日本の地域間格差

タイトルが示す通り、日本の地域間格差を主題とした本。構成は以下の通りで、各章ごとに独立して読むこともできる。

第1章 地域住民の生活意識と格差
第2章 先進諸国と比較した日本の地域間格差
第3章 住民の地域移動の要因
第4章 企業立地の地域間格差
第5章 地域間の賃金格差と貧困の現状
第6章 行政サービスの地域間格差
第7章 地域間格差がもたらす影響
第8章 地域間格差の是正策
第9章 東京一極集中をやめる方策

いずれの章もデータ中心でそれなりに有益ではあるが、不満もある。以下不満を中心に述べる。
まず第1章で使用されている意識調査なのだが、インターネット調査(gooリサーチ)を使っている。インターネット調査に偏りが大きいことは常識であるし、もちろん著者もそれを意識してはいるのだけれど、単に「偏りを意識すれば済む」と考えているとしたら鈍感過ぎる気がする。こうしたアンケート調査においては、社会学者や政治学者の方が扱いが丁寧で、経済学者や経営学者は随分とずさんに考えている人が多い気がする。
 第2章では各種の分野での、地域間格差の国際比較データが出ているが、その中で、1人当たりGDPにおけるジニ係数が0.09と、イギリスの0,17や、米国の0,14、ドイツの0.12等と比べて低いことが目についた。ただし、都道府県別データなので、もっと細かく見れば、格差は大きいのかもしれない。
 第9章は、最も具体策が期待されるところだろうが、結局「人材の誘致、企業の誘致、大学の誘致」といった、おそらく誰もが分かっていて、かつ困難である事柄が並んでいるばかりだ。まあ誰にとっても解決策は難しいのだけれど。
日本の地域間格差