劣化国家

『憎悪の世紀』『マネーの進化史』などで知られるハーバード大学教授、ニーアル・ファーガソンの著作。西洋文明がいかに衰退しているのかを描く。将来世代の負担を積み増す財政赤字、銀行の強欲とそれを規制できない政府、法律家支配、市民社会の衰退などを例示して論じてゆく。巻末で、オバマ大統領の2012年7月13日の演説が、その衰退の証拠として挙げられているのは悲しい。政府の役割を強調するオバマ演説は、「まるで(政府が)すべての中小企業を生み出し、ひいてはすべての中産階級を生み出したのが政府であるような誇張ぶりこそが不穏なのだ。さらに気がかりなことに、スピーチでは過去の計画が引き合いに出されても、これに見合うような未来の計画が全く挙げられていないことが目に付く」と、さんざんな言いようである。