

陰獣 [DVD]

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