温暖化論のホンネ

薄い本なので期待しないで読み始めたが、これは良書だった。環境問題や温暖化論に対して真剣に考えてみたい人におすすめできる。温暖化対策に懐疑的な武田邦彦教授と、国立環境研究所で温暖化対策にあたっている江守正多氏、環境ジャーナリストの枝廣淳子氏の鼎談。
環境問題に関する本は、自分の立場に固執する「宗教的」なものになりやすいが、本書は立場を異にする武田氏と江守氏ががっぷり四つに組んで対決することで、温暖化問題の実情が見えてくる。武田氏も、地球の気温が上昇していることは認めるが、一部環境派の独善的な論理(都合のいい事実しか言わない、下々に対策を押し付ける、など)に怒り、環境対策よりも画期的なイノベーションに期待していることが分かった。
「第一次の思考停止」「第二次の思考停止」「第三次の思考停止」という概念もおもしろい。「第一次の思考停止」は、「メディアや国が出したメッセージを鵜呑みにすること」。「第二次の思考停止」は、「メディアや国の言っていることはウソだ、とするメッセージを鵜呑みにすること」、そして「第三次の思考停止」は、「温暖化が起こっているという意見と、起こっていない意見と両方に接し、結局どっちだか分からないと思って考えるのを止めてしまうこと」。これは、メディア論にも援用可能な概念かもしれない。
「ダブル・デカップリング」という概念も有益だろう。「GDP」と「CO2」の比例関係を切り離し、「GDP」と「幸福」の比例関係を切り離すということ。私の愛読書である見田宗介現代社会の理論』の考え(環境に配慮しつつ、情報は豊かに消費する)にも近い。
温暖化論のホンネ ~「脅威論」と「懐疑論」を超えて (tanQブックス)

行動ゲーム理論入門

タイトル通り行動ゲーム理論の入門書なのだが、得られたものは多い。まず、「行動経済学」と「実験経済学」の違い。部外者からするとどちらも同じように聞こえるが、行動ゲーム理論を研究する著者は実験経済学者の範疇に属する。簡単にまとめると、行動経済学は心理学に属し、人間の利他性や非合理性を強調するのに対して、実験経済学は経済学に属し、人間の行動を利己的、合理的(というより限定合理的と言ったほうが正確かもしれない)に解釈できるとの前提に立ち、最近は特に実験経済学は「レベルK理論」(相手の合理性のレベルを考えて、自分の出方を決める)に依拠する場合が多い。もっとも原始的な考え方をする人物がレベル0。相手をレベル0と考えて最適な戦略を選ぶ人物がレベル1。相手がレベル1と考えて最適な戦略を選ぶ人物がレベル2・・・(以下同様)となる。相手のレベルが分かれば、自分が有利に立つことができる。
第7章ではシェークスピアの「夏の夜の夢」、第8章ではギボン「ローマ帝国衰亡史」が取り上げられるなど、道具立ても面白い。
行動ゲーム理論入門