岩波映画の1億フレーム

今日取り上げるもう1冊の本も、東大の教員が中心の科研(基盤研究B「記録映画アーカイブに見る戦後日本イメージの形成と変容」http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22330146.ja.html)を基にした東大出版会の本、という点では前著と共通している部分があるが、本書の執筆者は学者ばかりではなく、実際に岩波映画の制作に携わっていた作り手や、それを教室で利用していた受け手なども含まれていて、より重層的と言える。岩波映画が作った科学映画や教育映画、政治啓蒙映画などについて、経験的に捉える文章が多く、特に『佐久間ダム』については、町村敬志氏(『開発主義の構造と心性』)などが詳しく論じている。記録映像についても具体性に即した文章が面白いのであって、佐倉統氏のゆるく一般化された科学映像論などは、要らない。
岩波映画の1億フレーム (記録映画アーカイブ)