本を生みだす力

フィールドワークの第一人者として知られる佐藤郁哉氏などの研究グループが、学術系出版社4社の仕事のありさまを調査したもので、有益な情報がふんだんに盛り込まれている。一人出版社のハーベスト社の話も面白いし、有斐閣がその印象と違って(純粋学術書より)実は大学教科書の出版が主と言うのも気づかなかった。有斐閣東大出版会が、社員数を大幅に減らしている、というのも知らなかった。学術出版のあり方が、欧米と日本とで大きく違い、必ずしも欧米が優れているとしていないことも好感が持てる(ところで巻末の、全米大学出版部協会加盟社一覧表の中に、ハーバード大学出版部が2回出てくるのは何かの間違いなのだろうか?)。不満を言えば、リサーチ・クエスチョンや理論化にこだわり過ぎている点か。あまり切れ味鋭い道具とも思えない。特に背景となる理論などなくても、出版社へのフィールドワークだけで十分面白いと思う。
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