言論統制

 これも遅ればせながら読んだ。
 戦時中、言論統制の親玉として恐れられ、戦後はまさに言論弾圧の当事者として出版界からの激しい非難を受けた鈴木庫三陸軍少佐。だがその実像は悪玉イメージとは大きく異なり、茨城の貧農に生まれ、軍の中で必死に勉強することによって立身出世を遂げた苦労人であった。彼は奢侈を嫌い、宴席を嫌う、自分にも他人にも厳しい道徳家であった。軍で働きながら日大夜間部を首席で卒業し、東大文学部教育学科に学んだ。著者は鈴木の日記という一次資料から、出版人・言論人が彼を恐れたのは、彼が軍人というよりむしろ、学者であり、自分たちと近い所にいたからではないかと分析する。また、陸軍・海軍の対立も、背後に見え隠れする。スマートな海軍、泥くさい陸軍というイメージが当時はあったのだ。
 日記からすると、鈴木の思想は、むしろソ連型の国家社会主義に近い。鈴木は、裕福な生まれの者が贅沢を行うの嫌い、経済人たちが利益を求めて活動するのを嫌った。むしろ、国家が経済活動を行う方が、さまざまなことがうまく行くと考えていた節もある。言論活動においても。おそらく鈴木は「表現の自由」という理念も、終生理解・納得できなかったろう。
言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

SAW3

SAWは傑作だ。SAW2も、ややCUBEに似たところがあるにせよ、正編に劣らぬ出来だったと思う。この2本は映画館で見たが、1800円を高いとは思わなかった。
さて、SAW3は見逃していたので、レンタルで借りて見てみた。
残虐度はアップしているし、それなりに伏線も張ってあって、頑張ってはいる。だが、1と2に比べると、やはり質は低下していると感じた。その理由は、この作品そのものが、やや自己反復的になったことではないか。SAW3では、やたらと1と2に対する反復や謎解きが多い。それはある意味では、この作品から見る人に対する親切かもしれない。だが、話を悪い意味でreflexiveにしてしまっている。
4も映画館で見ないうちにロードショーが終わってしまった。5まで製作することは決まっているという話だが、これ以上話が自己反復的になるのであれば、あまり期待できない。

♪「ソウ3 ソウ3 無意味にグロいのね
そうよ ソウ4も グロいのよ」